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「く、くちづけして、アデル」
「ふふ、喜んで」
アデルはギラギラしていた表情を一瞬和らげて、ふっと笑った。そうして、優しく唇を合わせる。
(まだ私に薬が効いているのなら……、言えないことも言えるかもしれないわ)
いつもは思うだけで、伝えたことのない言葉、私の想い。
「――愛してるわ、アデル」
「!」
唇が離れたほんの一瞬、小さな声で囁いた私の言葉にアデルが身体を硬くした。
「カタリーナ」
「なんでもないわ! そんな顔で見ないでそれじゃなくても恥ずかしいのにていうかやっぱりとっても恥ずかしいしどうしてあなたはいつもこんな恥ずかしいことをさらっといえるのか分からないんだけれど!?」
「カタリーナ……!」
薄暗い部屋でも分かるくらい、顔を赤くしたアデルが、突然私をぎゅうっと抱きしめた。
顔を赤くする彼を見られるなんて、恥ずかしい思いをしたかいがあったかもしれない。私が先に恥ずかしくなるけれど!
「もう言ってくれない?」
「おっ、同じことは言わないわ!」
「ふふっ、そうだね。でも俺はちゃんと聞いたよ」
グリグリと私の肩口に額を擦りつけるアデルは、まるで大きな子ども……、というよりは大型犬のようだ。
顔が見たい。まだ顔は赤いかしら。
「愛してるよ、カタリーナ。そのままのあなたを」
「……っ!」
その言葉に、じわりと視界が滲んだ。
「ほ、本当かしら!」
「疑うの?」
そっと耳元で囁かれて、顔が熱くなる。疑っているわけではないのに、どうしてもこんなことばかり言ってしまう。それでも彼は、私を愛していると言ってくれる。
「――そ、それじゃあ、もう少し私と会う時間を作ってくれる?」
「もちろん」
「ほかの女性から贈り物はもらわないで」
「大丈夫、受け取ってないよ。もらうことになっても、ちゃんと寄付をさせてもらうって伝えてから受け取ってるんだ」
「ほ、本当……?」
「ふふ、本当だよ」
笑いながら顔を上げたアデルは、そっと私の頬を撫でた。
「あとは、なにがある?」
「私を一番大切にして」
「もちろんだよ。もうずっと大切にしてる」
「シワシワのおばあちゃんになっても、毎日くちづけしてちょうだい」
「それは俺がしたいことだね」
「長生きしてね」
「あなたもね、カタリーナ」
「私が先に死んだら」
「俺を呪い殺してくれるのを待つよ」
おかしくて思わず笑い声を上げる私に、アデルはたくさんくちづけを降らせる。
そのくすぐったさに身を捩って逃げようとする私を、彼は逃すまいとさらに強く抱きしめた。
「アデルったら、くすぐったいわ!」
「だってあなたがかわいいから」
「知ってるわ!」
「本当に?」
「だってあなたがいつも言ってくれるもの」
「そうだよ。初めてあなたに想いをちゃんと伝えたときのこと、覚えてる?」
それは、私のどこがいいのか聞いたときのことだ。もちろん覚えている。
「信じてもらえるまでずっと、愛を伝えるからって言っていたわ」
私の言葉に顔を上げた彼は、蕩けるような笑顔を向けた。それだけで、胸がキュンと締め付けられる。
「そうだよ。あなたのかわいさも美しさも、なにものにも形容しがたい魅力を放ってる。だから、そのまま伝えるって決めたんだ。俺の気持ちも」
ふわりと唇が触れる距離でアデルはそっと囁いた。
「好きだよ、カタリーナ。愛してる」
――この人は本当に、私を好きだなと思う。
一番大切にしてくれて、よく見ていてくれる。
(こんなに幸せなことってあるかしら)
「――私も、あなたが一番大切よ、アデル。大切で特別で、――す、すごく好きな人なの」
口にしてみるとやっぱり恥ずかしい。
また目の前で動かなくなった彼の視線から逃げるようにプイッと横を向くと、突然アデルが私の肩を、――噛んだ。
「いっ!? 痛いわ!!」
(噛んだ!?)
