【番外編完結】わんこ系年下騎士に懐かれたけど実家の愛犬に似ていて困る

かほなみり

文字の大きさ
25 / 36

五日目 夜の訪問者2

しおりを挟む
 部屋に着くとすぐ、突然マリウスが私の前に跪いた。ふわりと床に広がるマントの美しさに思わず見惚れていると、マリウスは手を胸に当て私を見上げた。

「マリウス?」
「アメリア、僕は貴女との将来を真剣に考えています」
「え?」
「僕は、貴女を好きだと言う気持ちを今だけのものだと思っていません」

 マリウスはそう言うと、私のスカートの裾を持ち上げ口付けを落とした。
 簡素な部屋着が安っぽく見え恥ずかしくなるほど、その姿の神々しさに顔が火を吹くように熱くなった。

「マリウス、やめて、私にそんな価値はないわ」
「あります。貴女は僕にとって唯一だから」
(どうしよう、マリウスがとんでもなく甘いわ!)
「貴女があの夜空のような美しいドレスで会場に現れてからずっと、僕は貴女に囚われたままだ」
 
 立ち上がったマリウスに腰を引き寄せられる。密着した身体から、ふわりと森のような香りと熱が漂い、私の思考を絡めとる。

「……もの好きだわ」
「そんなことはありません。貴女に他の誰かが声を掛けないか、気が気じゃなかった」
「貴方こそ、ご令嬢たちに人気があるでしょう」
「妬いてます?」
「なっ……」

 私の顔を見下ろして、ニヤリと口端を意地悪に上げる。

「アメリアが妬いてくれるなら、悪くないですね」

 下ろしている髪を手に取り、口元に運ぶ。伏せたその瞳の長い睫毛を見つめていると、視線を上げたマリウスと至近距離で目が合った。
 瞳の奥で何かが燃えている気がして、それが何かを知りたくて見つめていると、湖のような瞳が視界いっぱいに広がる。

「……ん」

 優しく合わされた唇はふわりと互いの唇の柔らかさを確認するように、触れては離れ、また触れる。

「……アメリア」

 ああ、こうして時々名前を呼ばれるのが、私は本当に好きだと思う。
 いつからそんな風に思うようになったのか、彼が発する声、その心地いい発音に、私はいつの間にか囚われていた。

「……時々、王都に来るわね」

 マリウスの胸に手を当てながら、唇を触れさせながら合間にそう呟くと、ピタリとマリウスが動きを止めた。

「し、仕事で、こちらに来ないといけないことが増えるし」
「……に会いに?」

 マリウスの掌が私の頬を撫で、その気持ちよさにそっと瞳を閉じると、また柔らかく唇に触れられる。
 熱い吐息が唇に触れ、彼が我慢しているのだと思うとまた愛しさが込み上げる。

「そうよ。仕事がなくても、時間を見て会いに来るわ」
「貴女が僕のことでそう思ってくれるだけで、この上なく幸せです」
「ま……」

 優しく甘やかだった口付けは、噛み付くような口付けに変わり、必死にその首にしがみつく。
 舌を絡め取られ吸い上げられて、その気持ちよさに力が抜けるのをマリウスの逞しい腕に支えられた。
 私の舌を吸い上げていたマリウスがちゅぽっと音を立てて離れると、くったりと彼の肩に顔を埋めた。
 はあはあと息を整えている間にも、マリウスは頬や額、こめかみ、耳にと、いくつもの口付けを降らせる。

「アメリア、僕はちゃんと貴女と繋がっていたい。そのために、使えるものは使うことに決めたんです」
「……?」
「貴女は貴女らしく、自分の道を進んでください。僕はその隣で、僕のすべきことをするから」
「マリウス……」

 この先どうなるかなんて分からない。
 けれど、今こうして互いを求め好きだと伝え合い、離れても会う約束をする。
 離れてしまうと相手を求める気持ちや不安が強くなるだろうけれど、今はこれでいい。
 好きだという気持ちに、従えばいい。

「……マリウス、もっとして」
 
 顔を引き寄せてそう囁けば、マリウスは私を抱き上げ、強く唇を合わせた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

周囲からはぐうたら聖女と呼ばれていますがなぜか専属護衛騎士が溺愛してきます

鳥花風星
恋愛
聖女の力を酷使しすぎるせいで会議に寝坊でいつも遅れてしまう聖女エリシアは、貴族たちの間から「ぐうたら聖女」と呼ばれていた。 そんなエリシアを毎朝護衛騎士のゼインは優しく、だが微妙な距離感で起こしてくれる。今までは護衛騎士として適切な距離を保ってくれていたのに、なぜか最近やたらと距離が近く、まるでエリシアをからかっているかのようなゼインに、エリシアの心は揺れ動いて仕方がない。 そんなある日、エリシアはゼインに縁談が来ていること、ゼインが頑なにそれを拒否していることを知る。貴族たちに、ゼインが縁談を断るのは聖女の護衛騎士をしているからだと言われ、ゼインを解放してやれと言われてしまう。 ゼインに幸せになってほしいと願うエリシアは、ゼインを護衛騎士から解任しようとするが……。 「俺を手放そうとするなんて二度と思わせませんよ」 聖女への思いが激重すぎる護衛騎士と、そんな護衛騎士を本当はずっと好きだった聖女の、じれじれ両片思いのラブストーリー。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

こんにちは、最強騎士にお持ち帰りされたダメエルフです~もう逃げられません~

西野和歌
恋愛
おちこぼれエルフのシャーリーは、居場所を求めて人の国にて冒険者として活躍する事を夢見ていた。 だが、魔法も使えず戦闘ランクも最低のお荷物エルフは、すぐにパーティーを解雇される日々。 そして、また新たに解雇され一人になったシャーリーが、宿の食堂でやけ酒をしていると、近づく美貌の男がいた。 誰もが見惚れるその男の名はウェダー。 軽い調子でシャーリーを慰めるついでに酒を追加し、そのまま自分のベッドにお持ち帰りした。 初めてを奪われたエルフは、ひたすらハイスペックエリートの騎士に執着されるうちに、事件に巻き込まれてしまう。 これは、天然ドジな自尊心の低いシャーリーと、自らに流れる獣の血を憎みつつ、番のシャーリーを溺愛するウェダーの物語です。 (長文です20万文字近くありますが、完結しています) ※成人シーンには☆を入れています。投稿は毎日予定です。※他サイトにも掲載しています。

処理中です...