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新学期に向けて⑤

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「猶予は二年よ。その間、ウィンティア嬢には嫌な思いをさせるけど、我々ウーヴァ公爵が守ります。貴女はレオナルドの大事な婚約者」

「まだ保留です。もしかしたら、シルヴァスタで好い人見つかるかも」

「まだ、貴女そんなこと言ってるの? いい加減諦めなさい。逃がさなくてよ」

 そんなっ。

「私の大事な甥を犬扱いしたのだから、責任とりなさい」

 そんなーっ。
 あれは、渇を入れるために仕方なくっ。

「も、もし、キャサリンにレオナルド・キーファーが靡いたらっ」

「そんなことしたら、私はレオナルドを切り捨てるわ。それにレオナルドはキャサリンを毛嫌いしているわ。もしそうなれば、ウィンティア嬢、貴女をアンジェリカの養女にして、二人を叩きます」

「えっ、よ、養女っ?」

 そこまでするっ。

「ウィンティア嬢、私はね、ティーナ様とは古い中なのよ。彼女を恩人のように、姉のように慕っていたわ。レオナルドが望んだのもそうだけど、貴女がティーナ様の守りたかった孫娘だからと言う思惑もあるのよ」

 ふう、と思い出すように話すセシリア・ウーヴァ女公爵。

「キャサリンのせいで、ティーナ様が守り抜いたセーレ商会が危機に瀕する事を避けたいのよ。我々ウーヴァ公爵の領地にあるいくつかの農家も、セーレ商会と契約しているから、彼らも守らなくてはならないし。いままで多くの自爆した令嬢や令息をみてきたけど、キャサリンは異様よ。物わかりが悪いのも度が過ぎているわ。うまく誤魔化せているのは、見た目とあの回る口先だけよ。綻びがでれば、即死レベルね」

 凄い言い方。

「それに気が付かず、振り回される者がでるしょうが、我々ウーヴァ公爵が守ります。二年の辛抱よ。分かった?」

「は、はい」

 有無を言わせない言い方だ。私は仕方なく頷く。
 ナタリア達の件も、キャサリンの件もこの人の力がいる。
 それから、絵師によるキリール・ザーデクの似顔絵が、ざっと作成される。うん、ヴァレリーが成長したらまさにこんな感じだった。弁護士さんたちとの挨拶と簡単に話しもする。途中でマルティンでぐずぐず言ってるからヴァレリーがあやしに向かった。
 裁判に必要な証人確保や、証拠集めはすでに始まっている。色々書面化して、訴えるとして約2ヶ月かかると。
 それから、病の妹の為に手を染めた元同僚の騎士だけど、私がしたお願いが通った。

 その病の妹を保護して治療をしてほしい。

 ナタリアにしては、思うことがあると思ったけど、その妹は、おそらく長くはもたない。今の状況ならね。ただ、ウーヴァ公爵家が経営している最新治療をしている治療院に入れば、可能性はゼロではない。
 そうすれば、元同僚も素直に話してくれると思ったさは、何よりその元同僚がいなくなったら、その妹はどうなるか、だ。

「ナタリア、嫌だったよね」

 聞いてみたら、ナタリアは首をふる。

「確かになにも感じない訳ではないですが、その病の妹を見殺しにしたら、私はいずれ後悔します。父に顔向けできません」

「ナタリア…………」

 なんていい子だろう。
 きっと父親のキリール・ザーデクの影響だろうけど、いい子だっ。
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