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ガーデンパーティー③

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「サーデク殿の件、ですか?」

「はい。ナタリアの話を聞く限り、酒場で暴れて頭を打って亡くなるなんて思えなくて」

 ナタリアの話だと、真面目で優しい子煩悩なお父さんって感じだった。長女のナタリアがまだデビュタントすら終えていないし、当時マルティンなんて二歳だった。子煩悩なお父さんが、幼い子供達を残して、そんなバカな事をしでかすとは思えなかった。

「すみませんが、私は詳しくは知らないんですよ。亡くなったと聞いたくらいで。事故の内容も、人伝と新聞で見聞きした程度です」

 保留婚約者が視線を落とす。

「ただ、彼がその様な亡くなり方をすると思えない同僚もいたようで、奥方に再捜査を管轄の警備に進言するように、と言ったそうですが」

 まさか。

「人伝ですよ」

 と、断る。

「奥方はそれをせず、直ぐに葬儀と埋葬をした。もし、ウィンティア嬢なら、奥方の立場ならどうしますか?」

「私? 私なら、子煩悩で優しいお父さんが、泥酔して頭を打って亡くなるとは信じられないから、納得するまで調べますかね」

 だって、ナタリアやヴァレリーはお父さんが大好きだった。二人が納得、もしくは受け入れるまで走り回るかなあ。
 そうしなかったのは、おそらく夫婦関係が冷えきっていたのではないだろうか。

「妻なら、夫の不名誉をどうにかしたい。そう思われますが、サーデク子爵夫人はそうでなかった。お気に入りの次女だけ連れて実家の籍に戻ったのはご存知ですか?」

 そうだった。当時まだ二歳だったマルティンだけでも連れてってと懇願した、ナタリアを扇で叩いて。

「はい、ナタリア自身から聞きました」

 その時、なんて薄情な母親なんだろうって思った。

「今はグラーフ伯爵令嬢に戻っていますが、かなら風当たりはきついそうです。幼い子供達を捨てて、お気に入りの娘だけ連れて逃げた女だと」

 そうだよね。しかも、ナタリアの話で、ほぼ無一文だったと聞いた時、ザーイク子爵の財産根こそぎ持って言ったんじゃないかなって思っていた。きっと周りはわかっているんだ。

「社交界の話は、私より詳しくはウーヴァ公爵令嬢が知っているはずですよ」

「そうですか。時期を見て話を聞いてみます」

 事例八の被害者の名前に連ねていた二人を、どうにかして救いたい。マルティンだって、まだ、小さいんだし。おそらく基点は、キーリク・サーデクの死の真相じゃないかなって、安易に考えているけど。
 うーん、と悩む。
 やっぱり、キーリク・サーデクという人物は、酒場で暴れて頭を打って死亡するような感じではない。ナタリアに事件の事は粗方聞いたが詳しく聞くのは、忍びない。
 情報、もっと情報を得ないと。
 でもなあ、かなりキナ臭いというが、事件の臭いがしてきた。もしかしたら、キーリク・サーデクは何かしらの事件に巻き込まれたりしてない?

「ウィンティア嬢? まさか、調べるおつもりですか?」

「え、いや、その何かとても気になってしまっただけです」

「本当にそれだけですか?」

 あ、鋭い。

「調べたとしても、十二歳の小娘が出きるのはたかが知れてますよ」

 て、返すと、保留婚約者は目をぱちぱち。

「こ、小娘って。自分で言います?」

「事実ですよ」

 切り返すと、いつの間にか庭を一周していた。
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