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一章
(1)ゴブリンと付呪師
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人は、自分の器以上のものを求めることがある。
その欲望、夢、あるいは自分以外の「何か」になりたいと思うとき、
その野心をかなえるためには、必ず何らかの代償を支払うことになる。
そして、その代償とは時間であり、命であり、あるいは「自分自身」なのだ。
レクセル・バッツは今日も目を覚まして、いつものように、朝食の下準備を済ませたあと、家の裏側に向かった。
馬小屋と見紛うばかりのボロ家。彼はここで妹と二人で住んでいる。庭と呼べるものはなかったが、隣家との間に幾分かのスペースがあった。
彼はそこで木刀を持って素振りの練習を始めた。これは彼にとってのルーティンワークだった。
レクセル・バッツは騎士に憧れていた。
この国では、王族や貴族などの上流階級に生まれてくる子供たちは、物心がつく前に剣を学ぶことを義務づけられている。
それは、国の将来を担う人材を育てるという意味合いもあるし、単純にいざというときに身を守るためでもある。
そうして幼い頃から英才教育を受けてきた者は「上流騎士」と呼ばれ、国の要職に就く。
そして、レクセルは中流階級の生まれであった。
中流階級のものは学院に通い、そこで基礎的な教養を学びながら、同時に剣術や馬術などの騎士として必要な技術を身につけるのだ。
そうして選抜試験で選ばれた一握りが騎士となる。
選ばれなかった者は、学術に秀た者であれば大学に進学したり、就職するか、それでも軍属になりたい者は一般兵となる。
しかし、レクセルの両親は幼い頃死んだ。
ある日、両親の乗った馬車が崖から落ちたのだ。その日以来、彼は幼い妹と自身を養っていくだけで精一杯だった。
自分が学院へ行くお金は出なくなり、レクセルが妹の学院へ行くお金と毎日の衣食住を賄うお金を何とか稼ぐ。
学院で優秀な成績を残して騎士選別試験に合格する、そんな夢は潰えた。
だが、妹のためにも、自分は強くならなければならない。
「兄ちゃん、ご飯できたよー!」
妹の声だ。
彼女はまだ6歳だというのに家事全般をこなしてくれる。
妹が作ってくれたのは、パンとジャガイモのスープだけだったが、それでも十分なご馳走である。
妹の名前はベルディ。栗色の髪をした可愛い女の子だ。
「ありがとうな、ベルディ」
レクセルはベルディの頭を撫でてやった。すると、彼女は嬉しそうにはにかんだ笑みを浮かべる。
二人は朝食を食べ終えると、レクセルは早速仕事に出かけた。
彼が働いている場所はギルドと呼ばれる施設だ。
ここでは、様々な仕事を斡旋してくれる。その内容は草刈りから赤子の御守、雑貨店の仕入れなど様々だ。
魔物退治などの危険な仕事もある。しかし、レクセルはまだ13歳で成人していないため、そういった仕事はできない。
そのため、彼は主に雑用のような仕事をしている。
「おはようございます」
ギルドの受付嬢に声をかける。
「あら、おはよう。今日もよろしくね」
この人はミーナさん。綺麗なお姉さんだ。
年齢は20代前半くらいだろうか? レクセルはこの人に会うことで日頃のストレスが幾分か癒える。
「今日も、薬草採取くらいしか目ぼしいのはないんだけど……」
ミーナは一枚の依頼書を手渡す。
「じゃあそれでお願いします !」
「はい、毎度あり!それじゃあ頑張ってきてね」
依頼内容は街の外れにある森へ行って、薬草を10本ほど摘んでくるというものだった。
この程度の仕事ならば危険は少ないだろう。
レクセルはさっそく出かけることにした。
「お気をつけて」
ギルドを出る際、受付嬢のミーナに見送られる。
「はい、いってきます」
こうして、レクセルの一日が始まった。
街を出てすぐの森は、それほど深くもなく、迷うこともなかった。
レクセルは手慣れた様子で薬草を探していく。
