【番外編完結】わんこ系年下騎士に懐かれたけど実家の愛犬に似ていて困る

かほなみり

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番外編:眠れる騎士

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「結局のところ、貴方はちゃんと眠ったの?」

 あの後、アメリアを屋敷へ帰した僕は交代していた分の勤務を終え、屋敷へ戻り家族に改めて頭を下げた。
 大切にしたい女性が出来たこと、その女性の人生に寄り添いたいこと。
 完全に恋愛脳である両親は僕の初恋(と言われて恥ずかしかったが)を喜び、翌日には彼女が領地へ帰ると聞くと、すぐに馬車や護衛の手配をした。
 兄たちも両親同様手放しで喜び、僕の多少、いやかなり強引な頼みごとについて面白おかしく母に話し、声を上げて笑っていた。
 ちなみに、今回の異動で領地に派遣されていた騎士は王都に戻ることになり、予定よりかなり早い帰りを家族が喜んでいると聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。

「眠りましたよ。心配してくれるんですか」
「当たり前よ! 貴方、自分がどんな顔してるのか分かってないわ」
「どんな顔ですか?」
「目の下のクマが王都で別れた時より酷いわよ!」
 
 アメリアを領地へ送り出した僕は、すぐに人事通達を受け引継ぎに取り掛かった。合間に領主である子爵へ早馬を出し引っ越しの手はずを整え、必要最低限の荷物を送る。
 子爵は喜んで空いている屋敷を手配してくれたのだが、まさかアメリアが気に入っていた屋敷だとは思わなかった。

 通常よりも短い日数で引継ぎを行い、馬で単身王都を出た。昼夜問わず走り続け、途中で馬を乗り換えて、早く会いたい一心で駆け続けた。
 眠る暇などない。一歩でも先へ、先へ。

 会いたい。早く会いたい。

 領地に着くと、先に届いていた僕の荷物が屋敷に運ばれているのを見たアメリアが、僕を探しに来たのを運よく見つけることが出来た。
 川べりで座る彼女の後ろ姿を見て、僕は少年のように心が躍り、それまでの疲労など感じられないほど身体が軽くなった。

 会いたかった。会いたかった。

 同じようにアメリアに会いたかったと言われ、彼女から口付けを落とされたその瞬間を、僕は一生忘れないだろう。


 一通り荷物を運び入れ、中を見たいと言うアメリアを連れて屋敷に入る。僕たちの脇をすり抜け、尻尾を振ってマーロウが奥へ駆けて行った。
 アメリアは外から見えるアーチ窓やバルコニーの手摺を気に入っていたらしく、屋敷中を楽しそうに歩き、僕は黙って彼女の後をついて回る。

「この部屋には飾り棚を置きたいわね。あ、見て、凄く素敵なマントルピースだわ! ここに似合う絵や花瓶を探したいわね」
「絵は今度また王都へ行った時に探してみましょうか」
「素敵! 画廊巡りをしたいわね」

 アメリアは足取り軽く室内を見て回る。壁紙の張替えや、新しいカーテンなど、次々とやりたいことが溢れてくる。その生き生きとした姿を見て、僕も新しい暮らしがとても楽しみになってくる。
 アメリアと二人で、新しい生活、人生を送る。
 
「まあ! 見てちょうだいマリウス、中庭パティオがあるわ!」
「本当だ、珍しいですね」

 他国の様式ではよく見られる、建物にぐるりと囲まれた中庭パティオは完全に外からの視界を遮断していた。
 中庭に出て上を見上げると、四角く切り取られた青空にぽっかりと浮かぶ白い雲。前の住人が残していったのだろうか、庭には一本の木が植えられ、涼しげな影を落としていた。

「ここにイスとテーブルを置きましょう。時々お茶をするのも良さそうだわ」
「気に入りました?」
「ええ、とっても!」
「では、僕と一緒に暮らしてくれる?」

 そう言うと、アメリアは目を丸くし、そしてすぐに真っ赤に頬を染めた。
 ああ、かわいいな。
 無意識にずっと、二人で暮らす前提で話していたことに気が付いていなかったんだな。

「わ、私……っ」
「アメリアのご両親には、求婚することを承諾をいただきました」
「えっ!? し、知ってる……」

 知ってるのか。
 正直に話し赤くなり慌てる様子もかわいい。

 中庭の芝の上に跪き、アメリアの手を取る。
 見上げれば静かに風に揺れ木漏れ日を降り注ぐ枝、ゆったりと流れる雲が見える、二人しかいない空間。
 困ったように眉を下げるアメリアの頬は、ほんのり赤く染まっている。

「アメリア・バーセル嬢。私、マリウス・ハインリヒ・フォン・ビューロウ=カイネルは命を懸けて貴女を護る盾となり、そして貴女に齎された災いを打ち破る剣となることを誓います」
「……それは、騎士の誓い?」
「そうです。そして……僕は生涯、貴女の傍で貴女を護り、慈しみ労わり、支えとなることを誓います。どうか僕を、貴女の伴侶として生涯隣に立ち続けることをお許しください」

