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第一章
村での日々
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村は『英雄の村』というらしい。なぜかとルースに聞いてみると、賢者ルースを始め、王宮騎士長だった人など、各種魔術、武術に優れた人々がここベルファ王国を引退した都に暮らしているかららしい。
そのため各種結界も張られており、小さな村の割には安全で暮らしやすいとのことだ。
だから『建物』からの道に魔物などが出なかったのかな?
俺はしばらくルースの家で暮らしていいことになった。
さっそく剣の研究などをしてみようかと思っていた矢先、
「ユージよ。今日はおぬしに紹介したいものがおる。」とルースに言われた。
現れたのはガタイのでかい、いかにも歴戦の勇士といったいでたちのおっさん。いじめられっこ出身の自分としては見た目だけでビビってしまう。
「おう!お前が『建物』から出てきた異世界人だな!」
と、見た目通りの豪快な言い方で話しかけてきた。厳密にいうと異世界人じゃなくて転移人です・・といいたいのをモゴモゴとこらえる。
「何だぁ?ひょろいなぁ?本当に『剣』に選ばれたのかよ!」
『剣』に選ばれる?転移してきた人なら誰でも選ばれるわけじゃないのか?
転移した人は俺のほかにもいるようだし、どうせなら身体能力が高いとか知能が高いとか、色々いそうなもんだが。
そこで賢者ルースが
「ユージよ。あの建物は異界からやってきたものには誰にも見えるわけではない。建物は魂そのもので資格を判断するのじゃ。お主はまぁ、一応選ばれたことになるのかのう?」
と、自信になるんだかならないんだか、よくわからない感じで説明してくれた。
メンヘラの引きこもりの魂のどこが選ばれたのかよくわからない。
「おぬしが学校に入るにあたっては、推薦人が必要になる。おぬしがこれから武術の力を用いて入学を目指す場合、儂よりもこの男のほうがふさわしいと考えての。」
するとおっさんは
「おう!俺は騎士長をやっていたベルフェ・グールというもんだ。これからお前に武術を教えることになった。まぁ嫌と言っても無理やり教えてやるがな?」
と言ってガハハと笑った。引退後の生活は暇なのだろうか?
でも、こちらとしてもこの世界で生きていくうえで武術を学ぶのは助かるかもしれない。ありがたく申し出を受けることにした。
「じゃあまずはお前がどれほどの力を持っているか。言い換えればどれだけその武器の力を引き出せるか見てやろう。」
とベルフェは言った。
こちらとしても剣の力を知りたいところだったのでちょうどいい。
「構えてみろ」
俺は剣を鞘から抜き放ち、学校で習ったことのある正眼に構えてみた。
「なんだぁ?まったく迫力を感じねぇなあ?なんかその辺のガキと変わらねぇじゃねえか?」
そんなこと言われてもこちらとしてもどうすればいいのかわからない。
するとルースが
「ユージ。精霊などを呼び出す呪文は『コール』という。まずは試しに唱えておぬしの中にある英雄を呼び出してみよ」
なるほど。剣を構えただけじゃダメなのか。
剣ならもう呼ぶ人は決まりだろう。
・・・
・・
・
『コール!宮本武蔵!!』
その瞬間剣が光り輝き、日本の刀の形状らしきものに変化していく。
体中から湧き上がる力・力!刀が軽く感じ、なんでも切れそうな実感が伴う。足腰にバネを感じどこまでの速く駆け出せそうだ。
目の前には自然体に剣を下げているベルフェの姿。
これなら!!
とりあえず殺さないように注意して・・とびかかる!
・・・
次の瞬間、俺はぶったおれていた。
ぶっ倒れていた・・というのは、後から聞いた話だが、構えて一瞬剣が光ったと思ったらうつ伏せに倒れていたらしい。
目を覚ました俺にルースは
「やはりまだ早かったようじゃのう・・・しばらくこの村で研鑽をする必要がありそうじゃのう・・」
そんなこと言われても・・・もともと身体スペックが低い俺には無理だったのだろうか?
