異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

文字の大きさ
12 / 90

第12話 ちくせう貴族って奴は・・・砂糖が簡単に買えるのかよ。

しおりを挟む
シュンベルグに大きな水門が有るのは自然の川が町中を流れている為だ。
洪水が起きない様に堤は高く堅固である。
その堤が正門の出口と入り口に成っており、城壁の内と外には橋が架かっている。
そして川の上には巨大な水門が有り支柱の間には厚い木の門が四つ有るのだが、人や馬車が通る堤の門より遥かに大きい。
両脇の二つの門は開いていて船が行き交うが、真ん中の二つは大概閉まっているそうだ。
ただ水中まで門は無いので時折潜って侵入する輩がいるらしい。
だが夜間は水中には網が張られていて、死ぬ者がいるとか。
昼も真ん中の門二つの下には網が有るし、両脇の門には衛士がいるので侵入は出来ない。


このストナ川には沢山の魚の他、エビ・カニも多く昆虫も多い。
ミミズ・ヒルその他の捕食哺乳類に蛇も沢山棲んでいる。
したがって鳥も集まる。

そんな中人気の無いススリン(鰻)は数が増えて魔物化するものまで現れた。
そこで間引きしたので新たな調理法を模索していたのだ。



「長いがこれが今回の依頼の目的だな」
とファンコット・ラズベール公爵様は説明なされた。
「確かこの川の河口付近は湿地帯でしたね」
私がファンコット様にそう尋ねたのには訳が有る。
「ああ、かなりの面積が有るな。だから昔は湿地帯の外側に堤を造るのに苦労した様だ。まあそのおかげで洪水から民を守れて良しなのだ。だがその湿地帯がどうかしたのか?」
「そこでこの穀物採れますよね」
「・・・マイス(米)か。確か飼料として出回っているが、一部の人も食べているな。でもモシャモシャ・ガスガスして美味しく無かったと記憶している」
私はインスタントで出す時の音を出来るだけ押さえて発動した。
ポン。
「わっ!、うっウ○コ」
「違います!、全然匂いが違うでしょ」
「そっそう言えば・・・これは香辛料なのか、だからこんな色なのか」
「そうです。れっきとした食べ物ですよ・・・ウ○コじゃありません」
「うむむ・・・はて?この下の白い粒々はなんじゃ」
「これは実はマイス(米)をもっと精米したものです。精米具合を上げると美味しく成ります。お食べに成りますか?」
そう言った瞬間に側に控えていたメイドがいきなりとんで来た。
「だっ旦那様私が毒味を致します」
そして皿のカレーライスを匙で掬って食べた。

「・・・ハッシィ大丈夫か?」
「辛いです」
ファンコット様は椅子から立ち上がり彼女の背中を抱える様にして卓上のコップに有った水を飲ませた。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。ですが・・・これ、とっても美味しいです。辛いけど」

ああそうだった公爵って事は王族なんだ。
そりゃいきなり変なもの食わせたらヤバイよね。
でも・・・でもこの二人リア充かよ。
もう離れても良かろうに、全く。
・・・羨ましい。

「ハッ!、すっすいません。差し出がましい事を致しました」
「いや、いきなり食べさせて様とした私が悪かったのです」
「あっ、すまない。見た事も無い食べ物だったから。彼女は私のその、毒味役でも有るんだ。本当はもうそんな事させたく無いんだがな」
「・・・お羨ましい」
「・・・実はウェッド殿に彼女の養女を依頼している。そのなんだ」
「はく・・・子爵家の御令嬢として妻に御迎えに成ると言う事ですね」
「あはは・・・まあな」


気さくな方で良かった。
マイスの精米もお願いした。
そしてマイスが炊き上がる頃合いに調理した鰻を出そうと思い蒲焼きを作っていた。
いたのだが。
「もう少しタレに甘さが有った方が良く無いか」
「あの~砂糖は高いので庶民には」
「確かにな、でも此処では良いだろう」
・・・こいつタレに惜し気もなく砂糖をぶち込みゃ~がった。
気さくな方撤回だよ!。


その晩の試食会は絶賛の嵐だった。
ちくせう、砂糖は偉大だ。
庶民にはこれより甘さの足りないのが出回るんだけどな。
タレの作り方は教えたし、いっか。


翌日私はジュンベルグを後にした。
中睦まじい御二人に見送られて。

でも昨夜の事は知ってるぞ。

「あっ!、お止め下さい。未だ早うございます。ウェッド様の養女として輿入れするまで、身籠っては大変に御座います」
「すっすまぬ。気ばかり焦って。早くお前と夫婦に成りたい」
「お気持ちはわかります。私の初めてはファンコット様に捧げると決めておりますゆえ、どうかその時まで我慢なさって下さいまし」
「わっわかった明日からは一人で夜は着替える。自分の気持ちを抑える為にもな」
「申し訳御座いません」
「謝る事は無い。私の修行が足りんのだ」


全く壁越しに聞いてた私が赤面したわ。
本当に羨ましい、ちくせう。
もうすぐ十三の私には早い。
今は色気より食い気の歳。

・・・知ってるよ!、私に色気が無いくらい。


帰りは街道を歩いて帰ると決めた。

・・・やっぱり。
体調がおかしい。
だから街道を通ってるけど宿が有る所まで行けそうも無い。

私はヨロヨロッと街道脇の広場に。
「インスタント・・・?」
「えっとインスタント・・・牽引車?、で良いかな」
ボンッ。
「荷台・・・インスタント・インスタント。はあはあ馬車とは違うね。何だろう?、まっいっか」

その夜私は簡易移動式荷台の中で寝た。

朝方に成っても熱は引かなかった。
何人か声を掛けてくれたけど朦朧として良く分からない。
昼を過ぎてやや楽に成った。
キィはずっと側に居てくれて、おでこに濡れタオルを置いてくれていたので、何故か安心して寝ていられた。
「ねえインスタントで熱冷まし出したら」
突然キィがボソッと呟く。
熱冷まし・・・頓服かな。
トンプクをインスタント・インスタント。目の前に粉の入った紙包みが出た。
上半身を起こして水とコップをインスタント。
これは最早一回で完璧に成っている。
粉薬を飲んで寝ていると段々熱も下がりかなり楽に成った。


暫くして近くの村から2頭の馬と2人の男女がやって来た。
「あなた大丈夫?」
「大丈夫です。明日になれば歩いて帰れます」
「はっ歩いて?」
男性の方が怪訝な顔をしている。
「この荷台どうするんだ」
「あっ・・・」
「私達近くの村の者なんだけど良かったらこれ、馬で曳いて行くよ。その為に馬で来たからね」


私は親切なご夫婦に荷台を曳いて貰い村まで行った。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...