異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第37話 あれは何なの?。

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「レイナちゃん一つ聞いていい」
「何ですか」
「オーガを倒したあれは何なの?。ちゃんと聞きそびれちゃったから」
「ん~、・・・可視光線。あっ蟹工船じゃ無いですよ」
「かしこうせんもかにこうせんも知らないわよ!」
「・・・可視光線はいわゆる太陽の光等で明るく見えるものですね。その反対に人の目では認識しづらい光も有るんです」
「つまり人には見えない光が有るって事かしら」
「はい。そして波長と言うものが存在します」
「はちょう?」
「海の波みたいな物と考えて下さい」
「波ねえ」
「実は雷があるじゃ無いですか、あれも光と似ているんです」
「あれは光ってるじゃない」
「雷は空中を通る時、空気の抵抗で光と熱が生じます」
「・・・う~ん」
「私は電撃魔法が使えますが、有れってピンポイントを狙えません。雷がどこに落ちるのか分からないのと一緒ですね。折れ曲がって大まかにしか狙えないし、他の人を攻撃する可能性が有るので使い難いんですよ」
「まあ確かに雷ってバラバラに落ちてるわね」
「それで光のチューブに入れたらと思ったのですが、光をすり抜けるは拡散して光って熱が出るわで、失敗しました」
「えっでも撃ってたよね」
「磁石って有りますよね」
「ああ鉄が引っ付く奴ね」
「雷の元で電子ってのも同じ方向に動く様に、一定の方向を持たせられるし、波でも有るんです」
「はっ波?」
「つまり蛇や尺取り虫みたいな動きをするんです」
「・・・まあいいわ続けて」
「そこでイメージで波長を雷の元に持たせて光チューブの中を通したら、あんな魔法になったんですが」
「ですが・・・なに?」
「ですが私の光はただのライト魔法で、雷が当たる衝撃しか無い筈なんです。つまり感電死しかしない筈なんですよ」
「んっ、胴体に穴開いたわよあのオーガ」
「雷が木を割く事は有りますが、生き物の胴体に穴はちょっと無理な筈です。体を通って地中に逃げるからですが、私のイメージした魔素がそれを変化させたのだと思うんですよ」
「えっと、つまり魔素がそれを爆裂魔法に変えたって事」
「だと思います」
「魔法は思い込みが大事って師匠に言われたけど、そう言う事なのね」


そんなファンタジーな話をしていたら商隊は小さな川の橋を渡った。
「プルトップ領ね」
「3つ目の賄賂貴族ですか」
「町には夕方前に着くし、宿も有るから領主には会わないと思うわ。会いたくないしね」
「余り良い貴族ではないと?」
「そうね鼻持ちなら無い相手ね」
「プルトップだけにその鼻折ってやりたいです」
「止めてよ関わるのは、皆が迷惑するから」
「すいません」
どうやら本当に会わない方が良い相手みたいだ。


「あれ?・・・町の街道からずれたわね」
「さっきの川伝いの細目の道を行く様ですね」
「この道はあの遠くの野営地で本街道と合流してるのよ。だから町には泊まらないって事ね。懸命だわ」


野営地に着くと近くの村の子供達が魚釣りをしていた。
カリーナさんが子供達に声をかける。
「あなた達もうすぐ日が暮れるわよ大丈夫?」
「大丈夫だよライト魔法使えるし、それに夜釣れる魚だから」
んっ、夜行性の魚ってもしかして。
「ねえ私も参加していい」
「ちっちゃいお姉ちゃんも釣るの?。いいよけど竿とか針とかエサ有る」
「ちゃんと有るわよ」
嘘だ今頭の中でインスタントを詠唱して出した。
エサは内陸なので本虫(ゴカイの平べったくて長く大きな奴)では無くてミミズだ。
竿は普通の竹竿で針には鉤が無い。
内陸の川では一晩中川に筒状の罠を仕掛けて捕る事が多いが、河口では夜に釣りをする。
夜に蟹等を食べに巣穴から出てくる魚、そう鰻だ。
もちの論、蒲焼きだよ!。
川が曲がって膨らんで淵の様に成って絶好の釣り場らしい。
魔物化した鰻はここにはいないって子供達が言ってた。

鉤の無い針は通称鰻針。
子供達もそれを使っている。
私は3匹釣った。
その場でさばいて蒲焼きにしてたら、子供達に僕のもとお願いされたので、13匹も蒲焼きにしてしまった。
野営地には井戸が有るので助かる。
川の水よりは井戸の方が安全だ。
私の投擲武器である千本手裏剣は串に使ったので鈍ったかもね。


今度は商隊の料理に参加して晩飯を作っていたら、商人さんがじっと蒲焼きを見ていた。
「1匹ならどうぞ」
「えっ良いのですか?」
「どうぞどうぞ」
そんな目で見られたら断れないよ。
私達の蒲焼きはクランの皆で頂いた。
流石に匂いは誤魔化せず周りからジト目で見られたけどね。

ただ1ヵ所あの商人さんのグループから、「ずるいぞぉー!」って声がこだましていたわ。

余談だけど私はひっそり夜中にインスタントで籠罠を出して川に数個仕掛けておいた。
成果はまたも3匹。
うん、さばいて白焼きにしてアイテム袋にそっとしまっておいた。
まあカリーナさんには後ろで見られてたんだけど。
そんな訳で今度は朝食のスープの準備に参加したよ。
う~ん、忙しい忙しい。


