勘違いから始まりましたが、最強辺境伯様に溺愛されてます

かほなみり

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第五章 結婚前夜

寂しさと不安

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 薪のはぜる音に、思わずピクリと身体が揺れた。
 窓の外にはいつの間にか灰色の雲が広がり、ちらちらと雪が舞い始めている。

「――気が散る?」

 耳元で囁く甘さが乗った低い声に、ギュッと目を瞑って小さく首を振る。

「ま、まだ明るいから……、誰か来たら」
「大丈夫だ、誰も来ない」

 耳元で小さく笑って、レオニダスはまた私の身体を弄り始めた。

「……っ、ぁっ」
「声、我慢しないで」

 墓参りを済ませた私たちは、墓地からレオニダスが所有している温泉付きの別荘へ移動した。
 ここは私がデザインをしてレオニダスが出資した建物だ。バルテンシュタッドに宿泊施設付きの温泉、という新しい観光名所を誕生させたきっかけにもなった。
 雪が降る中で温泉に入る素晴らしさを説く私に、理解できないという顔をしていたレオニダスも、その気持ちよさにすっかり夢中になった。
 それからよく二人で泊まりに来ていたのだけれど、来るのはいつ以来だろう。
 到着してすぐ、なだれ込む様に抱き合いながらベッドへ倒れ込んで、お互いを貪るようにキスをした。私の服を脱がせながら身体を弄る彼に、お風呂に入りたいと訴えたけれど、却下。
 すっかり服を脱がされた私だけが、まだ制服姿の彼に背後から抱きしめられている。

「――あっ!」

 脚の間に手を滑り込ませた彼は、敏感な蕾をぐりっと押し込んだ。突然の刺激に大きく身体が揺れて声が上がる。

「ほかのことを考える余裕があるみたいだ」
「ぁっ、や……っ! ダ、ダメ……っ」
「ダメ? こんなに濡れてるのに?」

 ぐちゅぐちゅとわざと音を立てて、レオニダスが私の耳朶を舐めながら秘所を掻き混ぜる。

「はぁ……、かわいいな、ナガセ」
「んっ、んん……っ」
「ここ、気持ちいい?」
 
 長い指で蕾をぬるぬると捏ねられて、その刺激に身体をのけ反らせる私に、彼はたくさんのキスを降らせた。

「あっ、あ、ま、待って、レオ……!」

 身体の中心に熱が集まってくる。
 つま先まで痺れが走り、快感を逃したくてシーツを蹴った。

「イって、ナガセ」
「――あぁっ!」

 背後から囁かれながら蕾を激しく嬲られて、目の前が一瞬で白く飛んだ。

「――、ん……」

 ふっと意識が戻る。
 いつの間にか仰向けで横たわっている私を、レオニダスが見下ろしていた。
 私に跨りながら硬いボタンを外して制服を脱ぎ捨てた彼は、大きな掌で私の腹部をそっと撫でる。熱い掌にびくりと身体を揺らすと、黄金色の目が細められた。

「敏感だな。白くて、滑らかな肌だ」
「い、言わなくて、いい……」
「仕方ない。恥ずかしがるアンタがかわいいから」

 言いながら、囲むように両手を私の顔の横に付いた。
 そして、空気を求めて、はふ、と息を吸う私の唇をぺろりと舐める。

「んう……」
「はぁ……、本当にかわいいな」

 唇の隙間に舌を差し込まれて、あっという間に舌を絡めとられた。震える腕を彼の肩に回して必死にしがみついて、ぬるぬると激しく舌を擦り合わせる。
 その気持ちよさに、もっと、と強請るように舌先を合わせる。
 激しく口付けを交わしながら、掌で胸を持ち上げられて円を描くように捏ねられた。指先で先端をピンと弾かれ、合わせた唇の中で嬌声が上がる。

