異世界勇者は天使召喚士

夜鳩 秋

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序章

プロローグ1

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「お前が勇者か」


白髪青目の少女が俺に問う。


「ああ」


俺は直感的にこいつが魔王だとすぐに気づいた。
だが、身長は16歳の平均身長とほぼ一緒で手足は細く、顔も整っている。
本当にに魔王なのだろうか……。
この一年間魔王を倒すべく旅を続けてきた俺だが今更になって自分の感覚への不信感が募った。


「そうか、お前が……私の宿敵」


その瞬間、魔王の魔力が瞬時に膨れ上がった。


「ッ!」


闇色の魔力が周囲を纏う。
魔王の目が深海の様に暗くなり、その手に魔王の愛剣である魔剣が現れる。
この魔力の多さは龍以上か……流石魔王といったところか、魔法でやりやっても勝ち目はないな。
俺はそう思いつつ魔王への戦い方をシュミレーションする。


「この程度で驚くのか?」

「ああ、驚いたさ。だがな……」


俺は自身の魔力を開放し、部屋中に広がった魔王の魔力を相殺する。
俺は虚空に手を伸ばし聖剣を呼び出した。
そして十字架の光があたりの俺の手に宿り、光は剣の形を成す。
魔王に勝つには、近接戦しかないかもしれないな。
勝機は五分五分って所か……。
俺は魔王に向けて聖剣の切っ先を向けると、魔王は不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。


「何故お前は私の前に一人で現れた? お前には仲間がいるそうだが」

「お前には関係ない」


仲間達には俺と魔王を一対一で戦わせる為に、魔王城の外で魔王を助けに来るであろう魔物達を倒して貰っている。
それに仲間達を連れてきたとしていて勇者と魔王の戦いに、ただの人間が入るのは自殺行為だろう。
俺がそう思っていると、魔王が一瞬でこちらに近づいてきた。
戦いが始まり、魔剣と聖剣の魔力が相対する
魔王が俺の横腹を蹴り上げ、魔剣を俺に向かって投げた。
俺はすぐさま防御の姿勢を取るが、俺の頭上に膨大な魔力の動きを感じた。
何かが飛んできている。


「くっ!」


俺は前方から来る剣を弾き落とし、その反動で無理矢理後ろを向き飛んでくるものを確かめる。
後ろにあった物は魔王の持っている魔剣とよく似た剣だった。
剣が俺に向かって直進してくるが俺はそれを弾き飛ばし、剣を消滅させ着地した。


「これくらいは流石にやるか」


魔王が俺にそう言った瞬間に魔王の背後に剣が四本現れた。


「まじか……何本操れるんだよ」

「試した事がないのでな、お前で試してみよう」


そういった瞬間、四本の剣が俺に向かって飛んできた。
俺は四本の剣の攻撃を避け距離をとった。
魔王の顔を見るとまだ余裕そうな顔をしている。
そこで俺は賭けをすることにした。
恐らく敵はまだ奥の手を持っているだろうが早めに決着をつけさせてもらう。
そうでないと、俺の勝機が完全になくなるからだ。
俺は魔力の放出を止め、自分の身体能力の向上に魔力を使った。
魔力を通す穴に限界が来るが、それを気にせず俺は全魔力を身体能力強化に使う。


「くッ!」


全身に激痛が走り、一瞬だが魔王から気がそれた。
それを魔王は見逃さず一瞬で俺に近づき、俺の心臓を正確に貫いて来た。


「終わりだ!」

「まだ終わらない!」


俺は聖剣を持っていない方の手で魔王の手を掴み、引き寄せ聖剣を魔王の心臓へと突き刺した。
魔王は聖剣を胸に刺したまま、仰向けに倒れ込んだ。
それを見た俺は勝ったのだと分かった。


「俺の……勝ちだ」


俺は魔剣を抜く力も無しに倒れ込む。
正直、心臓を刺されてもここまで意識を保てるとは思っていなかった。
魔王を倒せたのは神の加護かそれとはまた別の何かか。
まあ、それはどうでもいい。
ああ、眠くなって来た。
瞼(まぶた)を閉じようとすると視界の端に仲間の姿が微かに見えた。


ありがとう。


俺は急に襲い来る眠気に逆らえず、意識を深淵へと引き込まれた。

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