勘違いから始まりましたが、最強辺境伯様に溺愛されてます

かほなみり

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第二章 王都

この世界の私と

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 空がピンク色に染まる時間。

 ピンク色の空にはオレンジ色に染まる雲が浮かび、振り向けば藍色が迫っている。
 その空には三つの月が白く浮かぶ。

 朝から侍女さんたちに屋敷で念入りに磨かれ、場所を迎賓館に移して最後の仕上げ。お屋敷の侍女さんたちに加え、アンナさんも準備のために態々ついて来てくれた。
 アンナさんは私の髪をセットし終えると、満足そうに鏡越しに頷いた。


 今回、レオニダスと一緒に選んだドレスは白。

 ギュピールレースというレースを全身に使った、深いVネックにノースリーブ。背中は腰までVラインで開いていて、コルセットなんて使えない。
 お義母様はリバーレースというレースを使いたかったらしいんだけど、それは結婚式用にもう準備を進めているんだとか。

 ドレスにはウエストマークに細いベルベットのリボンを使い、リボン結びにして後ろに長くたらしている。
 スカート部分はギャザーも何もなく、自然に広がるAライン。後ろに広がるトレーンの部分に素晴らしい刺繍が施されている。
 アクセサリーは控えめにして、ウエストと共布のリボンをチョーカーのように使い、イエローゴールドのパーツで以前レオニダスから贈ってもらった雫型のサファイアを付けた。
 ピアスはオーバル型のサファイアをイエローゴールドの爪で留めたスタッドピアス。
 髪型はセンターで分けて前髪を両サイドにピッタリと纏め、後ろはふんわりと巻いてもらった。
 イエローゴールドの細い繊細なヘッドアクセに小さなサファイアを付けて、額の真ん中辺りにくるように付ける。
 勿論手首には、エメラルドの輝き。
 私はふと、鏡の中にいる自分の姿をじっと見つめた。


 私は今日、正式にレオニダスの婚約者として人々の前に出る。
 この世界で私は、優しい人たちに出会って優しさに包まれて、自分の居場所を見つけた。
 きっと色んなことがあるし言われるし、嫌なものも嫌なことも目にするし耳にするんだろうけど。
 でも一人じゃないから、大丈夫。
 そう思える程に、私はここが好きで、みんなが好き。

 ――ね、お父さん、お母さん。
 私本当に、ここに来て良かったって思ってるんだよ。


 迎賓館の控え室で支度を終えるとお義母様が最終チェックをしに部屋へ来た。

「悔しいけれど、ザイラスブルク公は見る目があるわね」

 満足げな表情をしたお義母様は私を見つめて微笑んだ。

「とっても綺麗よ、ナガセ」

 鏡越しに優しい表情を見せるお義母様はそっと私の肩に手を乗せた。

「きっと、貴女のご両親も喜んで見てくださっているわ」

 私はその言葉に胸が震えた。

 ――ああ、私以外にも、私の両親に思いを寄せてくれる人がいた。

「貴女は我が家の自慢の娘だけれど、貴女のご両親の自慢の娘さんでもあるのよ。貴女が素晴らしい女性なのは、貴女のご両親のお陰なのよ」

 お義母様はそっと頭を撫でてくれる。
 その優しい手つきと優しい眼差しに、グッと熱いものが込み上げて来た。

「あらあら、ダメよ、綺麗にしてもらったばかりなんだから」

 お義母様は優しく笑って抱き締めてくれた。


 部屋にノックの音が響き、アンナさんが扉を開けた。

 真っ黒な辺境伯軍の制服に身を包んだレオニダスが髪を後ろにフワッと流し、優しい眼差しで立っている。

「レオニダスさま」

 レオニダスは扉から真っ直ぐ私の元へ来て、そっと頬にキスをくれる。

「カレン、とても美しいな」

 蕩けるような眼差しで頬をすっと優しく撫でられ、私は赤くなるのを抑えられない。
 本当に! レオニダスのこういう甘いの慣れない! 恥ずかしい!

 周囲の人たちはいつの間にか席を外し、今は私たち二人だけ。

「カレン、本当に……このまま連れて帰りたいな」

 レオニダスは私を優しく腕の中に閉じ込めて耳元で甘く囁く。
 耳が熱い。恥ずかしくて俯いた。

「レオニダス、制服素敵です」

 顔も素敵ですとは恥ずかしくて言えない。

「カレンが真っ白なドレスだから引き立てるのに丁度いいかと思ってな。それに……」

 レオニダスの指がつうっと私の腰を直になぞった。

「!」

 ビクッと身体を揺らし、レオニダスに密着してしまった。背中から腰にするりと掌を滑り込ませてその熱を分けられる。
 耳元で、意地悪な声音でレオニダスが囁いた。

「カレンは制服姿が好きだと思ったが」

 バレてたー! バレてました!! 恥ずかしい!
 だってだって、登城の時本当にカッコよかったから! 鼻息荒く着替えを手伝いましたけど! だって凄い色気なんだもの!

 あわあわと赤くなって身体を捩る私を、宥めるように撫でながらクツクツと笑うレオニダス。

「……カレン」

 ちゅ、と音を立てて耳にキスをする。

「愛してる、カレン……本当に、自分でも信じられないくらいカレンが愛おしい。カレンのことだけで頭がいっぱいだ」

 ちゅ、ちゅっと頬や額、頭に沢山キスが降ってくる。
 そのくすぐったさとレオニダスの思いに触れて、私の中から溢れる愛しさ。
 この想いをどうやって伝えたらいいんだろう。

「レオニダス……」

 きゅっとレオニダスの胸元を掴む。
 顔を寄せるとレオニダスの鼓動と熱と、大好きな匂い。

「レオニダス、私も……私も貴方を愛してます」

 ビクリとレオニダスの身体が固まった。
 私から、レオニダスに愛を伝えるのは初めてで。

 好きや大好きでは伝わらないこの想いを、本当は愛してるって言葉でも足りないこの想いを、貴方にどう伝えたらいいんだろう。

 顔を上げてレオニダスを見ると、耳を赤くしたレオニダスが泣きそうな顔をして見下ろしている。

 可愛い。
 可愛くて可笑しくて、ふふっと笑ってしまった。
 そっと両手をレオニダスの頬に添えて、背伸びをして触れるだけのキスを贈る。


「レオニダス、私、幸せだよ。ありがとう」


 愛してる、ともう一度囁いて、私の愛しい可愛い人に、優しくキスを贈った。

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