どうして!?
「あなたって人は本当に……」
身体を起こした彼は金色の髪をかき上げて、フーッと長く息を吐き出した。
「俺の理性が保つか分からないのに、どうして今日に限って煽るようなことばかり言うんだ」
首筋を流れる彼の汗が、やけに色っぽい。
それになんだか、目が据わっている気がする。
「だっ、だってっ! 私だってあなたのためにできることがしたいわ!」
「そうだね。でも、大切なあなただからこそ無理はさせたくないんだ」
言いながら、グッとあわいに昂ぶりの先端が押し付けられた。身体の奥が、彼を歓迎するようにキュンキュンと痙攣する。
アデルはまるで自分を律するように、あわいから侵入して隘路を押し広げていった。
いつもよりゆっくりと進む彼の昂ぶりを、私の内壁がぎゅうぎゅうと締め付け吸い付く。
「――っ、い、いいの、あなたの好きにして……!」
先ほどまでの苦しい熱とは違う甘い快感が、お腹の奥で燻ぶっている。
彼がほしいと、身体が疼いている。
「――っ、カタリーナ、覚えておいて……」
「え? なにを……」
「閨では不用意な発言はしないほうがいい。あとで後悔するかもしれないから、ね……っ!」
「!!」
ゴツンッ! と強く奥を叩きつけられて、息が止まった。
すぐにずるりと入り口まで腰を引いて、アデルはまた強く奥を叩きつけた。
身体がひどく痙攣して、彼をきつく締め付ける。
「く……っ、はぁっ、カタリーナ、もし辛くなって、それでも俺が止まらなかったら、どこでもいいから思いっきり俺を噛んで……っ」
言いながら、また強く、二度、三度と奥を叩きつけられて返事をする暇がない。
激しく身体を揺さぶられて、果てたかと思うとすぐにまた脚を抱えられて、体位を変えて何度も、何度も。
「カタリーナ……っ!」
遠のく意識の中で彼が私を呼ぶ声を聞きながら、何回彼を噛んだだろう、とぼんやり考えて、私はそのまま意識を手離したのだった。
「ふふ、喜んで」
アデルはギラギラしていた表情を一瞬和らげて、ふっと笑った。そうして、優しく唇を合わせる。
(まだ私に薬が効いているのなら……、言えないことも言えるかもしれないわ)
いつもは思うだけで、伝えたことのない言葉、私の想い。
「――愛してるわ、アデル」
「!」
唇が離れたほんの一瞬、小さな声で囁いた私の言葉にアデルが身体を硬くした。
「カタリーナ」
「なんでもないわ! そんな顔で見ないでそれじゃなくても恥ずかしいのにていうかやっぱりとっても恥ずかしいしどうしてあなたはいつもこんな恥ずかしいことをさらっといえるのか分からないんだけれど!?」
「カタリーナ……!」
薄暗い部屋でも分かるくらい、顔を赤くしたアデルが、突然私をぎゅうっと抱きしめた。
顔を赤くする彼を見られるなんて、恥ずかしい思いをしたかいがあったかもしれない。私が先に恥ずかしくなるけれど!