「こんなもんかな」
しばらくしてレクセルの持ってきた籠には薬草が10本ほど貯まっていた。彼はそれを持ち帰って帰ろうとしたその時だった。
「キャァアアー!!」
女性の悲鳴が聞こえた。
レクセルは声の方向へ走った。
そこにはゴブリンがいた。
ゴブリンとは人間に近い姿形をしているが、知能が低く凶暴な性格をしている。
繁殖力が強く、1匹いたら30匹いると思えと言われている。
そして今、目の前にいるのは5匹の群れだった。
5匹の内3体は棍棒を持っており、残り2体は錆びついた剣を持っていた。
一方、襲われている女性は腰が抜けてしまっているのか、地面に座り込んで動けないようだ。
「くそッ!」
レクセルは急いで木刀を引き抜いた。
真剣は携帯していなかった。だが、これでやるしかない。
レクセルは剣術に関して才能がなかった。
レクセルは剣術の授業では最下位で、学院に今も通っていたとしても騎士選別試験の突破など夢のまた夢であった。
だから、せめて自分なりに努力しようと、独学で剣術を学んだのだ。
(やれるだけやってみよう……)
レクセルはゴブリンに向かって突進する。
3体の内の一体がレクセルに気づく。
「ギィイイッ!」
醜悪な顔が獲物を捉えたように歪む。
ゴブリンは持っていた棍棒を振り上げると、レクセルめがけて振り下ろしてきた。
レクセルはそれを横に避ける。
すると、今度は横薙ぎに振ってきた。
レクセルの腹を掠める。
レクセルは腹を擦りながら再び回避行動をとろうとする。
ゴブリンは連続で攻撃してくる。
「ギィアッ!?」
遂にレクセルの身体に直撃した。
レクセルはそのまま吹っ飛ばされて転がった。
「グハッ」
肋骨が折れた。目の前の地面が霞んで見えた。
――俺はここで、死ぬ……のか……?
死を悟るレクセル。そんな時どこからか声がした。
「かっこつけて向かっていった割にはもうやられちゃうの?」
声の主の方に向かって顔を向けると、
セピア色の長い髪をした女性が立っていた。
「弱いなら逃げればよかったのに。命あっての物種でしょ?」
セピア色の髪をした女性は不敵な笑みを浮かべている。
「それとも逃げられない理由があったとか?」
「俺は……騎士を目指しているっ……!!困っている人が居たら……わが身案じて逃げることなんて……できない……!」
「ふ~ん。騎士道のためね。」
ゴブリン達は品定めするようにセピア色の女を見回していた。
「……と、偉そうには言ってみたものの、私もピンチであることには変わりないわね」
「わたし、戦闘力ないもの」
ゴブリンは今にも女に襲い掛からんばかりだった。
「ねぇ、小さな騎士さん。あなたに力を分けてあげる」
「あなたの木刀借りるわね」
セピア色の女はレクセルの木刀を掴むと何やら呪文を唱え始めた。
すると、木刀が赤熱する。
「この木刀持ってみて」
言われるままに這いつくばりながら木刀を掴むレクセル。すると身体に変化が起こった。
折れた骨の痛みが引いていく。
「これは……」
「さぁ、反撃開始といきましょう」
レクセルは立ち上がり木刀を構える。
先ほどまでの絶望感は消えていた。代わりに闘志がみなぎってくる。
「ギィイイッ!!」
ゴブリンは威嚇するような鳴き声を上げる。
そして、一斉にレクセルに飛びかかってきた。
レクセルは冷静に一匹目の攻撃を弾く。
続いて二匹目の攻撃も捌き、三体目にカウンターを入れる。
ゴブリンは悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「すごい!その調子で残りも倒していって」
四匹目が棍棒を振り下ろす。
レクセルは木刀を打ち付ける。
すると、棍棒は横に真っ二つになって落ちた。
愕然とするゴブリン達。
もはやこの小さな男の木刀は木刀とは呼べぬ切れ味を持っていた。
そしてこの身のこなし。素人ではない。
ゴブリンにもそれが分かった。
ゴブリン達は怯んだのち、一目散に逃げていった。
一瞬追うかどうか迷ったが、既にゴブリンの姿はなかった。