朝出発し領地の境目で後ろから馬群が来てたけど、境界のなだらかな峠を越えたら来なくなった。
「領主の手下でしょうね。流石に境界を越えては口出し出来ないわね」
「そう言えば他領に軍を勝手に出すと罰が有るんですよね」
「ムスクナの時とは違うから追って来ないでしょう」
「ザマアですね」
「そうね。うふふ」
「一つ手前の領主とはえらい違いだなあ」
「新しい商品を卸して貰えない程のクソ領主なんて要らないわ」
「ここの領には入らない様にします」
「賢い選択ね」

別の意味で貧乏領主だった。


「次の町でこの依頼は終わりよ」
「そう言えばカンダハルって町迄だったですね」
「そうこの商会の本拠地カンダハル」
「本店到着で終了の後はどうなるんですか?」
「真っ直ぐそれぞれの町や村に帰ったり、依頼を受けながら帰るわよ」
「依頼って?」
「うん護衛も有るし、討伐もあれば採取も有るからそれぞれね」
「でも魔物出ますか?」
「まあ出ないわね」
「薬草って生えてます」
「生えてるわよ少ないし、子供達が取った後だけど」
「護衛依頼は?」
「まあそれがメインかな主に盗賊」
「出るんですか」
「それがねえ~、・・・滅多に出ないのよ」
「じゃあ依頼は少ないですね」
「そうね」


最後の野営地出も祠と手押しポンプを設置して、私は商隊にスキルで料理を振る舞った。
これが毎回出たらと言われたが、面倒なので嫌ですと言っておいた。

商人さんはガックリと項垂れていたけど、それ程じゃ無いでしょ。
「いやそれ程だと思うぞ。あれは旨いからな」
「即席料理なんですが」
「朝なんか毎回潮汁に堅パン浸けて食べてたら、あの料理は別格に思えるから」
「・・・まあ確かに」


護衛はクランやパーティー毎にこの町で解散と成った。
帰りの路銀を含めた依頼料が支払われた。
凄く良心的な商会なのにびっくりさせられたよ。


「レイナこの町での適当な依頼は無かったが、隣町で貴族の王都への護衛依頼が有ったから唾を付けておいた。一緒に行くか?」
「うんお願いゴドルフさん」


「よっしゃ、皆ローゼンパークへ向け出~発っ」
ほぼ平地での旅程は少し味気無いけど、国王陛下の頼みも有るから野営地に祠と手押しポンプを設置して廻るのだ。

ローゼンパークには3日目の昼に入った。
この旅で一番大きな町だったよ。


「カンダハルで護衛の依頼を受ける予定で来たんだけど、まだ有るかな?」
「はい、まだ御座います。夏の正座のクランでよろしいですか?」
「ああうちのパーティーとクランとしてレイナって娘だ」
「クラン様の実績を見させて貰ってよろしいですか」
「はい」
私は冒険者カードを受付の女性に渡した。
受付の女性は奥の部屋でカードを確かめる様だ。

「ゴドルフさん凄い美人だね」
「ああギルドいちかもな。多分むっちゃ人気だと思うぞ」
そりゃそうだ。
私かて今までで一番の別嬪さんだと思ったもの。

カッカッカッと靴音と共にギルドの別嬪さんは帰って来た。
「13歳ですか、結構な実績をお持ちですね。護衛の依頼をご説明しますので、一旦ギルド長室へおいで下さいませ」
「あっ、うん解った。皆行くぞ」


パーティーメンバーにも緊張が走ったのが分かる。
私も只の護衛で無い事は理解した。


「諸君楽にしてくれ。私がここのギルド長ラフラスだ。早速話に入るが、この話箝口令がかかっている」
「破ると刑罰のアレですか?」
「そうなる。だから今から契約書にサインをして貰う。嫌ならこのまま退席してくれ」
「どうする」
「「「「良いよ」」」」
「皆賛成してくれた、受けるよ」
「有難い助かった。もう受けてくれるパーティーがいなくてな、困ってたんだ」


私達はそれぞれサインをした。

「さてこの護衛だがサリーナ王女の護衛に成る」
「「「「「えっ!」」」」」
「国の兵士にさせろってか、それをしたら対立貴族がうるさいんだよ」
「待って下さい。それってその対立してる貴族に襲われるかもってこと」
「そうなる」
「「「「「ざわざわ」」」」」
「名前も出そう相手はラズベール公爵だ」
「えっ!、ジュンベルグの」
「お嬢ちゃんそれは弟さんだ。ラズベールでもセドリック・ラズベールで、王位継承権もある」
「それは近親相・・・」
「まあ姪を娶る様なものかな。結構痛い処をつくね嬢ちゃんは。だから国王陛下としてはこのローゼンに嫁がせたい訳だ。昨日見合いが行われたが良好の様だったよ」

ハーデスかよ。

「場合によっては国の大事になる。解るかな嬢ちゃん」
「貴族の派閥争いで内乱に発展します」

「流石名山師のレイナだな。襲って来たら賊なので殺して構わん。むしろ生かさないで欲しい」
「口を封じろと」
「ゴドルフだったか、その通りだ。一番良いのは当人が出て来て、賊として討伐される事だが、まさかそれは有るまい。ビョヲラ相手の主だった似顔絵と特技や武器それから魔法の種類の資料を」
「「「「「ガタガタ。いつの間に後ろに。さっきの受付嬢」」」」」
「ふふ、ビョヲラはアサッシンのスキル持ちだ。ギルドの公安部の副部長でも有る。まあ今回は受付嬢の振りをしていたがな」


綺麗なバラにトゲ有り過ぎやろ。
それに名前がネジって。


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