無職メンヘラ男が異世界でなりあがります

ヒゲオヤジ

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第一章

課外授業

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お昼の時間アイリスに目ざとく見つけられると詰め寄られた。

「もう、ユージ君なんで逃げちゃうかなぁ?私もジルもポカーンだよ?」

「あはは・・、実は緊張しちゃって逃げちゃったんだ。ごめん」

「次はちゃんと遊びにきてね?お父様、お母様も楽しみにしてるって。他のお友達もご一緒にって言ってたからアカネとキース君も一緒なら大丈夫でしょ?」

「・・そうだね・・それなら大丈夫かも・・」

「相変わらず根性なし君ね~」
アカネにつっこまれる。

「え、俺も招待受けてるの?おいユージ。次回は一緒にいくからな!」

そんな鼻先荒く言われても。まぁアカネとキースが一緒ならマナーとかフォローしてくれそうだ。貴族の晩餐なんて普通、日本にいても行く機会ないだろうしな。次チャンスがあったら行ってみるか。

――――――――

次の日の授業開始前のホームルームにて。
ブリッツ先生が皆に告げた。

「来週は課外実習として野外ハンティングを行う。2年次生全クラス合同参加だ。各自担当武器の手入れを怠らぬように。」

課外実習?野外ハンティング?
要するに狩りみたいなもんか。

「当日は私たち教師陣にて広域結界を張り魔族などは入れぬようにする。その点は安心していいが、仕留める獲物はワイルドボアなど危険なものもいる。実際毎年けが人は数人出ているレベルなので注意するように。以上」

さっそくキースに聞いてみる。
「今先生が言ってたのって狩りみたいなもんで合ってる?」

「ああ、ユージは初めてだもんな。狩りで合ってるよ。生徒全体で追い込みしたり罠仕掛けたりしながら弓や槍、剣で獲物をしとめていくんだ。まぁ去年もやったけど大したことなかったよ。獲物は取れる時もあれば全然取れない時もあるしな!」

そうなのか。じゃああまり気張っても仕方ないな。

「でも獲物が取れたら学園で調理して食べさせてくれるからちょっとしたご馳走になるぜ?まぁ取れたらだけどな!ニャハハ」

・・運に任せよう。

――――――――

「何言ってんのよ。獲物の数はクラス内査定に響くわよ?」
昼食時、アカネは言った。

「確かにクラス変動するほどじゃないし、定期テストや武術・魔術テストほど評価に響くわけじゃないけど、狩猟を通じて実戦の勘を見られてるのよ。」

・・響くのか。しかしクラス内査定ってよくわからんけど。俺の査定はどうなってるんだ?

「ユージの場合、先日の武術大会でBクラスのダースを破ったことでだいぶアップしてるはずよ。クラス間移動は学期頭に行われるからそのときにわかるわね。ああ、でも勉強の査定割合も大きいからそっちがだめなら結局上がれないけどね。」

うーん、故郷に帰りたいんなら学園内でも上位クラスを目指して他人を蹴落としてでも、って方が良さそうなんだけど、どうにも性格的に積極的になれないな・・
まぁ俺の場合まずは勉強で上がれなさそうだけど。

「ユージ、勉強の方はどうなのよ?」

「いや、ついてくので必死だよ。考えてみてくれ。俺だけ外国語の教科書でやってるようなもんなんだから。」

そう、いくらルースに一年教えてもらっていたからと言って勉強の難しさは厳然として存在する。外国でその国の言語で授業を受けているようなもんだ。

「何がダメなの?」
「うーん、特にローム語と歴史がダメかなぁ・・こればっかりは異星人の俺には厳しいな・・」
言語が半分くらいしかわからないのだ。歴史は今まで見たことも聞いたこともないもの。この二つが苦手であるのは仕方ないところだろう。

「しょうがないわね。テスト前になったら教えてあげるわよ。」

「あ、歴史だったら私も教えてあげられるかもだよ?」
アイリスまで・・

「よっしゃ!じゃあみんなで勉強会しようぜ!」
とキースはアイリスがいるのでもちろんノリノリ。

「あ、ああ。じゃあその時になったらお願いするかもしれない。ありがとう。」

とりあえず礼を言っておく。教えてもらうのは本当に助かるしな。

「あ、ところで野外ハンティングで結界を張るっていってたけど、そんなに危険なのか?」

「そこは微妙なところね・・多種族が入り乱れて戦争していた時代はあったけど・・もうどこもそんなことやってないしね。本当に仲がいいのか、単に冷戦状態なのかはそれぞれに違うけど。」
「もしかして、魔王とかもいたりするのか?」
「そりゃいるわよ。魔族の王でしょ? 他にもエルフ、ドワーフ、獣人族、魚人族とか規模・強さの大小はあれ、無数に存在しているわ」

「そ・・その魔族とは戦争になったりしないのか?」

「うーん100年位前に戦争があったんだけど、その後は停戦協定が結ばれて、以来人間側からも魔族からも特に接触はしてないはずよ。 だから今野外で人間に脅威になるのは知能の低い魔獣や、滅多にいないけど、存在するだけで周辺の環境に影響するような大物だけになるわね。」