「逃しちゃったか。ま、いっか。それより怪我はないですか?」
レクセルは座り込んでいた女性の方を見て声を掛ける。
「ああ、ありがとうございます……!!」
女性は立ち上がってお辞儀をする。
「本当に助かりました……!」
「これで任務完了だね小さな騎士君」
セピア色の女性が言う
「ありがとう。あれは何だったんだ。魔法?」
レクセルはセピア色の女性に聞く。
「付呪さ。君の木刀に付呪をした。」
「私は付呪師なんだよ」
「それにしても木刀に付呪しただけなのに、折れた肋骨が再生するとは。実に興味深い。」
セピア色の女性は興味深げにレクセルを眺めている。
「あ、自己紹介がまだだったね。私の名前はアネモネ」
「君は?」
「俺はレクセル・バッツ」
「レクセルか。いい名前だね」
「レクセル。私の実験材料になってくれないか?」
「え?なんの……」
「もちろん付呪についてだよ」
「研究させてくれ。頼む!」
アネモネと名乗る女は頭を下げてくる。
「ちょっと待ってくれ。急にそんなこと言われても」
「私を助けると思って」
「いや、助けたいのは山々なんだけど……俺には仕事があるから」
「毎月金貨を2ゴールド出そう」
(2ゴールド、それだけあれば日々の生活は安泰だけど)
「俺、金のためだけにギルドで働いてる訳じゃないんです」
「成人したら魔物退治の仕事を本格的に始めて、武術を身につけて、強くなって……」
「やがては騎士に、かい?」
「はい」
「ふぅむ。それならますます私の話に乗るべきだ」
「理由は二つ」
「一つ。君は私と居れば強くなれる」
「二つ。騎士は強いだけじゃなれない。幾ら強くてもギルドのゴロツキ紛いを騎士にする貴族がいるわけがない。もちろん国もな」
「その点私は王宮勤めだ。私の部下になれば国家直属の兵に一気に近づくことになる。その後、やりようによっては騎士になれるやもしれん」
「んな……!」
「どうだい?」
破格の条件だと思った。夢を叶えたいなら一択。しかし――
「やっぱり、俺には無理です」
「どうして」
「俺には妹が居ます。妹を置いてあなたの元では働けない」
「それに、俺なんかよりよっぽど強い人は沢山いる」
「なるほど」
「じゃあ、君が実験に付き合っている間、君の妹の面倒は私のメイドがみよう」
「そして二つ目の懸念事項についても気にする必要はない」
「誰が君だけだと言った?私は私の付呪に付き合えそうな人を片っ端から集めているのだよ」
アネモネは不敵に笑った。
「わかった、俺を連れていって下さい!」
レクセルは覚悟した。
これは付呪師と騎士を目指す少年の物語。
その欲望、夢、あるいは自分以外の「何か」になりたいと思うとき、
その野心をかなえるためには、必ず何らかの代償を支払うことになる。
そして、その代償とは時間であり、命であり、あるいは「自分自身」なのだ。
レクセル・バッツは今日も目を覚まして、いつものように、朝食の下準備を済ませたあと、家の裏側に向かった。
馬小屋と見紛うばかりのボロ家。彼はここで妹と二人で住んでいる。庭と呼べるものはなかったが、隣家との間に幾分かのスペースがあった。
彼はそこで木刀を持って素振りの練習を始めた。これは彼にとってのルーティンワークだった。
レクセル・バッツは騎士に憧れていた。
この国では、王族や貴族などの上流階級に生まれてくる子供たちは、物心がつく前に剣を学ぶことを義務づけられている。
それは、国の将来を担う人材を育てるという意味合いもあるし、単純にいざというときに身を守るためでもある。
そうして幼い頃から英才教育を受けてきた者は「上流騎士」と呼ばれ、国の要職に就く。
そして、レクセルは中流階級の生まれであった。
中流階級のものは学院に通い、そこで基礎的な教養を学びながら、同時に剣術や馬術などの騎士として必要な技術を身につけるのだ。
そうして選抜試験で選ばれた一握りが騎士となる。
選ばれなかった者は、学術に秀た者であれば大学に進学したり、就職するか、それでも軍属になりたい者は一般兵となる。
