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01 目覚めとおバカ王子
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私、アイズ・ローズレイはつい先程、前世の記憶を思い出してしまった。
それは五分前の出来事。
「はぁ、次はアリサをどう痛めつけようかしら、あいつの婚約者のルークが毎回じゃましてくるのよね...まったく....」
「痛ったぁ.....」
そう。この瞬間である。
アリサの愚痴を言っていたら注意散漫になってしまい誤って本棚の角に足の小指をぶつけてしまった。
この瞬間、私は前世の記憶を取り戻し、ここが乙女ゲームの中の世界であり、そして私、アイズは死亡フラグだらけの悪役令嬢であることを思い出した。
そして、今まさに、アリサを痛めつけたことに腹を立て、第三王子のルークが部屋に斬り込んでくる場面のまっしぐらである。
まずい、非常にまずい。このままでは後数分もせずにルークが斬り込んでくる。うーんと...私は前世の記憶を無理矢理引き出す。あ...そうだ。ルークの乙女ゲームの設定はそう、『バカ』である。容姿端麗でスポーツ万能なルーク。だがバカである。これしか突破口が見当たらなかった。
なにかいいものはないかしら...
その時、ふと兄レオンの部屋が私の暴走によって工事中であり、彼の制服が私の部屋にあることを思い出した。もうこれしかない、私は兄の制服を身に纏い、長い髪の毛もバッサリ切り落とした。
「アイズ、お友達が来ているから部屋にいれるわよ」
いよいよ来たか、一つ目の死亡フラグ。
ドアが開いた。やはり相手はルークだった。
「おい、アイズどこだ?ってお前だれだ?ここはアイズ・ローズレイっていうくそ女の部屋だが、どうして男がいるんだ?」
私は、彼に近寄り手を握る。
「生き別れのお兄様。僕はレイズです。どうかお助けください。アイズ・ローズレイに脅されていたのです」
私は渾身の演技をする。さぁ、どうだ?
「なんだと、お前が俺の弟だと?」
心臓の鼓動が速くなる。ここに運命が掛かっている。
「なんとなく俺も弟がいると思っていたところなんだ。やはりいたんだな、よし俺が匿ってやろう」
バカでよかったぁあ!え、でも今“匿う”って言わなかった?もしかして...
「おい、我が弟よ。屋敷に帰るぞ」
あっ...私は彼に引きずられながら屋敷に連れて行かれた。どうしてこうなったぁ?あ、自分のせいか。
◆
遂にルークの屋敷に到着していまった。
まずい、彼らの両親にはなんと言ったらよいだろうか?脳内をフル回転させて考える。ダメだ全く良い言い訳が思いつかない。ここで私の正体がバレ、切り捨てられるという新たな死亡フラグが立ってしまった。
「お~い父上。俺の実の弟を連れてきたぞ。」
まずい。現エリザリア王国国王である。
「誰だそやつ?私はそんな男は知らんぞ」
あ、終わった。どうしよう。ここで逃げるか?オロオロしている私に気づいたのかルークはこちらを見る。ニャ~と下手な笑みを返す。
「なに言ってんだ。親父は実の息子のことも忘れてしまうほど、耄碌してんのか?」驚いたことにルークはそう返すと私を連れて自室に向かった。なんかもう、申し訳なさしかない。
「お前には俺の部屋の隣の空き部屋をやる親父が悪かったな」と彼は笑う。
「ありがとう。兄さん」
はぁっここまでバカだと可哀想に見えてくるが今はそれに縋るしかない。どうにか隙をついて逃げよう。
そのときノックの音が聞こえた。
「おい、レイズ。お前の安全を確保するためにお前の部屋のドアには俺しか開けられない鍵をつけておいたから安心しろよ」
「う、うんありがとうお兄様。で、でも...」
「それはよかった。じゃあな」
やりやがったあのバカ王子。しかし、これでドアからの逃走ルートは無くなってしまった。試しに窓の外を見てみる。ここは5階。当然のことながらここから飛び降りたらその時点で即死である。これって詰んでない?