「なるほど。勉強になりました。」
「どういたしまして」
とアカネは笑った。

――――――――

野外ハンティングの日がやってきた。

SクラスからFクラスまでの教師陣、そして生徒たちが指定された場所に集合する。

「よし、みなそろったな。ではこれより馬車にて現地へ向かう」
Sクラス担任のヘルメス・ホフマン先生が皆に指示を出す。

「各自決められた順に馬車に乗りこめ!」

馬車に乗り込むと意外と中は快適に4人分の座席に荷物込みで4人きちんと座れるスペースが確保してあった。キースは他の馬車に乗っていった。
たまにはぼっちに戻るのもいいかもしれない。

馬車が動き出した。

300人近くの生徒の馬車が長い行列を作って移動していく。

馬車は4時間ほどで目的地についた。

先生たちは早速集まって共同で結界を張る作業をしている。
しばらくして結界の準備が整ったようだ。

ヘルメス先生が指示を出す。
「よし、各担当生徒は森周辺から獲物を追い出す準備をしろ」

そこであらかじめ決められた生徒が包囲網を形成していく。
森周辺に散らばり声をあげたり棒で草むらを叩いたりしつつ動物を追い出すのだ。

この辺りは日本でも行われていた鷹狩りと雰囲気が似ている。

しばらくして包囲網完成の狼煙があがる。

「包囲網を狭めつつ獲物を追い出せ。弓隊、剣槍隊準備!」
ここで包囲網の中に獲物がいなければ再び場所を移してやり直し。

幸い獲物が見つかっているようだ。
弓隊が矢を放ち始める。
既に何匹かの鳥やウサギなどを仕留めたらしい歓声があがっている。

俺は剣隊として主にワイルドボアなど中型獣にとどめを刺す役割を担当していた。

中々出番がなくジリジリしていると、

「そっちいったぞう!」
と声がかかる。

声のする方を振り向いてみると猪型の獣がこちらに突進してくるのがわかる。
何本か矢もささっていながらその獰猛な生命力は衰えることを知らずこちらに突っ込んできた。

俺は剣を抜くと、しょっぱなの正面攻撃をかわしつつ横に回り込む。
そこで上段から首に向けて一撃。

したものの、予想以上に厚い毛皮と表皮のせいでうまく切ることができない。

すると、同じく剣隊のダースがやってきて、
「ワイルドボアは突き殺すんだよ!」

と、見事な突きで腹部を貫いていた。

ワイルドボアはしばらく走ったのち、ヨタヨタ走りになり最後にドウッっと倒れこんだ。

うーん、村で何度かコールを使ってホーンテッドで仕留めたことはあったが、実際に自分の力だけでやるとなると難しい。長丁場のハンティングで、3分で倒れるわけにいかないからな。

その後も各地で仕留めたらしい歓声があがる。

よし、俺もひと頑張りするか。

数時間たち、

生徒たちが獲物を持ってベースキャンプの場所へ戻ってきた。
俺も2匹ほどワイルドボアを仕留め、他生徒とともにベースキャンプへと足を向ける。

ダースは5匹も仕留めたようだ。
殊勲賞ものじゃないだろうか。

「よし、いったん休憩とする。みな装備の手入れを怠るな!」
ヘルメス先生が指示を飛ばす。

元ギルドクラスAランカーらしく、指示は迅速で威厳があった。

皆、思い思いに自分の得物を見せ合いつつ談笑していると、

『パリィッ』

というなにかが割れた気配がした。

「何!?」
ヘルメス先生始め担当教師達がざわめく。

「今はまさか・・おい、周辺への警戒を怠るな!」
ブリッツ先生が周囲へ呼びかける。

グルルル・・・

森の方角だ。

ふとみると百匹ほどの小型の人間型の魔物が集まってきている。
手に棍棒らしきものをもち、好戦的に目をぎらつかせている。

「ゴブリンだ!」
誰かが叫ぶ。

「皆、落ち着け。ゴブリン程度、この人数なら問題はない!」
ヘルメス先生が指示を飛ばしていく。

それに従い各弓隊が矢を放ち、魔術部隊が炎弾や雷弾で攻撃していく。

ふと見るとアカネが俺の近くで戦っており、爆炎で一気に数匹も倒していた。

この分なら問題なさそうだな・・

倒し損ねたゴブリンは、剣や槍の餌食となっていく。

何といってもこちらは数が多い。

しかしヘルメス先生は浮かぬ顔で
「おかしい・・ゴブリン程度に破壊される結界ではないのだが・・」
とその口髭をいじりつつひとりごちていた。

確かに、少なくてもギルドクラスB以上の先生方が力を合わせて作り上げたものだ。ゴブリン程度にやぶれる結界では課外授業はできまい。

そうこうしているうちに、あっという間にゴブリンの群れは半分以下まで減少し、倒し切るのは時間の問題かと思われた。

その時、誰かの叫び声が上がった。

「ド・・ドラゴンだぁ!!」
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