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閑話 テヘロンの侍女 その3
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うつら、うつら、うつら。
ウィンティア嬢がうつら、うつら。
私が髪の手入れをしていると、よく船を漕いでいる。
仕事に熱中して、婚期を逃した私には、当然子供はいない。もし、村で結婚していたら、ウィンティア嬢くらいの子供がいてもおかしくない。
たまに、愛しく感じてしまう。
ウィンティア嬢は真面目な性格だし、勤勉だ。顔立ちも知的な美しさを持ったティーナ夫人を彷彿とさせる。それに貴族令嬢なのになぜか、厨房でシェフと混じって料理をしていた、テヘロン人からしたら、嫁にしたい要素満載の少女だ。勤勉で家計を守り、厨房で家族の健康を気遣う。しかも味覚が、本職のシェフ顔負けだ。ウィンティア嬢がアイデアを出した料理が、テヘロン大使館のお茶会で大成功を納めてから、シェフ達が必死だ。しかも、スティーシュルラ殿下も、可愛がっている。
嫁にしたい要素が多すぎ。
アサーヴ殿下がウィンティア嬢を手に入れたい様子だが、どうも、彼女のアイデアと舌だけではないようだ。理由は私ごとぎでは分からないが、ただ、私は責務を全うするだけ。
あのティーナ夫人を毒殺に追いやった、キャサリン・ローザが大使館前で騒いだ時、暗殺用のナイフを忍ばせて玄関に向かったが、その前に馬車に押し込められて去っていた。ち、遅かったか。
私が刺繍したハンカチやワンピースもびっくりしながらも嬉しそうにしている姿を見ただけで、私は達成感に包まれる。
短い間だけの関係だが、私は、ティーナ夫人との大切な思い出を彷彿とすることが出来た貴重な時間だった。
あれから少し時が流れた。
ウィンティア嬢のアイデア、カレーパンが世間を圧倒している。同時に、ウィンティア嬢の専属メイドの父親の名誉を回復させるための裁判が始まった。
現在、ウィンティア嬢は、ウーヴァ公爵家から通っている。おそらく、ウィンティア嬢の身辺警護の為だろう。仮のはずである婚約者とは、悪くない関係のようだが。シェフが必死にソードになんとかなんとか言って、ソードが非常に困った様子だ。
あのテヘロン人に敵に回したアデレーナ・グラーフなどどうにでもなればいい。『テヘロンの至宝』と唄われる我らのスティーシュルラ殿下を蔑むような言葉を出した女の末路など、どうでもいい。
私はスティーシュルラ様の側に着き、しずしずと続く。
ふいに騒々しい声が。
とっさにスティーシュルラ殿下を守るように動いた視線の先に、地面に倒れ付したウィンティア嬢が。その小さな肩と背中を、男子学生の足で蹴っている。
ウィンティア嬢を、明らかに、自分より小柄でしかも女性のウィンティア嬢を、だ。
飛び出したい、だが、私はスティーシュルラ殿下の護衛なのだ。
『撃て』
スティーシュルラ殿下の口から初めて鋭い言葉が出る。
それは、ウィンティア嬢を害なす連中を叩きのめせ、と言うことだと、汲み取る。
普段から鍛えられた甲斐があり、私はあっという間に二名の男子生徒を叩きのめした。過剰防御かもしれないが、なんとかなるだろうと踏んでいた。
暴行されていた女子生徒を守ったのだから。仮の婚約者、レオナルド・キーファーも、一応親であるローザ伯爵夫妻も擁護してくれるはず。
ウィンティア嬢は真っ青な顔をして、言葉を出そうともがいていた。虐待を受けていた彼女には、想像以上の衝撃だったのだろう。
小刻みに震えるウィンティア嬢を、抱えて、私は医務室に走った。
本当なら、このままテヘロン大使館の馬車に乗せて帰りたかったのを我慢して。
ウィンティア嬢がうつら、うつら。
私が髪の手入れをしていると、よく船を漕いでいる。
仕事に熱中して、婚期を逃した私には、当然子供はいない。もし、村で結婚していたら、ウィンティア嬢くらいの子供がいてもおかしくない。
たまに、愛しく感じてしまう。
ウィンティア嬢は真面目な性格だし、勤勉だ。顔立ちも知的な美しさを持ったティーナ夫人を彷彿とさせる。それに貴族令嬢なのになぜか、厨房でシェフと混じって料理をしていた、テヘロン人からしたら、嫁にしたい要素満載の少女だ。勤勉で家計を守り、厨房で家族の健康を気遣う。しかも味覚が、本職のシェフ顔負けだ。ウィンティア嬢がアイデアを出した料理が、テヘロン大使館のお茶会で大成功を納めてから、シェフ達が必死だ。しかも、スティーシュルラ殿下も、可愛がっている。
嫁にしたい要素が多すぎ。
アサーヴ殿下がウィンティア嬢を手に入れたい様子だが、どうも、彼女のアイデアと舌だけではないようだ。理由は私ごとぎでは分からないが、ただ、私は責務を全うするだけ。
あのティーナ夫人を毒殺に追いやった、キャサリン・ローザが大使館前で騒いだ時、暗殺用のナイフを忍ばせて玄関に向かったが、その前に馬車に押し込められて去っていた。ち、遅かったか。
私が刺繍したハンカチやワンピースもびっくりしながらも嬉しそうにしている姿を見ただけで、私は達成感に包まれる。
短い間だけの関係だが、私は、ティーナ夫人との大切な思い出を彷彿とすることが出来た貴重な時間だった。
あれから少し時が流れた。
ウィンティア嬢のアイデア、カレーパンが世間を圧倒している。同時に、ウィンティア嬢の専属メイドの父親の名誉を回復させるための裁判が始まった。
現在、ウィンティア嬢は、ウーヴァ公爵家から通っている。おそらく、ウィンティア嬢の身辺警護の為だろう。仮のはずである婚約者とは、悪くない関係のようだが。シェフが必死にソードになんとかなんとか言って、ソードが非常に困った様子だ。
あのテヘロン人に敵に回したアデレーナ・グラーフなどどうにでもなればいい。『テヘロンの至宝』と唄われる我らのスティーシュルラ殿下を蔑むような言葉を出した女の末路など、どうでもいい。
私はスティーシュルラ様の側に着き、しずしずと続く。
ふいに騒々しい声が。
とっさにスティーシュルラ殿下を守るように動いた視線の先に、地面に倒れ付したウィンティア嬢が。その小さな肩と背中を、男子学生の足で蹴っている。
ウィンティア嬢を、明らかに、自分より小柄でしかも女性のウィンティア嬢を、だ。
飛び出したい、だが、私はスティーシュルラ殿下の護衛なのだ。
『撃て』
スティーシュルラ殿下の口から初めて鋭い言葉が出る。
それは、ウィンティア嬢を害なす連中を叩きのめせ、と言うことだと、汲み取る。
普段から鍛えられた甲斐があり、私はあっという間に二名の男子生徒を叩きのめした。過剰防御かもしれないが、なんとかなるだろうと踏んでいた。
暴行されていた女子生徒を守ったのだから。仮の婚約者、レオナルド・キーファーも、一応親であるローザ伯爵夫妻も擁護してくれるはず。
ウィンティア嬢は真っ青な顔をして、言葉を出そうともがいていた。虐待を受けていた彼女には、想像以上の衝撃だったのだろう。
小刻みに震えるウィンティア嬢を、抱えて、私は医務室に走った。
本当なら、このままテヘロン大使館の馬車に乗せて帰りたかったのを我慢して。
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