無職メンヘラ男が異世界でなりあがります

ヒゲオヤジ

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第一章

クラブ活動

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倒れた俺がキースに医務室に運ばれると、ダースが治療を受けていた。取り巻きの二人もいる。

俺はぜぇぜぇと息を整えつつダースと目が合わないように治療の順番を待つ。

すると、
「よう・・・あんときは悪かったな。お前とアカネちゃんが仲良くしているのを見てつい、カーッとなっちまってよ。」
!!
何とダースから謝ってきた。

キースも驚いている。

「い・・いやこちらこそ。水かけちゃったしね。」
水かけたのはアカネだがここはこう言っておくほうが無難だろう。

「それにしてもお前、やるな!俺、クラスじゃ負けたことねぇんだけどな・・」
「そうそう、俺たちもダースが負けるなんて、ケンカ含めて初めて見たぜ!」
と、取り巻きの連中まで騒いでいる。

「ああ、たまたま僕がベルフェって強い人に教えてもらってたからだよ。」

「ベルフェって?ベルフェ・グールか?ああ、そりゃ納得だぜ・・前騎士長に鍛えられてたんだったらな・・」

なんか意外と気のいい奴みたいだ。
「ケガは大丈夫かい?」
とふと気になって聞いてみる

「ああ、ただの打撲だってよ。ヒールですぐに良くなるってよ。なんとなくわかったんだが・・手加減してくれてたんだろ?」

「いや、そんなことないよ。たまたま必死に当てたから弱い打撲だったんだよ」

「ヘッ!じゃあそういうことにしとくか。」

と、ダースの治療が終わったようだ。

「言い忘れてたが、俺はダース・ガンビルだ。家は武器商人をやってる。お前は?」

「俺はユージ・ミカヅチだよ。」
なんとなく異星人であることや英雄の村のことは黙っていた。

「そうか、ユージ、じゃあまたな!今度飯でも食おうぜ!」
とさわやかに去っていった。

俺の治療の番がきた。
医務室の先生はジュナ・ゲールといった。
「あらあら、見たところケガはないようなんですけど、どうかされましたが?」

「いや、ケガではないんですけど実は持病がありまして・・」
と、パニック発作やうつ病について説明する。

「あらあら、それは『気鬱』ね。ヒールも効かないし特効薬もないから安静にしてるしかないわねぇ。」
と、言われる。
まぁ科学の進んだ地球でも特効薬はないんだ。この見た感じ中世ヨーロッパ風の世界じゃ仕方ないよな。

「キースここまでありがとう。俺は少し横になっていくから、授業に戻ってくれ」

「あ、ああ、そうか?別に今日は大会で授業ないけど、アカネちゃんやアイリスちゃんも心配してるだろうからいったん戻るけどよ。しかしあのダースがなぁ・・」
とブツブツ言いながら去っていった。

それを見てベッドに横になる。
しばらく症状は出なかったんだけどなぁ・・戦いが終わって気が抜けちゃったのかな・・などと考えつつうとうとしているといつの間にか眠ってしまっていた。

――――――――

目が覚めるとアカネとアイリスがいた。

アカネはすぐに気づき、
「ユージ!目が覚めたのね!良かった・・」
と心配そうな顔で覗きこんでくる。

アイリスは
「気鬱だってきいて・・ヒールも効かないからどうしようと思ってたよ・・」
とその顔を心配そうに曇らせ問いかけてくる。

「ああ、心配かけてごめんね。これは持病みたいなもんだから、大丈夫だよ」
「そんなこと言ったっていきなり倒れこむんだもの。心配だってするでしょう?」
アカネは怒ったような心配したような複雑な顔で言う。

「大丈夫、ホントに。もう慣れっこだから」
と言って立ち上がろうとするとアカネが手を肩に回して立ち上がらせてくれる。
あ、いい匂い・・ってこんなときに何を考えてるんだ俺は。

「ほ、ホントに大丈夫だから。とりあえず寮に帰って休むわ。」
俺は一人で立ち上がり、ポンポンと足踏みをしてみせる。

「本当に大丈夫なのね?じゃあ私たちもう行くから。」
「ああ、大会を楽しんできてくれよ」

寮に帰るといきなり疲労感を感じそのままベッドにダイブした。

――――――――

結局3日ほど俺は寝込んでいた。
久々の感覚だ。

なんとか起き上がれるようになるとボーッとした頭で登校する。

授業中もボーッとしていたが午後になるにつれ体調も復活してきた。

三日ぶりに風魔法研究部に顔を出してみた。

「ユージ!もう大丈夫なの?」
アカネが早速駆け寄ってくる。

「ああ、もう平気。今日からクラブにも顔を出すよ。」
と答える。

ウェイ部長が
「復調してなによりだ。君が復活したらそろそろ例の魔法を始めようかと思っていたんだ」
とほほ笑みかけてくる。
この笑顔にやられる女生徒は多いだろうなぁ・・

