Al戦艦と異世界ドラゴン

やるふ

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バケモノと女神

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ジンリュウの刃から逃れようと我先に駆けていた青い軍服たちの足を止めさせたのは、廊下の奥から現れた一頭のドラゴンの姿だった。

『陸竜暗部と同等とも云える我が軍も、貴方の前では烏合の衆ね…。
流石、私のお兄様…!』

そのドラゴンに跨がるソウリュウの声が廊下に響いた時、青い軍服たちから歓声が上がり、士気を取り戻したかのように一斉に回れ右をしてジンリュウへと剣を構えた。

『久しいな妹よ。
儂の居ぬ間に革命ごっこに興じるつもりだったようだが、邪魔をしてすまんな』

ジンリュウは頬の返り血を手の甲で拭いながらソウリュウを見据える。

『勘違いしないでお兄様。
私はあくまでも、お兄様と共にこの革命を成功させたかったのよ。
でも、陸竜暗部の隊員たちは、どうしてもお兄様のことが怖かったみたいで…仕方なく留守を狙うことにしたんだけど…どうやら、知っていたようね』

『内警の調査能力を侮るでない。
王宮制圧後にリノハル様を新皇女に据えて世界へ宣戦布告とかいう馬鹿げた幼稚な筋書きまで筒抜けじゃ』

『ああ…そういえば、今お兄様は警備団治安科の長だったわね』

バケモノと呼ばれた男と、その妹である革命の女神。
両雄の会話を皆が一同に佇み聞き入っている。

『内務警備団…。
発足は戦後直後、もともとは占領軍の兵士がシャーハン内で犯した犯罪を隠蔽処理するのが役割の、連合軍の手先に堕ちた国賊ドブネズミ集団。
今の主な役割は、シャーハンに真の独立をもたらさんとする者たちを、難癖つけて片っ端から摘発すること…だったかしら?』

『相変わらず、勉強熱心だな。
だからこそ、その情熱をこんな愚行に向けてしまった事が、実に残念じゃ』

ジンリュウは続ける。

『もし仮に、この王宮を制圧できたところで、シーナやユーナイトとどう戦うつもりだ?
たちまち連合軍に取り囲まれて終わるぞ』

『お兄様だって知ってるでしょう?破竜大戦でシャーハンが敗戦した大きな原因は、戦線を拡大し過ぎたことってことを…』

当時シャーハン帝国は、シーナ帝国領であるタワン島を先制攻撃し電光石火の如き早さで占領したが、ノスカリア解放を名目にユーナイトが参戦してくることを予想し、直ぐさま陸竜軍を投入してユーナイト王国にも侵攻した。


『守るべき首都と王宮があるのにも関わらず、同時に2つの軍事大国を相手に戦争を仕掛けるという無謀すぎる戦線拡大…。
でもね…本当に守るべきものとは首都でも王宮でもなかった…。
それに気がつけなかったから、シャーハンは負けたのよ』

大勢が犇めきあっているとは思えない程、静けさに満ちた王宮の廊下にソウリュウの声が落ちる。

『ゲリラ戦か…』

ジンリュウがそう言うと、ソウリュウは嬉しそうに眉を上げた。

『流石、お兄様は察しが良いわ!
そう…このシャーハンは国土の半分を森林が占めているのよ。
ならば、こちらは森に身を潜めて罠を張り、侵攻してくる敵を迎え討てば良いのよ。
何年かかろうが、相手が諦めるまで戦い抜けば良い…。
地獄の楽園島の一部族ですら、そうやってシーナ帝国軍を退けることができたのよ!』


『何年かかろうが…?
その間、無力な民たちは死に続けるのか?』


『戦えぬ者!戦わぬ者は死ねば良い!
守るべきものとは街や建物でも…ましてや国民の命でもなく、誇りよ!
それさえ失なわなければ例え最後の一兵となれど、この国は、国で在り続けられるのよ!
その覚悟が、旧シャーハン帝国政府の腰抜け共には無かった!
それどころか、敗戦し占領された時に皇女制度が廃止されることを恐れた政府のバカ共は、早期降伏の条件として皇女制度の維持以外の全てを放棄する確約を連合国と交わしたのよ!
だから、私たちが再び始めるの!
総玉砕の覚悟で、誇りを取り戻す為の聖戦を!』

両腕を上に掲げて、高らかに声を響かせるソウリュウに、周りの軍服たちが雄叫びのような声援を上げる。


しかし━━…


『……もう良いか?』

最高潮まで達していた革命への熱気を、ジンリュウの静かな声が一瞬にして消し去ってしまう。

そして、剣先をソウリュウへと向けて再び口を開く。


『もう、殺しても良いか?』













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