しかし、レクセルの両親は幼い頃死んだ。
ある日、両親の乗った馬車が崖から落ちたのだ。その日以来、彼は幼い妹と自身を養っていくだけで精一杯だった。
自分が学院へ行くお金は出なくなり、レクセルが妹の学院へ行くお金と毎日の衣食住を賄うお金を何とか稼ぐ。
学院で優秀な成績を残して騎士選別試験に合格する、そんな夢は潰えた。
だが、妹のためにも、自分は強くならなければならない。
「兄ちゃん、ご飯できたよー!」
妹の声だ。
彼女はまだ6歳だというのに家事全般をこなしてくれる。
妹が作ってくれたのは、パンとジャガイモのスープだけだったが、それでも十分なご馳走である。
妹の名前はベルディ。栗色の髪をした可愛い女の子だ。
「ありがとうな、ベルディ」
レクセルはベルディの頭を撫でてやった。すると、彼女は嬉しそうにはにかんだ笑みを浮かべる。
二人は朝食を食べ終えると、レクセルは早速仕事に出かけた。
彼が働いている場所はギルドと呼ばれる施設だ。
ここでは、様々な仕事を斡旋してくれる。その内容は草刈りから赤子の御守、雑貨店の仕入れなど様々だ。
魔物退治などの危険な仕事もある。しかし、レクセルはまだ13歳で成人していないため、そういった仕事はできない。
そのため、彼は主に雑用のような仕事をしている。
「おはようございます」
ギルドの受付嬢に声をかける。
「あら、おはよう。今日もよろしくね」
この人はミーナさん。綺麗なお姉さんだ。
年齢は20代前半くらいだろうか? レクセルはこの人に会うことで日頃のストレスが幾分か癒える。
「今日も、薬草採取くらいしか目ぼしいのはないんだけど……」
ミーナは一枚の依頼書を手渡す。
「じゃあそれでお願いします !」
「はい、毎度あり!それじゃあ頑張ってきてね」
依頼内容は街の外れにある森へ行って、薬草を10本ほど摘んでくるというものだった。
この程度の仕事ならば危険は少ないだろう。
レクセルはさっそく出かけることにした。
「お気をつけて」
ギルドを出る際、受付嬢のミーナに見送られる。
「はい、いってきます」
こうして、レクセルの一日が始まった。
街を出てすぐの森は、それほど深くもなく、迷うこともなかった。
レクセルは手慣れた様子で薬草を探していく。
「こんなもんかな」
しばらくしてレクセルの持ってきた籠には薬草が10本ほど貯まっていた。彼はそれを持ち帰って帰ろうとしたその時だった。
「キャァアアー!!」
女性の悲鳴が聞こえた。
レクセルは声の方向へ走った。
そこにはゴブリンがいた。
ゴブリンとは人間に近い姿形をしているが、知能が低く凶暴な性格をしている。
繁殖力が強く、1匹いたら30匹いると思えと言われている。
そして今、目の前にいるのは5匹の群れだった。
5匹の内3体は棍棒を持っており、残り2体は錆びついた剣を持っていた。
一方、襲われている女性は腰が抜けてしまっているのか、地面に座り込んで動けないようだ。
「くそッ!」
レクセルは急いで木刀を引き抜いた。
真剣は携帯していなかった。だが、これでやるしかない。
レクセルは剣術に関して才能がなかった。
レクセルは剣術の授業では最下位で、学院に今も通っていたとしても騎士選別試験の突破など夢のまた夢であった。
だから、せめて自分なりに努力しようと、独学で剣術を学んだのだ。
(やれるだけやってみよう……)
レクセルはゴブリンに向かって突進する。
3体の内の一体がレクセルに気づく。
「ギィイイッ!」
醜悪な顔が獲物を捉えたように歪む。
ゴブリンは持っていた棍棒を振り上げると、レクセルめがけて振り下ろしてきた。
レクセルはそれを横に避ける。
すると、今度は横薙ぎに振ってきた。
レクセルの腹を掠める。
レクセルは腹を擦りながら再び回避行動をとろうとする。
ゴブリンは連続で攻撃してくる。
「ギィアッ!?」
遂にレクセルの身体に直撃した。
レクセルはそのまま吹っ飛ばされて転がった。
「グハッ」
肋骨が折れた。目の前の地面が霞んで見えた。
――俺はここで、死ぬ……のか……?
