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入港許可書
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港警備長である*ガウロッサ*の平日は、大抵この部屋の中に籠ったまま時間を消化して終わる。
やることといったら、毎日のように港に出入りする船や外国の商船ドラゴンの情報を管理し、書類に目を通しては判を押すくらいだ。
ゆったりと座り心地の良い椅子に、質の良い木材であしらわれた深みのある色をした机、窓からはシャーハン最大の港を一望できるといった、彼にとっては素晴らしい仕事場だった。
あと数年で定年。
退職金が出たら、妻と二人でどこか外国にでも旅行に行こうか…。
そんな事を考えながら過ごす平凡な毎日に亀裂を入れるには、あまりにも代わり映えしないノック音が部屋に転がる。
『どうぞ』
ガウロッサは書類に視線を落としたまま、いつも通りの返答をかえした。
『失礼します…』
ドアが開き、入ってきたのはシャーハン北海の監視活動を行っている警備船の船長だった。
シャーハン国警備団は、5隻の警備船を持ち、現在28人いる船長資格者が交代でそれぞれの担当海域で任務にあたっている。
そんな船長たちがこの部屋を訪れるのは特に珍しいことではなく、彼らは、いつも退屈な報告を持ってきてはそれに掛かった倍の時間をつかい世間話をしていくだけの存在にしか過ぎなかった。
しかし、今回ガウロッサの顔を瞬時に上げさせたのは、入ってきた船長の声の質が明らかに、いつもと違っていたからだ。
『どうかしましたか?』
ガウロッサは掛けている眼鏡越しに、まだ若い新米船長へと視線をむけた。
『ほ、報告がありまして…。
北海の密漁船の取り締まりにあたっている最中…その…あの…』
妙にオドオドしており、言葉もままならない心此処に在らずといった船長の様子に、ガウロッサは眉をひそめる。
『もういい。
後は俺から話そう』
ふと、その船長の背後から声がして、一人の男が姿を現した。
『なっ…!!』
ガウロッサは思わず立ち上がり声を上げる。
入って来たのはシャーハン国警備団団長のグレンダだったのだ。
『グレンダ団長!何故ここに…!?
確か、アフレッタ商業団を連れ外国へ向かわれたはずでは…?』
『その途中でドラゴンに襲われ、船を1隻失った』
グレンダは呆然としているガウロッサの前まで歩くと、スッと立ち止まった。
『だが、沈没寸前のところ、我々は…とある1隻の船に救われた。
そして、その船は我々全員を船内へと受け入れてくれ、シャーハン北海まで送り届け、偶然そこにいた彼の船に…』
グレンダはそう言って、ドアの前に立ち尽くしている船長へと手を翳す。
『全員を引き渡してくれたのだ』
ドラゴンに襲われ、団長が乗船している警備船が撃沈させられたというだけでも前代未聞の大事であり、もはや港警備長が聞いたところで、どうにかできる内容ではなかった。
『団長…それは、大変だ…。
直ちに…元老院に報告しませんと…』
やっとで声を絞りだしたガウロッサの机に、グレンダが1枚の紙を置いた。
そして、真っ直ぐにガウロッサを見つめて言う。
『結論から言おう…。
我々を救助してくれた船の、入港許可書をつくってもらいたい』
やることといったら、毎日のように港に出入りする船や外国の商船ドラゴンの情報を管理し、書類に目を通しては判を押すくらいだ。
ゆったりと座り心地の良い椅子に、質の良い木材であしらわれた深みのある色をした机、窓からはシャーハン最大の港を一望できるといった、彼にとっては素晴らしい仕事場だった。
あと数年で定年。
退職金が出たら、妻と二人でどこか外国にでも旅行に行こうか…。
そんな事を考えながら過ごす平凡な毎日に亀裂を入れるには、あまりにも代わり映えしないノック音が部屋に転がる。
『どうぞ』
ガウロッサは書類に視線を落としたまま、いつも通りの返答をかえした。
『失礼します…』
ドアが開き、入ってきたのはシャーハン北海の監視活動を行っている警備船の船長だった。
シャーハン国警備団は、5隻の警備船を持ち、現在28人いる船長資格者が交代でそれぞれの担当海域で任務にあたっている。
そんな船長たちがこの部屋を訪れるのは特に珍しいことではなく、彼らは、いつも退屈な報告を持ってきてはそれに掛かった倍の時間をつかい世間話をしていくだけの存在にしか過ぎなかった。
しかし、今回ガウロッサの顔を瞬時に上げさせたのは、入ってきた船長の声の質が明らかに、いつもと違っていたからだ。
『どうかしましたか?』
ガウロッサは掛けている眼鏡越しに、まだ若い新米船長へと視線をむけた。
『ほ、報告がありまして…。
北海の密漁船の取り締まりにあたっている最中…その…あの…』
妙にオドオドしており、言葉もままならない心此処に在らずといった船長の様子に、ガウロッサは眉をひそめる。
『もういい。
後は俺から話そう』
ふと、その船長の背後から声がして、一人の男が姿を現した。
『なっ…!!』
ガウロッサは思わず立ち上がり声を上げる。
入って来たのはシャーハン国警備団団長のグレンダだったのだ。
『グレンダ団長!何故ここに…!?
確か、アフレッタ商業団を連れ外国へ向かわれたはずでは…?』
『その途中でドラゴンに襲われ、船を1隻失った』
グレンダは呆然としているガウロッサの前まで歩くと、スッと立ち止まった。
『だが、沈没寸前のところ、我々は…とある1隻の船に救われた。
そして、その船は我々全員を船内へと受け入れてくれ、シャーハン北海まで送り届け、偶然そこにいた彼の船に…』
グレンダはそう言って、ドアの前に立ち尽くしている船長へと手を翳す。
『全員を引き渡してくれたのだ』
ドラゴンに襲われ、団長が乗船している警備船が撃沈させられたというだけでも前代未聞の大事であり、もはや港警備長が聞いたところで、どうにかできる内容ではなかった。
『団長…それは、大変だ…。
直ちに…元老院に報告しませんと…』
やっとで声を絞りだしたガウロッサの机に、グレンダが1枚の紙を置いた。
そして、真っ直ぐにガウロッサを見つめて言う。
『結論から言おう…。
我々を救助してくれた船の、入港許可書をつくってもらいたい』
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