でも一瞬確かに体中に力は感じた。
しかしベルフェは
「いや、ルース。一瞬だが確かにこいつからとてつもないオーラを感じた。強者特有の雰囲気という奴だ。この武器が使いこなせればかなりやれるかもしれねぇ。」
と、見直したように言ってくる。
「なるほど。お主のもとで武術の修業をすれば、力をもっと引き出せるようになるかもしれんのう」
と倒れている俺のそばで話をしている。
意識を取り戻した後も、体中が痛くてとても立ち上がれないが、確かに修業を積めばもう少しなんとかなるかもしれない。
とささやかな希望を抱きつつ、俺は意識を手放した。
――――――――
翌日から、午前中はルースの下で読み書きの勉強。午後はベルフェの下で武術の鍛錬という日々が始まった。
「今のお主では学業面でも武術面でも、とても学園ではやっていけないじゃろう。しばらく腰を据えてこの村で修業するがよい」
と、ルースから言われたので自分でも覚悟を決めて、勉強と修業に集中することにした。
もっともインターネットもパソコンもスマホもない中では他にやることがないということもあったが。
勉強については思っていたよりははかどった。文字の解読はともかく読み方に地球の英語のような響きがあり、意外とすんなり頭に入ってきたからだ。
体が若いせいかもしれない。
ともかく、午前の勉強はルースに個人教授で教えてもらうほかに書き取りなどの練習、読書など詰め込まれ感満載であったが、なんとかついていった。
ここで怠けたら、引きこもりどころではない。生きていけなくなるかもしれないという切迫した事情があったからだ。
幸い、村には王都からの支給品や、近隣の村々から食料の貢ぎ物があったりと暮らしていく分には十分な環境があった。
村に住んでいる人々も一芸に秀でた人ばかりなので、猟にいって獲物をとってきては、おすそわけといってルースの家に置いて行ってくれる。
ルースはこの村で賢者として村長的な立ち位置にいるみたいだ。
考えてみれば異世界転移などは、食料など、まず生きていくための生活をしなければならないと思うのだが、そういった心配がないのはありがたかった。
午後からはベルフェの修業になる。
初日はひどいもんだった。
「いいか?まずお前は技術うんぬんの前に基礎体力がねぇ!これから俺が考えたメニューでしばらくやり通せ!」
ベルフェのメニューは日本の筋トレとあまり変わらない。が、いちいち余計なものがついてくるのがやっかいだった。
例えば腕立て伏せ。通常の腕立てではなく、指立てで5指がひきつりそうになる。ベルフェ曰く剣を握る握力に関わってくるのだとか。そして徐々に背中に重りをのせていくらしい。
そのほか腹筋、スクワット、などいちいち重しをつけてくる。はじめは一回もできずぜぇぜぇ言って倒れていた。普通の日本人よりも体力がないのだ。負荷を増やされてできるわけがない。
筋トレのあとはランニング。近隣の丘をベルフェについて走り回る。もちろん重し付きで。背中に石などを積んだリュックのようなものを背負って走っていく。ついていけるわけはない。このオッサンはなんでこんなに元気なんだろう?日本の自衛隊などが重い物資を背負って行動する訓練のようだ。
ベルフェ曰く平地をダラダラ走るよりは起伏にとんだ場所を走るほうが実戦の力がつくとのこと。ついでに山で見つけた山菜など食べれるものや傷の治療に効くものなどを教えてもらう。このあたりは王国軍隊で教えているサバイバル術のようだ。
素振り。筋トレ、ランニングでへとへとになったあと、重い剣を抱えて、様々な剣の打ち方に沿った素振りを行う。授業で習っていない切り方なども教わった。
剣だけでなく数日に一回は槍の修業や弓、体術の修業なども行った。それぞれの達人が住んでいる村なので師匠に困ることはない。やっているときはもう勘弁してくれ、という思いだったが、武術を志す人から見たらうらやましい環境なのかもしれない。
最後に剣を用いての『コール』修業。
ベルフェは、
「お前はその剣を使いこなせなきゃ話にならねぇ。まずコール時間を伸ばすため、毎日コールを使ってみろ!」
とのこと。確かに何もない自分ではこの剣がなければ何もできまい。学校にいくようになってもついていけないだろう。
ちなみに剣はコールした英雄に従って変形するので、『ホーンテッド』と呼ぶことにした。
宮本武蔵を始め柳生一族や新選組、果ては本田忠勝など様々な英雄を試すが、すぐにぶっ倒れてしまう。
ちなみに呼び出せる英雄は日本のみ。諸葛孔明やナポレオンなどは呼び出せないようだ。故郷を同じくする人物しかできないのか。戦国武将など歴ヲタ知識を発揮して呼び出してみるものの結果は同じ。戦略戦術に優れた武将の場合はひどい頭痛がして気を失ってしまう。
倒れた俺をベルフェがルースの家まで背負って送り届けてくれるのが一日の修業の終わりだった。
しかし異世界?で生活の面倒を見てくれているのだから文句も言えず。床に就くなり毎日泥のように眠った。
そのため各種結界も張られており、小さな村の割には安全で暮らしやすいとのことだ。
だから『建物』からの道に魔物などが出なかったのかな?