 アメリアはぎゅっと目を瞑ると、膝を着き僕の前に跪いた。

「あ、アメリア?」

 立ち膝で視線を合わせ、アメリアは真剣なまなざしで僕の瞳を見つめ、僕の掌を包み込んだ。
 
「マリウス、約束して。命なんて懸けなくていいわ。貴方はずっと私の傍で、ずっと私の傍にいると約束してほしいの」
「アメリア」
「命を懸けるなんて、死ぬなんて許さない。私を一人にしないと誓って。どんなに辛くても絶対に私から離れないと誓って」
「……はい、誓います」
「約束よ」
「はい。貴女と永遠に共にあります」
 
 アメリアはふふっと困ったように眉尻を下げたまま笑うと、僕の髪を優しく梳く。
 白く細い指がそっと触れるだけで、胸の奥がくすぐったくなる。

「貴方の求婚を受け入れるわ、マリウス」
「……本当に?」
「ええ。貴方とここで暮らしたいわ。二人でゆっくり過ごし……」
「やった!」
「きゃあ!?」

 アメリアの腰を抱き寄せ立ち上がり、その胸に顔を埋めた。突然のことにアメリアがぎゅうっと僕の首にしがみ付く。

「マリウス!」
「嬉しい……! 嬉しいですアメリア!」

 抱き上げたアメリアの身体をきつく抱き締め、その香りをいっぱいに吸い込んだ。
 僕の好きな甘く、それでいてさわやかな森の香り。

「好きですアメリア。これからもずっと」
「私も好きよ、マリウス」

 見上げると陽の光を受け逆光に輝くアメリアの笑顔。自然と柔らかく口付けが降ってくる。

「早くアメリアの屋敷に挨拶へ行かないと」
「そう言えば、私の両親はマリウスが今日一緒に来るものと思ってめかし込んでいたわ」
「それは、期待を裏切れませんね」
「ちょっと変わってる家族だけど驚かないでね」
「大丈夫です、うちも相当変わってますから」
「そうなの?」

 中庭から室内に入るとマーロウが嬉しそうに尻尾を振って近付いてきた。

「マーロウ、ここはあなたのお家になるのよ」

 嬉しそうにマーロウの頭を撫でるアメリアを見ていると、無意識に欠伸が出た。

「眠い?」
「大丈夫です、いや、少しだけ……」
「少し休みましょう?」
「アメリアも一緒なら」
「分かったわ。一緒に少し休みましょう」
「頭、撫でてくれますか?」
「ふふっ、なあにそれ! いいわ、貴方が眠るまで撫でてあげる」
「眠ってからいなくなるのはやめて下さい」
「じゃあ、私も一緒に少し横になるわ」
「約束ですよ」
「分かった。約束する」

 アメリアはクスクスと笑いながら僕の手を取り絡める。
 玄関の吹き抜けから日差しが降り注ぎ、まるで祝福してくれているかのような青い空が見える。

 手を繋ぎ、二人で二階への階段を上る。
 きっとこれからこの家で、新しい僕たちの人生が始まるんだ。
 僕はそれが、何よりうれしい。
 貴女の傍にいられることが、僕はどんなことよりもこの世で一番、嬉しいことなんだ。

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感想 2

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みんなの感想(2件)

芹香
2024.11.04 芹香

今、ランキングにあがっている作品を拝読して、面白かったので 遡って作品を拝読させていただいてます。

ヒーローの、ワンコみたいに可愛い部分と 大人な腹黒部分が混じり合ったりするところや、ヒロインの可愛くておおらかで でも仕事に真剣な処が素敵でした。

田舎の男爵令嬢と言っても、ファッションをお仕事にしてるから着てるドレスは素敵で、凛としてカッコいいというところがまた素敵です。オドオドしたり、年齢を気にして卑屈にもならずに自然体で目を引く素敵な女性だったんですね。

彼女が初めてだと喜んでましたが、彼の方はそうではなかったみたいで…(笑)

意外と遊んでたタイプなのか、皆で娼館行ってたの?とちょっとモヤりましたが、ヒーロー君頑張ったのでこだわらない事にしましたww

優良物件を探す 貴族の年頃の女性に辟易してたヒーローが、これだ!と思ったら爆発的な行動を見せるのが楽しかったですし、追いかけっこの場面も楽しかったです。

面白い物語を有難うございました。

2024.11.26 かほなみり

芹香さま
お読みいただきありがとうございます!✨
若くても責任のある仕事に就いているマリウスは意外としたたかで物事をしっかり考えている大人の男性ですが、ヒロインの前ではそれが崩れてしまう、そんな魅力的な女性を書きたいと思っていました。
ですので、そんなアメリアを素敵と言っていただけて嬉しいです!
追いかけっこの場面も楽しんで書いたので嬉しいです。ありがとうございます。
ご感想をありがとうございました🍀✨
返信が遅くなり、申し訳ありませんでした💦

解除
pinkmoon
2023.12.26 pinkmoon

ランキングで拝見して一気読みしてしまいました✨ なので、続きが早く読みたくてうずうずしています☺️
ところで、パンケーキのお店でマリウスが侯爵家の三男ということが判明したはずですが、舞踏会ではなぜか伯爵子息になっています😵
どちらかに統一される方が良いかと存じます🥺

更新、引き続き楽しみにお待ちしております😃

2023.12.26 かほなみり

pinkmoonさま
お読みいただきありがとうございます!
そして、ご親切に教えていただきありがとうございます!大変失礼しました!😣
マリウスは伯爵家三男です!
この後も誤字などに気を取られることなく、楽しんでいただけるよう気を付けます!💦

解除

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