死を悟るレクセル。そんな時どこからか声がした。
「かっこつけて向かっていった割にはもうやられちゃうの?」
声の主の方に向かって顔を向けると、
セピア色の長い髪をした女性が立っていた。
「弱いなら逃げればよかったのに。命あっての物種でしょ?」
セピア色の髪をした女性は不敵な笑みを浮かべている。
「それとも逃げられない理由があったとか?」
「俺は……騎士を目指しているっ……!!困っている人が居たら……わが身案じて逃げることなんて……できない……!」
「ふ~ん。騎士道のためね。」
ゴブリン達は品定めするようにセピア色の女を見回していた。
「……と、偉そうには言ってみたものの、私もピンチであることには変わりないわね」
「わたし、戦闘力ないもの」
ゴブリンは今にも女に襲い掛からんばかりだった。
「ねぇ、小さな騎士さん。あなたに力を分けてあげる」
「あなたの木刀借りるわね」
セピア色の女はレクセルの木刀を掴むと何やら呪文を唱え始めた。
すると、木刀が赤熱する。
「この木刀持ってみて」
言われるままに這いつくばりながら木刀を掴むレクセル。すると身体に変化が起こった。
折れた骨の痛みが引いていく。
「これは……」
「さぁ、反撃開始といきましょう」
レクセルは立ち上がり木刀を構える。
先ほどまでの絶望感は消えていた。代わりに闘志がみなぎってくる。
「ギィイイッ!!」
ゴブリンは威嚇するような鳴き声を上げる。
そして、一斉にレクセルに飛びかかってきた。
レクセルは冷静に一匹目の攻撃を弾く。
続いて二匹目の攻撃も捌き、三体目にカウンターを入れる。
ゴブリンは悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「すごい!その調子で残りも倒していって」
四匹目が棍棒を振り下ろす。
レクセルは木刀を打ち付ける。
すると、棍棒は横に真っ二つになって落ちた。
愕然とするゴブリン達。
もはやこの小さな男の木刀は木刀とは呼べぬ切れ味を持っていた。
そしてこの身のこなし。素人ではない。
ゴブリンにもそれが分かった。
ゴブリン達は怯んだのち、一目散に逃げていった。
一瞬追うかどうか迷ったが、既にゴブリンの姿はなかった。
「逃しちゃったか。ま、いっか。それより怪我はないですか?」
レクセルは座り込んでいた女性の方を見て声を掛ける。
「ああ、ありがとうございます……!!」
女性は立ち上がってお辞儀をする。
「本当に助かりました……!」
「これで任務完了だね小さな騎士君」
セピア色の女性が言う
「ありがとう。あれは何だったんだ。魔法?」
レクセルはセピア色の女性に聞く。
「付呪さ。君の木刀に付呪をした。」
「私は付呪師なんだよ」
「それにしても木刀に付呪しただけなのに、折れた肋骨が再生するとは。実に興味深い。」
セピア色の女性は興味深げにレクセルを眺めている。
「あ、自己紹介がまだだったね。私の名前はアネモネ」
「君は?」
「俺はレクセル・バッツ」
「レクセルか。いい名前だね」
「レクセル。私の実験材料になってくれないか?」
「え?なんの……」
「もちろん付呪についてだよ」
「研究させてくれ。頼む!」
アネモネと名乗る女は頭を下げてくる。
「ちょっと待ってくれ。急にそんなこと言われても」
「私を助けると思って」
「いや、助けたいのは山々なんだけど……俺には仕事があるから」
「毎月金貨を2ゴールド出そう」
(2ゴールド、それだけあれば日々の生活は安泰だけど)
「俺、金のためだけにギルドで働いてる訳じゃないんです」
「成人したら魔物退治の仕事を本格的に始めて、武術を身につけて、強くなって……」
「やがては騎士に、かい?」
「はい」
「ふぅむ。それならますます私の話に乗るべきだ」
「理由は二つ」
「一つ。君は私と居れば強くなれる」
「二つ。騎士は強いだけじゃなれない。幾ら強くてもギルドのゴロツキ紛いを騎士にする貴族がいるわけがない。もちろん国もな」
「その点私は王宮勤めだ。私の部下になれば国家直属の兵に一気に近づくことになる。その後、やりようによっては騎士になれるやもしれん」
「んな……!」
「どうだい?」
破格の条件だと思った。夢を叶えたいなら一択。しかし――
「やっぱり、俺には無理です」
「どうして」
「俺には妹が居ます。妹を置いてあなたの元では働けない」
「それに、俺なんかよりよっぽど強い人は沢山いる」
「なるほど」
「じゃあ、君が実験に付き合っている間、君の妹の面倒は私のメイドがみよう」
「そして二つ目の懸念事項についても気にする必要はない」
「誰が君だけだと言った?私は私の付呪に付き合えそうな人を片っ端から集めているのだよ」
アネモネは不敵に笑った。
「わかった、俺を連れていって下さい!」
レクセルは覚悟した。
これは付呪師と騎士を目指す少年の物語。
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