俺はしばらくルースの家で暮らしていいことになった。
さっそく剣の研究などをしてみようかと思っていた矢先、
「ユージよ。今日はおぬしに紹介したいものがおる。」とルースに言われた。
現れたのはガタイのでかい、いかにも歴戦の勇士といったいでたちのおっさん。いじめられっこ出身の自分としては見た目だけでビビってしまう。
「おう!お前が『建物』から出てきた異世界人だな!」
と、見た目通りの豪快な言い方で話しかけてきた。厳密にいうと異世界人じゃなくて転移人です・・といいたいのをモゴモゴとこらえる。
「何だぁ?ひょろいなぁ?本当に『剣』に選ばれたのかよ!」
『剣』に選ばれる?転移してきた人なら誰でも選ばれるわけじゃないのか?
転移した人は俺のほかにもいるようだし、どうせなら身体能力が高いとか知能が高いとか、色々いそうなもんだが。
そこで賢者ルースが
「ユージよ。あの建物は異界からやってきたものには誰にも見えるわけではない。建物は魂そのもので資格を判断するのじゃ。お主はまぁ、一応選ばれたことになるのかのう?」
と、自信になるんだかならないんだか、よくわからない感じで説明してくれた。
メンヘラの引きこもりの魂のどこが選ばれたのかよくわからない。
「おぬしが学校に入るにあたっては、推薦人が必要になる。おぬしがこれから武術の力を用いて入学を目指す場合、儂よりもこの男のほうがふさわしいと考えての。」
するとおっさんは
「おう!俺は騎士長をやっていたベルフェ・グールというもんだ。これからお前に武術を教えることになった。まぁ嫌と言っても無理やり教えてやるがな?」
と言ってガハハと笑った。引退後の生活は暇なのだろうか?
でも、こちらとしてもこの世界で生きていくうえで武術を学ぶのは助かるかもしれない。ありがたく申し出を受けることにした。
「じゃあまずはお前がどれほどの力を持っているか。言い換えればどれだけその武器の力を引き出せるか見てやろう。」
とベルフェは言った。
こちらとしても剣の力を知りたいところだったのでちょうどいい。
「構えてみろ」
俺は剣を鞘から抜き放ち、学校で習ったことのある正眼に構えてみた。
「なんだぁ?まったく迫力を感じねぇなあ?なんかその辺のガキと変わらねぇじゃねえか?」
そんなこと言われてもこちらとしてもどうすればいいのかわからない。
するとルースが
「ユージ。精霊などを呼び出す呪文は『コール』という。まずは試しに唱えておぬしの中にある英雄を呼び出してみよ」
なるほど。剣を構えただけじゃダメなのか。
剣ならもう呼ぶ人は決まりだろう。
・・・
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『コール!宮本武蔵!!』
その瞬間剣が光り輝き、日本の刀の形状らしきものに変化していく。
体中から湧き上がる力・力!刀が軽く感じ、なんでも切れそうな実感が伴う。足腰にバネを感じどこまでの速く駆け出せそうだ。
目の前には自然体に剣を下げているベルフェの姿。
これなら!!
とりあえず殺さないように注意して・・とびかかる!
・・・
次の瞬間、俺はぶったおれていた。
ぶっ倒れていた・・というのは、後から聞いた話だが、構えて一瞬剣が光ったと思ったらうつ伏せに倒れていたらしい。
目を覚ました俺にルースは
「やはりまだ早かったようじゃのう・・・しばらくこの村で研鑽をする必要がありそうじゃのう・・」
そんなこと言われても・・・もともと身体スペックが低い俺には無理だったのだろうか?