――――――――

「先日も言ったように剣に沿って真空の刃を伸ばすには操気の術、ウインドウコントロールから、真空エバキュエイテッド固定フィックス、そして伸長エクステンションという段階を踏む必要がある。」

なるほど。空気を操作して、真空状態を作り、その状態を固定するわけか。
思ったより難しそうだな。

「まず僕が見せるから見ててね」

するとウェイ部長は剣を取り出し集中し始めた。
「操気の術」
周囲の空気がウェイ部長を中心に動き始めた。

「ここで剣が真空をまとう姿をイメージするんだ。真空エバキュエイテッド!」
すると剣の周囲の空気がゆらゆらと動くのがわかる。剣の周りの空気と外側の空気に断層が作られたようだ。

「ここで真空状態を固定させる。固定フィックス!」
ゆらゆらとしていた断層が剣に沿ってかっちりと固まるのがわかる。

「そして最後に伸長させる!伸長エクステンション!」
剣を囲んでいた真空の空気の断層が剣に沿って伸びるのがわかる。長さは三メートルほどにまでなった。

「ふぅ、これで君の言っていた剣に真空をまとわせて有効範囲を伸ばす術は終了だよ。僕も得意なわけじゃないから、練習すればもっと伸ばせると思うよ」

早速やってみるか。

まず空気を真空にする・・
ってどうやるんだ?
「イメージだよ!君の剣の周囲から空気が抜けていく姿をイメージするんだ!」

「イメージ・・空気が抜けていく・・イメージ・・」

――――――――

「・・だぁっ意外と難しい!」

ウェイ部長は笑って
「まぁはじめからうまくはいかないさ。そっちの練習は個人練習として、今日はユージ君もいることだし操気の術からやってみようか。ハンナとアカネ君には復習になっちゃうけど。」

「大丈夫です。基本の操気の術が洗練されれば他の術も向上しますから!」
とアカネ。相変わらず向上心あるな。

「わ・・私は今一つなのでむしろありがたいです・・。」
とハンナが言う。
うーん、やっぱり同族感あるなぁ・・この子には・・今は先輩だけど。

「さてじゃあ最もシンプルな背後から風をあてて高速ダッシュをするものをやってみようか」
ウェイ部長が言う。

「ユージ君は初めてだから説明しとくね。背後に風の塊をイメージしてそれを自分の背中にたたきつけるイメージでやってごらん」

「はい。風・・背後の風・・イメージ・・」
お、なんか背後に風を感じてきた。

「そう!そこで自分の背中にたたきつける感じで!」

「よし、こうかな?」
俺はイメージした風を背中にぶつけるイメージで丹田から練った魔力を背後に向ける。

ブォッ

背中に風が来た!よしこのまま進めば・・・

・・・

と、俺は盛大にすっころんでいた・・。

「・・・・」

「ちょっとユージ!何やってんのよ!操気の術では体のバランスを取りながらやるのが常識なのよ」
アカネに突っ込まれる。

「うーん、はじめは難しかったかな?じゃあアカネ君、見本を見せてあげてくれるかい?」

「はい!」

瞬間、アカネの周囲に空気が渦を巻いて集約されていくのがわかる。俺とは全然違う風量だ。

「ハッ!」
アカネはまず風の力を背中に受け、前方に高速ダッシュして見せた。続いて周囲の風をコントロールして左右にも高速移動して見せる。

更には地面から沸き起こる暴風の渦。
今度はアカネの下から風が巻き上がる。

「ハァッ!」

なんと、今度は空中に5メートルほど飛び上がってみせた!さ・・さすがアカネだなぁ・・・

ちょっとスカートがひらひらしていたが気にしないことにしよう。

アカネは見事に着地を決めると
「まぁこんなもんよ。どうだった?」

「す・・すごいな。風魔法もここまで使えれば色々な戦いに使えそうだ」

「まぁ私の場合、爆風で自分自身を吹っ飛ばすってのもできるんだけどね。風魔法の方が長く安定して使えるから。」

これなら、立っている大型の魔獣などにも、間合いを詰めて頭に攻撃することとかもできそうだな。
よし、今日から自主練メニューに入れていこう。

「まぁ、アカネ君くらい使いこなせる人は学園にもめったにいないよ。操気の術に関しては僕と同等以上だからね」
とウェイ部長が言う。フォローなのかな?

とりあえず俺はすっころんだ時についた砂を払いつつ、バランスのとり方も難しそうだな・・などと考えていた。まずは高速移動するための風の操作からだな・・。
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