「もう言ってくれない?」
「おっ、同じことは言わないわ!」
「ふふっ、そうだね。でも俺はちゃんと聞いたよ」
グリグリと私の肩口に額を擦りつけるアデルは、まるで大きな子ども……、というよりは大型犬のようだ。
顔が見たい。まだ顔は赤いかしら。
「愛してるよ、カタリーナ。そのままのあなたを」
「……っ!」
その言葉に、じわりと視界が滲んだ。
「ほ、本当かしら!」
「疑うの?」
そっと耳元で囁かれて、顔が熱くなる。疑っているわけではないのに、どうしてもこんなことばかり言ってしまう。それでも彼は、私を愛していると言ってくれる。
「――そ、それじゃあ、もう少し私と会う時間を作ってくれる?」
「もちろん」
「ほかの女性から贈り物はもらわないで」
「大丈夫、受け取ってないよ。もらうことになっても、ちゃんと寄付をさせてもらうって伝えてから受け取ってるんだ」
「ほ、本当……?」
「ふふ、本当だよ」
笑いながら顔を上げたアデルは、そっと私の頬を撫でた。
「あとは、なにがある?」
「私を一番大切にして」
「もちろんだよ。もうずっと大切にしてる」
「シワシワのおばあちゃんになっても、毎日くちづけしてちょうだい」
「それは俺がしたいことだね」
「長生きしてね」
「あなたもね、カタリーナ」
「私が先に死んだら」
「俺を呪い殺してくれるのを待つよ」
おかしくて思わず笑い声を上げる私に、アデルはたくさんくちづけを降らせる。
そのくすぐったさに身を捩って逃げようとする私を、彼は逃すまいとさらに強く抱きしめた。
「アデルったら、くすぐったいわ!」
「だってあなたがかわいいから」
「知ってるわ!」
「本当に?」
「だってあなたがいつも言ってくれるもの」
「そうだよ。初めてあなたに想いをちゃんと伝えたときのこと、覚えてる?」
それは、私のどこがいいのか聞いたときのことだ。もちろん覚えている。
「信じてもらえるまでずっと、愛を伝えるからって言っていたわ」
私の言葉に顔を上げた彼は、蕩けるような笑顔を向けた。それだけで、胸がキュンと締め付けられる。
「そうだよ。あなたのかわいさも美しさも、なにものにも形容しがたい魅力を放ってる。だから、そのまま伝えるって決めたんだ。俺の気持ちも」
ふわりと唇が触れる距離でアデルはそっと囁いた。
「好きだよ、カタリーナ。愛してる」
――この人は本当に、私を好きだなと思う。
一番大切にしてくれて、よく見ていてくれる。
(こんなに幸せなことってあるかしら)
「――私も、あなたが一番大切よ、アデル。大切で特別で、――す、すごく好きな人なの」
口にしてみるとやっぱり恥ずかしい。
また目の前で動かなくなった彼の視線から逃げるようにプイッと横を向くと、突然アデルが私の肩を、――噛んだ。
「いっ!? 痛いわ!!」
(噛んだ!?)
どうして!?
「あなたって人は本当に……」
身体を起こした彼は金色の髪をかき上げて、フーッと長く息を吐き出した。
「俺の理性が保つか分からないのに、どうして今日に限って煽るようなことばかり言うんだ」
首筋を流れる彼の汗が、やけに色っぽい。
それになんだか、目が据わっている気がする。
「だっ、だってっ! 私だってあなたのためにできることがしたいわ!」
「そうだね。でも、大切なあなただからこそ無理はさせたくないんだ」
言いながら、グッとあわいに昂ぶりの先端が押し付けられた。身体の奥が、彼を歓迎するようにキュンキュンと痙攣する。
アデルはまるで自分を律するように、あわいから侵入して隘路を押し広げていった。
いつもよりゆっくりと進む彼の昂ぶりを、私の内壁がぎゅうぎゅうと締め付け吸い付く。
「――っ、い、いいの、あなたの好きにして……!」
先ほどまでの苦しい熱とは違う甘い快感が、お腹の奥で燻ぶっている。
彼がほしいと、身体が疼いている。
「――っ、カタリーナ、覚えておいて……」
「え? なにを……」
「閨では不用意な発言はしないほうがいい。あとで後悔するかもしれないから、ね……っ!」
「!!」
ゴツンッ! と強く奥を叩きつけられて、息が止まった。
すぐにずるりと入り口まで腰を引いて、アデルはまた強く奥を叩きつけた。
身体がひどく痙攣して、彼をきつく締め付ける。
「く……っ、はぁっ、カタリーナ、もし辛くなって、それでも俺が止まらなかったら、どこでもいいから思いっきり俺を噛んで……っ」
言いながら、また強く、二度、三度と奥を叩きつけられて返事をする暇がない。
激しく身体を揺さぶられて、果てたかと思うとすぐにまた脚を抱えられて、体位を変えて何度も、何度も。
「カタリーナ……っ!」
遠のく意識の中で彼が私を呼ぶ声を聞きながら、何回彼を噛んだだろう、とぼんやり考えて、私はそのまま意識を手離したのだった。
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