「柔らかくて、どこもかしこも甘いな、ナガセ」
 
 彼の声にすら反応する私に小さく笑いながら、レオニダスは「かわいい」と繰り返し、甘い刺激を与え続ける。首や肩、鎖骨を舌が這い、ときどき吸い上げられてピリッと痛みが走った。
 分厚い舌は丹念に身体中を舐めて、胸の柔らかな部分に吸い付き、先端を口に含んだ。

「あぁっ!」

 熱い口内に含まれた先端は、彼の舌で激しく弾かれ、唇で扱かれる。もう片方の先端も指で摘ままれて、お腹の奥がもどかしさに震えた。思わず膝を擦り合わせるように合わせる私に気が付いた彼が、ふと動きを止めた。

「――さっきの、嫉妬の話」
「――っ、え?」

 突然甘い責め苦から解放されて、上がる呼吸を整える。大きく息を吸い込む私を至近距離で見つめながら、レオニダスは気まずそうに視線を逸らした。

「未来の俺が、新しい二十歳の記憶に嫉妬するという話だ」

 私の上に覆い被さった彼は、もう一度私へ視線を戻して、小さく息を吐き出した。

「初めて抱くのが、ナガセだということだよ」
「――え?」

 レオニダスの言葉の意味が一瞬分からず、考え込んだ。
 それはつまり。

「――っ、そっ」
「そ?」

 レオニダスは不思議そうに首をかしげた。

(そんなふうに思えなかったんですけど……!?)

 完全に彼に翻弄されている身としては何も言えない。
 そ、そうなの? いやでも、どうしてそんなこと言うのかな!?

「ど、どうして……」
「ナガセしか知らない俺を、未来の俺は嫉妬する。絶対」

 その言葉に耐えられなくて、思わず両手で顔を覆った。
 どういう意味だろう。どういう意味? 分かるけど分からないような!?
 狼狽する私を見下ろして、ぷっとレオニダスが小さく吹き出した。

「なぜナガセが恥ずかしがるんだ」
「わ、分かんない、けど……っ」

 ――私しか知らないレオニダス。
 その響きに、なぜかものすごく恥ずかしくなった。恥ずかしいし、それに、それに……。

「う、れしい、です……」

 そのことがレオニダスを嫉妬させるなんて。
 恥ずかしさと嬉しさと、うまく表現できない気持ちに叫びだしたくなる。
 いつまでも顔を隠す私の手首を掴んだ彼は、シーツに押さえて顔を覗き込んだ。
 見上げたレオニダスの頬も赤い。

「だから。その、不慣れですまない、と思ったんだ」
「そっ、そんなこと……! わ、わた、私もその、不慣れというかあの、レオしか知らない、し……」
(うわわ、恥ずかしい……!)
「――そうか」

 全身が熱い。絶対に真っ赤になっている。
 だって、いつも余裕で私のことを翻弄してばかりのレオニダスから、こんなセリフを聞くなんて思わなかった。
 どうしよう、気持ちが落ち着かない。
 恥ずかしくてうろうろと目を泳がせる私を覗き込みながら、彼はまたふっと笑った。

「なんか……変じゃ、なかったか」
「へ、変なんて、そんなのなにも……っ」
「いやじゃない?」
「まさか!」

 力強く言うのもどうなんだろう。
 でも本当に全然なんともなかったから……ていうより気持ちよかったので……!

「気持ちよかった?」
「……っ!」

 ぎゅうっと目を瞑ってブンブンと首を振る私に、またふっと笑うようにかすかに息がかかる。
 そして、レオニダスが肩に顔を埋めて私をぎゅうっと抱きしめた。

「レ、レオニダス……?」
「――すまん、こんなこと聞くなんて、かっこ悪いな」

 頬に感じる熱さは、彼の耳だ。真っ赤になって熱を持っている。

(なにそれ……かわいい)

