異世界勇者は天使召喚士

夜鳩 秋

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一章 異世界来訪編

一話

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「へ?」


突然だが、俺は空から落ちている。
横を見ると太陽光が眩しい。


「でもなんで!?」


風の抵抗で顔がぐしゃぐしゃになっているが、そんな事はどうでもいい。
俺から見て上を見ると地面がある。
うん……つまり。


「このまま行けば死ぬな」


このまま逝けば、俺の体はぐしゃぐしゃになる。
あは、あはははは……。


「なんで突然こんなことになって死ななきゃいけないんだよ! 冗談じゃない! 結界!」


俺がそう言葉を発すると目の前に幾重もの薄い壁が展開される。筈だったのだがただあるのは虚空のみ。
どうなってるんだ……??
刻一刻と地面と俺の距離は縮まっていく。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ」


俺の視界は土色一色に埋まった。
そう、埋ま……埋まった?


「空から落ちてくるとは中々珍しい人もいたものですね」


視界の外から声が聞こえる。
俺は命の恩人の顔を見るべく、上下逆転になりながらも恩人の顔を見た。
銀色の長髪に整った顔、蒼色の目にきめ細やかな肌は太陽光を反射して輝いている。

「というか頭に血が……いっでぇぇぇぇえ」


俺が言い切る前に、宙に浮いていた俺は急に地へと落下した。
幸い数センチだったからか舌を噛む程度で済んだ。
まあ、頭にたんこぶはできたけどな。


「情けない声上げないでください」


女の子は俺の額にしっぺをした。


「助けてくれてありがとう、あのままだったら俺は死んでいたよ」

「はい、なんとか助けられてよかったです」

「魔法を使ったのか?」

「はい、使いました。別に気にしないでください、そこまで魔力の消耗はしていませんので」


そう言って、彼女は俺に微笑んだ。
だが、どういうことだ? 俺の魔法が起動しなかった……この世界には魔法という概念も存在するようだし……。
恐らくこれはアルトルにとっても予想外の出来事なのだろう、わざわざ俺が培ってきた魔法の数々を

俺は咳をしてぐちゃぐちゃになった髪を整えた。

「ありがとう。君の名前は?」

「礼儀がなっていませんよ……人に名を尋ねる時は自ら名乗れって親に言われませんでしたか?」

「ご、ごめん。俺の名前はノエル。君は?」

「はい、私の名前はエル・クラン。好きなように呼んでもらって構いませんよ」

「じゃあ、エルさんで 」


エルさんがそう言うと俺の背後からドドドっと何かが大勢で来る音が聞こえた。
後ろを振り返ると狼おおかみのような姿をした魔物のが5匹ほどこちらに向かって走ってきていた。


「貴方も災難ですね、空から落ちてきたり、いきなり魔物に見つかったり……」

「あははは……すいません」

「いえ、構いません。どうやらただのウルフのようですね。私が相手をしてきます。少し待っていてください」

「いえ、エルさんにこれ以上迷惑はかけられませんよ」


俺はそう言ってウルフ達に向かって走り始めた。

体が重く感じるな……だが慣れた。

俺は虚空に手を上すと頭の中で聖剣を呼び出した。


「え? なんで出てこないんだ」


けれど聖剣は出てこず俺は何度も聖剣を頭の中でイメージし呼んだ。
だがそれでも聖剣は呼び掛けに応じなかった。
まじでどうなっているんだよ……。
俺は仕方なく、手を指先まで伸ばし、まず二匹のウルフの喉ぼとけを貫いた。
三匹目はナイフで首筋を切るように脈拍を切り、続いて四匹目の突進を避け腹を蹴り殺した。
五匹目は慎重にこちらを見ている。


「さあ、どうでる」


俺がそういうと最後のウルフは怯えたのか。
数歩、俺に背を向け逃げて行った。


「まあ、こんなものか」


俺はエルさんのもとに向かって歩き始めたが気づいてしまった。

手とか腕とかウルフの血で染まってるんですけど、完全にやばい人に見られるんですけど!?


「どうしよ……」
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