騎士になりたい貧乏庶民の少年が、付呪された鎧で成り上がる話

杏たくのしん

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二章

(14)青い薔薇

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 その時、ルドウィックの剣が弾かれ宙を舞った。
「なんだと!?」
 驚愕するルドウィック。
「隙だらけだ」
 レクセルはルドウィックの剣を弾き飛ばした後、すぐにルドウィックに接近し、剣を突き出した。
 しかし、剣がルドウィックの鎧を貫かんとするところでレクセルは膝をつく。
「くっ……」
「お互い限界のようだな」
 レクセルは鎧装着のタイムリミットが近づいていた。
「なぁ。貴様。お互い最後の戦士になったところで、休戦といかないか?」
 ルドウィックは言った。
「俺は上の階へルーラ姫を通す。あとはマリアンヌとルーラ姫で決着をつけてもらう。どうだ?」
「いや、俺はお前を殺……」
 殺すと言おうとしたレクセルだったがある思いが去来する。

 いつか、マリアンヌとロゼッタが対峙できるまでロゼッタを守ると誓った約束。

「いいだろう」
 レクセルは静かに言った。

「そういうことだ。ルーラ姫。上へ上がっていいぞ」
 ルドウィックは言った。

 ジャックの亡骸を抱いていたロゼッタだったが、ジャックをそっと床に降ろすとキッと前を向いた。
「あなたは必ずレクセルが倒します」

 ロゼッタは強いまなざしをしていた。そして螺旋階段を昇った。

 階段を上がるロゼッタの頭に再びある言葉が響いた。

――この先に行ってはいけない。

――この扉を開いてはいけない。

 ロゼッタは頭を振り払い、最上階への扉を開いた。

 最上階の部屋は吹き抜けになっており、外の風景が見えた。
 バルコニーへの扉があいており、バルコニーには机と椅子があった。
 椅子には、オレンジ色の髪を後ろに2つ束ねた、少し老齢の女性が座っていた。
 その女性はロゼッタを見つけるとニコやかに喋り始めた。
「あラ、ロゼッタ。久シぶりね」
「あなたが私をその名で呼ばないで!!」
 ロゼッタは怒鳴った。
「今日はこんナにイイ天気だかラ、一緒にお茶しましょウ」
 ロゼッタの怒鳴り声を無視してマリアンヌはニコやかな表情を崩さず言った。
「ふざけないで!!」
「あなたもう終わりよ!じきにサンリエルは奪還されるわ!早くお父様を解放して頂戴!」

「今日はこんナにイイ天気だかラ、一緒にお茶しましょウ」
 マリアンヌは壊れたように同じ言葉を繰り返す。

「あなた……なんなの……!?」
 次第にロゼッタは恐怖心が芽生えていった。

「すまないねぇ。そいつはもう使用期限が近いんだ」
 男の声がした。
「誰!?」
 ロゼッタは声のした方を見た。
 そこには白髪の、柔和な顔をした50代くらいの男が立っていた。
「誰とはご挨拶だねぇ。僕だよ。忘れちゃったの?ルドウィックだよ」


「ルドウィック……?」
ロゼッタは困惑した顔を浮かべる。
「あぁ、下の階に居る奴の名もルドウィックさ。でも本物のルドウィックは僕だよ」

「今日はこんナにイイ天気だかラ、一緒にお茶しましょウ」
 相変わらずマリアンヌは同じ言葉を繰り返す。

「こいつは持った方だったな。8代目だからな」
 ルドウィックと名乗る男はマリアンヌを小突く。するとマリアンヌは倒れた。
 彼女は動かなくなった。
 彼女のポケットから黄色い薔薇の入った結晶が零れ落ちた。

「一体何なの……?あなたは誰なの……!?」

「君の本当のお父さんだよ」

「!?」

「仕方ない。全部忘れちゃったみたいだから思い出させてあげるよ」
 ルドウィックと名乗る男は語り始めた。

「エルドヴィエでは人形の動力源として魔力の宿った薔薇を使っていた。
しかし、その薔薇はどうやって手に入るのか人形師達は知らなかった。
自然に手に入るのか。誰かが付呪するのか。
中でも青い薔薇を動力源として作った人形は人間と見分けがつかないほど精巧にできると言われていた。

僕、ルドウィックはエルドヴィエ王宮の人形師であり占い師であった。
その頃王宮では世継ぎ問題に悩んでいた。
マリアンヌは子供ができないのは自分のせいだと思い込み、僕にアルフォンスとの間の子供の人形を作成するように依頼した。
最初は赤子の人形をつくり、期限が切れたら、少し大きい新しいのに取り替えて……と、アルフォンスにバレないようにね。
しかし子供の人形が愛せないマリアンヌは僕の前で自殺した。
僕は責任を感じたよ。僕の失敗作のせいでクレームの自殺をしたんだからね。
僕はお詫びとしてマリアンヌの人形を作ってあげた。以降のマリアンヌは全部僕が作った人形さ。