 思わず、ぎゅっと彼の背中に手を回して抱きしめる。

「そっ、そんなことない! 私、本当にその、気が付かなかったっていうかあの、えと……き、気持ちよかっ……た……し」

 何言ってるんだろう私!?
 言いながら一人で慌てる私の腕の中で、彼が身体を揺らして笑った。

「そうか」

 そう言って身体を起こし、私の顔を覗き込む。目が合った黄金色の瞳は、ギラギラと強く光っていた。

「――いいか?」

 強く瞳を輝かせて私を覗き込む彼の色気に、身体の中心が切なく疼く。
 この彼を知っている。
 この先にある快感を、与えられる愛情を、私は知っている。
 小さく頷いた私を見て、レオニダスは身体を起こした。ズボンのベルトを外し、自身の昂りを取り出す。弾けるように飛び出たそれは天を向き、別の生き物のように脈打っていた。

(待って本当にもう全然見慣れない……!)

 思わず視線を逸らす私の顎を掴んで、視線を合わせられる。

「やっぱり初心だな?」
「そ、そんな、こと……」
「かわいい」
(やだもう、なんか甘い……!)

 ますます赤くなっているであろう私に、笑いながらいくつもキスを降らせた彼は、私の脚の間に陣取った。
 ふーっと長く息を吐きだして、脚の間に昂りを押し当てる。
 ぐっと押し付けられただけだというのに、その質量と熱さに身体が震えた。
 
「――っ、んう……っ」

 ぐぐっと隘路をこじ開けるように、硬い昂ぶりがゆっくりと体内を満たしていく。
 
(あぁ、私……)

 切なく震える自分の内側に、きゅっと胸が切なくなった。
 ずっと、寂しかった。
 寂しさと不安を埋めたいと思っていた。近くにレオニダスがいるのに、埋められなくて苦しかった。

「ナガセ、大丈夫か」

 掛けられた声に視線を向けて見上げると、心配そうに私を見下ろす黄金色の瞳と目が合った。

「だ、いじょうぶ、だよ」
「苦しくない? アンタは細いから」

 ふるふると首を振る私を見て、レオニダスはほっと息を吐きだす。額に光る彼の汗を見て、きゅんと身体が震えて彼を締め付けた。

「っ! あぁクソ、腰が溶けそうだ」

 はぁっと熱い息を吐きだして、彼は私の腰を掴んだ。
 やがて目を瞑りながらゆっくりと出し入れを始めた彼は、歯を食いしばって耐えるような表情をしている。

(――きっと、我慢してる)

 私が壊れてしまわないように。優しく、様子を見ながら少しずつ進めている。
 けれど、私だってずっと彼が欲しかった。ずっと、この寂しさと不安を埋めてほしいと思っていた。
 手を伸ばして、彼の額を流れる汗をそっと指先で拭う。驚いた瞳が私を見た。

「レオニダス……大丈夫だから……、もっと」

 もっと強く、私を求めてほしい。
 
 そんな私の言葉の意図を正しく汲み取って、彼の昂りがお腹の中でグッと硬さを増したのを感じた。その形がはっきりと分かるほど、私の内側もますますぎゅうっと彼を締め付け、吸い付いた。
 すぐ目の前で、獰猛な獣が狙いを定めるようにギラギラと黄金色の瞳を光らせる。

「――ナガセ」

 そしてズルリと勢いよく腰を引いた彼は、突き上げるようにゴツンッ! と、私の最奥を穿った。
 声にならない声が、押し上げられるように塊になって吐き出される。

「――っ、ナガセっ」

 何度も強く穿たれて、最奥を突き上げられる。昂りの先端が内側をズリズリとこすり、内壁がぎゅうっと彼に吸い付いて絡みついた。
 快感に二人で溺れて、求め合う。
 激しく、強く求められて必死に彼に応えながら、それでもなぜか、心の片隅で小さく何かがチクチクと胸を刺した。

『――カレン』

 私をそう呼ぶあなたに、会いたいと思う。
 今ここにいるレオニダスも、間違いなく彼自身だけれど。

『カレン』

 あなたに会いたい。
 あの日々を共有するあなたに、会いたい。
 激しく突き上げられて私をナガセと呼ぶ声を聞きながら、心は切なく震えていた。
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