私は、男装を解く。この格好は胸が締め付けられてあまり長い間は厳しい。でもそんなことを気にしている暇はない。はぁ。もっと幼い時に記憶を取り戻せばよかった。しかし、いまさら悔やんでも仕方ないので対策を考える。恐らくルークは私の言うことはなんでも聞くから案外対策立てやすいかもしれない。私はしばらく頭を悩ませた。
考えに考えた結果。対策はこうなった。
まず、生き別れの弟であるため、兄や父に合うのが恥ずかしいため、ご飯は部屋の前まで持ってきて欲しいとお願いすること。追い出されるとまずいので父には私はもういないと言うこと。この二つがクリアできれば大分楽になる。さて、と深呼吸をする。
「お兄様。少し話があるのですが」
壁越しに尋ねる。
「あぁ。なんだ?」
私はさっき考えたことを彼に告げた。返事はもちろんOKだった。ルークには悪いが今は彼を利用させてもらう。これでしばらくはルークの家族との接触は無くなるだろう。ひとまず安心だ。
今日を生き残った私、よくやった。明日も生き抜いてやる。そう心に決め、私はベッドの中で目を閉じた。
それは五分前の出来事。
「はぁ、次はアリサをどう痛めつけようかしら、あいつの婚約者のルークが毎回じゃましてくるのよね...まったく....」
「痛ったぁ.....」
そう。この瞬間である。
アリサの愚痴を言っていたら注意散漫になってしまい誤って本棚の角に足の小指をぶつけてしまった。
この瞬間、私は前世の記憶を取り戻し、ここが乙女ゲームの中の世界であり、そして私、アイズは死亡フラグだらけの悪役令嬢であることを思い出した。
そして、今まさに、アリサを痛めつけたことに腹を立て、第三王子のルークが部屋に斬り込んでくる場面のまっしぐらである。
まずい、非常にまずい。このままでは後数分もせずにルークが斬り込んでくる。うーんと...私は前世の記憶を無理矢理引き出す。あ...そうだ。ルークの乙女ゲームの設定はそう、『バカ』である。容姿端麗でスポーツ万能なルーク。だがバカである。これしか突破口が見当たらなかった。
なにかいいものはないかしら...
その時、ふと兄レオンの部屋が私の暴走によって工事中であり、彼の制服が私の部屋にあることを思い出した。もうこれしかない、私は兄の制服を身に纏い、長い髪の毛もバッサリ切り落とした。
「アイズ、お友達が来ているから部屋にいれるわよ」
いよいよ来たか、一つ目の死亡フラグ。
ドアが開いた。やはり相手はルークだった。
「おい、アイズどこだ?ってお前だれだ?ここはアイズ・ローズレイっていうくそ女の部屋だが、どうして男がいるんだ?」
私は、彼に近寄り手を握る。
「生き別れのお兄様。僕はレイズです。どうかお助けください。アイズ・ローズレイに脅されていたのです」
私は渾身の演技をする。さぁ、どうだ?
「なんだと、お前が俺の弟だと?」
心臓の鼓動が速くなる。ここに運命が掛かっている。
「なんとなく俺も弟がいると思っていたところなんだ。やはりいたんだな、よし俺が匿ってやろう」
バカでよかったぁあ!え、でも今“匿う”って言わなかった?もしかして...
「おい、我が弟よ。屋敷に帰るぞ」
あっ...私は彼に引きずられながら屋敷に連れて行かれた。どうしてこうなったぁ?あ、自分のせいか。
◆
遂にルークの屋敷に到着していまった。
まずい、彼らの両親にはなんと言ったらよいだろうか?脳内をフル回転させて考える。ダメだ全く良い言い訳が思いつかない。ここで私の正体がバレ、切り捨てられるという新たな死亡フラグが立ってしまった。
「お~い父上。俺の実の弟を連れてきたぞ。」
まずい。現エリザリア王国国王である。
「誰だそやつ?私はそんな男は知らんぞ」
あ、終わった。どうしよう。ここで逃げるか?オロオロしている私に気づいたのかルークはこちらを見る。ニャ~と下手な笑みを返す。
「なに言ってんだ。親父は実の息子のことも忘れてしまうほど、耄碌してんのか?」驚いたことにルークはそう返すと私を連れて自室に向かった。なんかもう、申し訳なさしかない。
「お前には俺の部屋の隣の空き部屋をやる親父が悪かったな」と彼は笑う。
「ありがとう。兄さん」
はぁっここまでバカだと可哀想に見えてくるが今はそれに縋るしかない。どうにか隙をついて逃げよう。
そのときノックの音が聞こえた。
「おい、レイズ。お前の安全を確保するためにお前の部屋のドアには俺しか開けられない鍵をつけておいたから安心しろよ」
「う、うんありがとうお兄様。で、でも...」
「それはよかった。じゃあな」
やりやがったあのバカ王子。しかし、これでドアからの逃走ルートは無くなってしまった。試しに窓の外を見てみる。ここは5階。当然のことながらここから飛び降りたらその時点で即死である。これって詰んでない?
私は、男装を解く。この格好は胸が締め付けられてあまり長い間は厳しい。でもそんなことを気にしている暇はない。はぁ。もっと幼い時に記憶を取り戻せばよかった。しかし、いまさら悔やんでも仕方ないので対策を考える。恐らくルークは私の言うことはなんでも聞くから案外対策立てやすいかもしれない。私はしばらく頭を悩ませた。
考えに考えた結果。対策はこうなった。
まず、生き別れの弟であるため、兄や父に合うのが恥ずかしいため、ご飯は部屋の前まで持ってきて欲しいとお願いすること。追い出されるとまずいので父には私はもういないと言うこと。この二つがクリアできれば大分楽になる。さて、と深呼吸をする。
「お兄様。少し話があるのですが」
壁越しに尋ねる。
「あぁ。なんだ?」
私はさっき考えたことを彼に告げた。返事はもちろんOKだった。ルークには悪いが今は彼を利用させてもらう。これでしばらくはルークの家族との接触は無くなるだろう。ひとまず安心だ。
今日を生き残った私、よくやった。明日も生き抜いてやる。そう心に決め、私はベッドの中で目を閉じた。
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