でも一瞬確かに体中に力は感じた。
しかしベルフェは
「いや、ルース。一瞬だが確かにこいつからとてつもないオーラを感じた。強者特有の雰囲気という奴だ。この武器が使いこなせればかなりやれるかもしれねぇ。」
と、見直したように言ってくる。
「なるほど。お主のもとで武術の修業をすれば、力をもっと引き出せるようになるかもしれんのう」
と倒れている俺のそばで話をしている。
意識を取り戻した後も、体中が痛くてとても立ち上がれないが、確かに修業を積めばもう少しなんとかなるかもしれない。
とささやかな希望を抱きつつ、俺は意識を手放した。
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翌日から、午前中はルースの下で読み書きの勉強。午後はベルフェの下で武術の鍛錬という日々が始まった。
「今のお主では学業面でも武術面でも、とても学園ではやっていけないじゃろう。しばらく腰を据えてこの村で修業するがよい」
と、ルースから言われたので自分でも覚悟を決めて、勉強と修業に集中することにした。
もっともインターネットもパソコンもスマホもない中では他にやることがないということもあったが。
勉強については思っていたよりははかどった。文字の解読はともかく読み方に地球の英語のような響きがあり、意外とすんなり頭に入ってきたからだ。
体が若いせいかもしれない。
ともかく、午前の勉強はルースに個人教授で教えてもらうほかに書き取りなどの練習、読書など詰め込まれ感満載であったが、なんとかついていった。
ここで怠けたら、引きこもりどころではない。生きていけなくなるかもしれないという切迫した事情があったからだ。
幸い、村には王都からの支給品や、近隣の村々から食料の貢ぎ物があったりと暮らしていく分には十分な環境があった。
村に住んでいる人々も一芸に秀でた人ばかりなので、猟にいって獲物をとってきては、おすそわけといってルースの家に置いて行ってくれる。
ルースはこの村で賢者として村長的な立ち位置にいるみたいだ。
考えてみれば異世界転移などは、食料など、まず生きていくための生活をしなければならないと思うのだが、そういった心配がないのはありがたかった。
午後からはベルフェの修業になる。
初日はひどいもんだった。
「いいか?まずお前は技術うんぬんの前に基礎体力がねぇ!これから俺が考えたメニューでしばらくやり通せ!」
ベルフェのメニューは日本の筋トレとあまり変わらない。が、いちいち余計なものがついてくるのがやっかいだった。
例えば腕立て伏せ。通常の腕立てではなく、指立てで5指がひきつりそうになる。ベルフェ曰く剣を握る握力に関わってくるのだとか。そして徐々に背中に重りをのせていくらしい。
そのほか腹筋、スクワット、などいちいち重しをつけてくる。はじめは一回もできずぜぇぜぇ言って倒れていた。普通の日本人よりも体力がないのだ。負荷を増やされてできるわけがない。
筋トレのあとはランニング。近隣の丘をベルフェについて走り回る。もちろん重し付きで。背中に石などを積んだリュックのようなものを背負って走っていく。ついていけるわけはない。このオッサンはなんでこんなに元気なんだろう?日本の自衛隊などが重い物資を背負って行動する訓練のようだ。
ベルフェ曰く平地をダラダラ走るよりは起伏にとんだ場所を走るほうが実戦の力がつくとのこと。ついでに山で見つけた山菜など食べれるものや傷の治療に効くものなどを教えてもらう。このあたりは王国軍隊で教えているサバイバル術のようだ。
素振り。筋トレ、ランニングでへとへとになったあと、重い剣を抱えて、様々な剣の打ち方に沿った素振りを行う。授業で習っていない切り方なども教わった。
剣だけでなく数日に一回は槍の修業や弓、体術の修業なども行った。それぞれの達人が住んでいる村なので師匠に困ることはない。やっているときはもう勘弁してくれ、という思いだったが、武術を志す人から見たらうらやましい環境なのかもしれない。
最後に剣を用いての『コール』修業。
ベルフェは、
「お前はその剣を使いこなせなきゃ話にならねぇ。まずコール時間を伸ばすため、毎日コールを使ってみろ!」
とのこと。確かに何もない自分ではこの剣がなければ何もできまい。学校にいくようになってもついていけないだろう。
ちなみに剣はコールした英雄に従って変形するので、『ホーンテッド』と呼ぶことにした。
宮本武蔵を始め柳生一族や新選組、果ては本田忠勝など様々な英雄を試すが、すぐにぶっ倒れてしまう。
ちなみに呼び出せる英雄は日本のみ。諸葛孔明やナポレオンなどは呼び出せないようだ。故郷を同じくする人物しかできないのか。戦国武将など歴ヲタ知識を発揮して呼び出してみるものの結果は同じ。戦略戦術に優れた武将の場合はひどい頭痛がして気を失ってしまう。
倒れた俺をベルフェがルースの家まで背負って送り届けてくれるのが一日の修業の終わりだった。
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