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裁判⑧

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「ウィンティア嬢、寮の荷物をまとめてうちに移りなさい」

「さすがに無理かと」

 開口一番これだよ。

「もうすぐ試験ですし。学業に専念したいので」

 最近料理ばっかり、私、学生なんだよ。

「真面目で素晴らしいわ。家庭教師をつけるから心配ないわよ」

「家庭教師にはいい思い出が」

「アンジェリカが着きます、何か文句があって? あの子は大学の講師資格があってよ」

 とんでもない家庭教師がつきそうっ。

「アンジェリカ様のお手を煩わせるのは」

 ちょっとなあ。
 ふう、とセシリア・ウーヴァ女公爵がため息。

「これは貴女の為よ。実は、ナタリア・ザーデクが、ウィンティア・ローザの専属メイドとして働き、今回の裁判をナタリア・ザーデクに焚き付けたという噂が流れているのよ。身の安全の為よ」

「でも、私に実害が出るとはおもえませんが」

「何を言ってるの」

 セシリア・ウーヴァ女公爵が本日の新聞を差し出す。
 一面、キリール・ザーデクの事件の件だ。あの似顔絵がでかでかとでている。
 内容をしっかり読む前に、セシリア・ウーヴァ女公爵が話をする。

「昨日、裁判を傍聴したわ、あのアデレーナ・グラーフ、かなり怪しいわね」

「怪しい?」

 セシリア・ウーヴァ女公爵、優雅な仕草でお茶を一口。

「少し疑っていたのだけど、アデレーナ・グラーフは『魅了』の力があるように思えるの」

 あ、勘づいたんだ。
 アデレーナ・グラーフは事例八になり、犠牲者にはナタリアとヴァレリーの名前が上がっていた。

「吐きなさい」

「は?」

「また隠し事ね。私に隠せると思って?」

 ぐっ。
 なんでばれるんだろう? でも、隠してもなあ、結局この人の権利が必要だし。

「実は」

 斯々然々。
 アデレーナ・グラーフの名前が事例八にあるのと、犠牲者なのナタリアとヴァレリーの名前があったこと、そしてかなり、名前が薄くなっていることを説明する。

「なんで早く言わないの?」

「えっと、この裁判でアデレーナは社会的に追放できると思って」

「そうなるまでが長いのよ。『魅了』の力は強いのよ。どう作用して、影響するか予測がつかないのよ。貴女はレオナルドの大事な婚約者よ。私達には貴女を守る義務があるの」

「まだ、保留………………」

「お黙りなさい」

 ひーっ、怖いっ。

「貴女はあのキャサリン・ローザの件がネックだろうけど、レオナルドの正式な婚約者は貴女よ。もし、レオナルドがあのキャサリンに靡けば、私はあの子を切り捨てます。そして、貴女をアンジェリカの養女にします」

 ひーっ、有無を言わせない感じっ。

「分かって?」

 私は小さく、はい、と答える。

「学園で侍女を着けるように申請しています。それまで休学をさせたいのだけど、現状で貴女の性格では休学は無理でしょう」

 そうだね。実際、私に何かあったわけでもない。こそこそも言われない。最近はスティーシュルラ様のお陰でない。比較的に穏やか。
 ただ、最近別の意味で噂されてる。
 ウーヴァ公爵家から学園に通っているから、疑問に思われているだけ、ただ、それだけ。だけど、何かされてもない。

「ウィンティア嬢、貴女の為よ。窮屈でしょうけど、しばらくは外出は控えなさい」

「はい」

 ここは、この人の言うこと聞いとこう。
 その場では休学の選択はしなかったが、次の日、私は強制的に休学をせざるを得なくなった。
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