異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第25話 銛と弩。

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「それは何だ?」
「座椅子です」
「凄いフカフカだな」
「座椅子に柔らかいクッションを合わせていますから。・・・欲しいですか?」
「帰りに荷物に成りそうだな」
「私のアイテム袋に帰りはいれますよ」
「それもイン・・・」
「はいインスタントです。イシタントじゃ無いです」
「お前バチが当たるぞ」
「あはは大丈夫です」
バチーン!。
「った!、あたた」
コロコロコロ。
どこらか飛んできた小太鼓のばちが転がる。
「・・・どうせなら2本出せよ」
『ご期待に答えよう』
ボスッと、クッションに飛んできた。
「いえ、良いですもう」

「何やってんだレイナ?」
「「「・・・?」」」
「なっなんでも無いです」
私は慌て小太鼓のばちを拾う。


今私達は馬車に乗ってオンスの町に向かっている。
ゴブリン討伐の人は3日前に出たので、この馬車の隊列はオンスの先の漁村カリューラに行く。
オンスには一泊する予定だ。

「ゴドルフさん達は何かオーガ対策は有るんですか」
「基本レイナがギルドで売ってる目潰し弾に槍だな」
「矢は」
「至近距離で大弓なら食い込むが、大弓を使う奴はうちにはいない。だからミスリル槍一択だな」
確かに5人とも槍を持っている。
ただ普通の槍では無い。
槍は普通刃渡り20センチもあれば良い。刃物部分が大きいと重た過ぎるからね。
だが彼等の槍は刃渡り40は有る。
しかも長槍で2メートル近い。
オーガは力は有るが動きが大きくオークより遅い。
この槍の方が得策なのだろう。
蜻蛉切りかよ。
「何だ蜻蛉切りって」
「・・・聞こえました」
「お前は時々独り言が大きいよな」
「ただ・・・カツって人の武器で良く切れる槍です」
「「「カツ!」」」
「・・・次の休憩所で出しましょうか?」
「「「「ぜひカツ丼で」」」」
いやタダカツだから。

蜻蛉切り 今日は何処まで 行くのやら

・・・違うか。


やはり今年は魔物が多い。
二日目の街道でオークに襲われた。
余程飢えていたのか3匹で襲うと言うアホさ加減だ。
この隊列に上位冒険者が何人居ると思ってんだ。
瞬殺されたよ。
「レイナここで燻製出来るか」
「うん出来るよ」
私は解体も干し肉も燻製肉もインスタントで出来る様に成っていた。
アルフレッド子爵様にお前のスキルはおそらく希少な簡易創造魔法に、付与魔法付きの複合魔法だと言われたので、異空間の倉庫をインスタント5回掛けで出してアイテム袋にしまって有る。その倉庫を出して中にオーク1体を入れた。
このオークは私達が狩ったもの。
その倉庫の中で解体と燻製のインスタントを5回掛けした。
「何でもありかよ~」
「いやいや、注文したのゴドルフさんでしょ」
「そりゃそうだけどよぉ~。ありがとな、いくらだ」
「只で良いです。私も貰うので」
「本当に助かる。ありがとう」
「どういたしまして」
他の馬車の人達は突然小屋と言うか倉庫が出てきてびっくりはしていたが、燻製作り迄は解らない。
皆オークの解体に一生懸命だし。


なんやかんやで7日の間にオーク3回にウルフ2回、牛の魔物化したものに1回襲われた。
本当に魔物で溢れて大変だ今年は。
でも牛は内心嬉しかった。

オンスの町に着いたと時、森の各地で煙が上がっていた。
どうやらゴブリン討伐が終わったらしい。
元々弱い妖精から生まれた魔物だ、ランクが低いとは言え冒険者に囲まれたら3日も持たなかったのだろう。
悪ささえしなければだが、飢えには勝てない。人間だってそうだ。
私は人間側だからこれには何も言えない。
ただ森に向かって手を合わせた。
黙祷。

「かっ甘薯だ!」
「女は好きだよなこれ」
「「「悪かったわね」」」
「「「あっいや別に」」」
私はオンスで甘薯を一杯買った。

「インスタント!」
「おっお嬢ちゃん今何やった!」
「芋飴作ったの」
「えっ、錬金術師?」
「違うよ行程が面倒だからはしょっただけよ」
「・・・それ作り方教えて貰うとか駄目かな」
「良いけど甘薯と麦芽が沢山要るわよ。カスは肥料にでもするといいわ」
湯がいてアクを取って潰してお粥のように煮て濾して甘い液体を煮詰める。
固めたら芋飴の完成だ。
ただ本当に手間が掛かる。
だけどこの世界ならきっとバカ売れする。
甘味は高いからね。
そんな事をして宿に帰って寝たら次の日朝早く出発だ。
やはり野営より宿はいいわ。
お風呂が有るからね。


オンスへの道すがら2/3迄来た所で、キュクロプスに出くわした。
突然のまさかの大物に隊は騒然と成った。
ズシン、ズシン。
速い、速いなんてもんじゃ無い。
私は慌てて牽引台車に取り付けられた大型の弩をアイテム袋から出した。
この弩は牽引車の上で回転し上下に90度動く。
そして銛をインスタントでセットした。
気を落ち着かせる。
外したら終わりだ。
キュクロプスは力に自信が有りすぎた。
ただ猪突猛進で前のめりに迫って来る。
それが良かった。
銛が飛ぶのは30メートルで、当然ながら威力が有るのは半分の距離だろう。
この銛全部鉄だから。
オーガを一発で倒す為の重量の有る武器だ。
前のめりに来るから目を狙った。
「落ち着け、落ち着け私。良し今だ!、発射」
銛はキュクロプスの目から脳を貫通し、頭蓋を割って頭の後ろに先が出た状態だった。
「「「「「「・・・」」」」」」
「キュクロプスを一発で」
「何だあれ」
「鯨撃ちの銛みたいだが」
「あの台車にあの弩スゲー」
「とんでもないの持ってるな」
色々な声がする。

「はあはあ・・・まさかオーガ用の武器がここで役に立つとは」
「これがレイナの言ってた秘密兵器か」
「はいまさかキュクロプスに使うなんて思ってませんでした」
「威力が半端無いな」
「ですが銛が重たいので接近戦用の武器です。射程はおよそ15メートルでしょうか」
「一発勝負だな」
「本来はマキビシや目潰し弾で足止めしてから使うべきかと・・・。相手が力任せで良かったです」
「確かに。まあオーガの方が足は遅いからな。使えるなこれ」

弩付き牽引車とキュクロプスを収納して私達はオンスへ向かった。
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