しかし本当に子供を作れなかった原因は王の方にあった。
アルフォンスは人形の子供が自分の子供じゃないと感づいた。人形になったマリアンヌもよそよそしく感じられ、マリアンヌが浮気したのだと疑った。
自分の子供を欲しいと願うアルフォンスは占い師でもある僕に相談した。
僕は親切心で本心から『青い薔薇』を見つければ自分の本当の子供を授かるとアドバイスしてあげた。
アルフォンスは血眼になって青い薔薇を部下たちに探させた。そして見つけた。
それはラニカにある小さな花屋にあった。そこの一人娘ロゼッタが持っていた。
アルフォンスはロゼッタと恋に落ちるフリをして青い薔薇を入手した。
そうして青い薔薇が僕に渡った。

僕は王の不妊症のことをロゼッタにうちあけ、僕が作る最高の人形をこどもとして授かったように演じろと言った。
アルフォンスとの愛が本物だと信じていたロゼッタは僕の言ったことに従った。
僕は同様に赤子の人形を作ってロゼッタに渡し、ルーラだと名付けさせ、最高の人形ができるまで時間を稼いだ。
そして最高の人形は完成し、わずかの間、ロゼッタとアルフォンスの実の子として迎えられた。
誰も気づかなかった。であるなんて。

しかしロゼッタはある日、王に真実を告げた。真実を告げても家族の愛は揺るがないと信じて。
だが王は怒りロゼッタを殺し、狂った。
僕は思った。またやってしまったのかと。
そこで事態の収拾のためマリアンヌがクーデターを企てたということにした。
マリアンヌが王位継承のために夫を幽閉し、不倫相手との子供を女王に着かせようとした、という事にした。

不倫相手は僭越ながら僕が務めさせてもらうことにした。
でも僕はヒョロヒョロの人形師。
それに見合うような経歴と、身代わりをでっち上げることにした。
その人形が下の階にいるルドウィックさ。」

「さぁ全部思い出したかい?何か質問は?」

「か、母さんとの小さい頃の思い出は……?」

「僕が入力した疑似体験さ」

「……」
 ロゼッタは狂いださないのが不思議だったが、なぜか驚くほど冷静でいられた。本当は全部知っていた気がする。
「……私はただの人形……」

「そうだ。僕の作った人形だ。君の役目は終わった。あとはあの青い薔薇を返すんだ」

「……ふふ。あの青い薔薇はジャックとレクセルにあげてしまったわ。何で私は動いているのかしら」

「何?今持ってないのかい?青い薔薇は二つに割れても効力を失うことはない。だが近くにないと君は5分~1時間で意識を失い、動かなくなるよ」

 ロゼッタは目の前がだんだんと暗くなっていることに気づいていなかった。

 フラりと膝をつき倒れる。

 その時、人影が飛び出してきた。
 レクセルだった。
 レクセルはそっと胸ポケットにジャックが持っていた青い薔薇の結晶を入れてあげた。
「レクセルさん……もういいんです。私、嘘ついていました」
「関係ない」
「私、お姫様っていったのも嘘」
「関係ない!」
「人間っていうのも嘘なんです!」
「関係ない!!」
「ロゼッタ。貴方は俺の主だ!!!」
 ロゼッタははらりはらりと涙を流した。

「う~ん仕方ないな。君たち二人にも死んでもらうか」
「来い!!切り裂き人形!!」
 黒い甲冑を着たルドウィック人形が現れた。
「お呼びですかマスター」
「こいつらを殺せ。」
「御意」
 ルドウィック人形は魔剣を構えた。
 レクセルも剣を構える。
 レクセルは一瞬にして人形の懐に入り込み、胴体を切りつける。
「効かんな」
 ルドウィック人形は言った。
 しかしレクセルの狙いは別にあった。
 胴体から黒い薔薇の入った結晶をかすめ取っていたのだ。
 この切り裂き人形にもあったのだ。動力源が。
「や、やめろ……!!」
 二人のルドウィックが同時に叫んだ。
 レクセルは鋼のブーツで黒い薔薇の入った結晶を踏み砕いた。
 ルドウィック人形は途端に崩れ落ち動かなくなる。
「貴様!盗み聞きしていたな!僕たちの話を!」
「何にせよこれで終わりだ」
 レクセルは剣を人形師ルドウィックに向けた。
「本当は八つ裂きにしてやりたいところだが、貴様にはロゼッタの今後のために必要そうだからな」
 剣をしまうレクセル。
 ホッとした顔をするルドウィック。
 その面をレクセルは思いっきり殴りつける。
 吹っ飛ぶルドウィック。

「さて、これで終わりましたよ。主よ」
 レクセルは言った。
「私は何もないのよ」
 彼女は火の手の上がる街を見ながら言った。
「帰る場所も。名前も。ジャックも」
「使命があります」
 レクセルは静かに言った。彼女はハッとしたような顔をした。
「この国を導くという使命が」
「少なくとも貴方は私にとってはエルドヴィエの次期女王、ロゼッタだ」
 ロゼッタは涙を流しながら微笑んだ。
「えぇ。そうね」
 
「貴方は私の素敵な騎士様」


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