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ドラゴンがいる世界
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真っ青な空の下、一隻の船が大海原で帆を張っている。
『団長!
ただいま船内点検終わりました!!』
副団長のエリーは敬礼をしながら元気の良い声を部屋の中に弾ませた。
『ああ、ご苦労だったな。
だが、その顔の点検はまだだったようだな』
椅子に座っていたグレンダ団長は、呆れた様子でエリーへと溜め息を返す。
『は?顔?私の顔がどうかしましたか?』
エリーは頬に付いた苺ジャムに気がつかず、首を傾げている。
『ハハハ!今年で24歳でしたかな?
副団長といえど、やはりまだ子供ですな~』
グレンダとテーブルを挟み座っていた商人のアフレッタが豪快に笑うと、エリーはますます首を傾げて困ったように苦笑いを浮かべた。
『もういい。
早く顔を洗って盗み食いの証拠を消すんだ』
グレンダのその言葉で、やっとでジャムの存在に気がついたエリーは、慌ててその場から立ち去った。
『いや、しかし…
たかが他国との商売に、国家警備団の船を使わねばならんとは実に不便ですな~。
いい加減、我が*シャーハン国*もドラゴンを保有できるようにすべきでは?
今どき他国では、海賊対策にはドラゴン商船が普通になっておりますぞ』
アフレッタの言葉に、グレンダは咳払い一つを返して立ち上がる。
『確かに、60年前の*破竜大戦*を教訓に、戦争利用しやすいドラゴンを保有しないことで、我が国は平和国家として今日に至っています。
しかし、現実はどうですかな?
今でも三つの*破竜保有国*が幅を利かせ、その他の国は肩身の狭い思いをしている。
だからこそ、破竜保有が無理なら、飛竜、水竜、陸竜をと…各国は竜武装に躍起になっておるわけです』
アフレッタはそこまで言うと、無言で窓際に立っているグレンダの背中を見つめた。
『シャーハン国の平和は、平和竜*クジョー神*の教えがあってこそのものだと、皇女*リノハル*様は信じておられる。
我らシャーハン国国家警備団はその教えに従い、国土と国民を守り抜かねばならん…』
グレンダは窓から見える青空に物憂げな眼差しを向けながら言葉をこぼす。
『教えと国民の命、天秤にかけたらどちらに傾くかは…軍人である貴方なら考えるまでもないでしょうに』
アフレッタがテーブルに置いてある湯気たてるカップに手を伸ばした、その瞬間…
「ドゴーーーン!!」
物凄い轟音と共に船が大きく揺れた。
『何だ!?』
グレンダとアフレッタがバランスを崩し、カップが落ちて床に紅茶が飛び散った。
扉が勢いよく開き、エリーが息を切らしながら叫ぶ。
『団長!!
緊急事態です!ドラゴンです!
水竜が襲ってきました!!』
『ドラゴンだと!?
馬鹿な…!今、航行しているこの位置は、どこの国の領海にも入っていないんだぞ!』
『はい!!
なので、軍のものではなく、*はぐれ竜*の可能性もあります!』
ほとんどの国の軍がドラゴンを保有し、厳重に管理しているこの世界では、はぐれ竜…つまり野生のドラゴンは滅多に存在しない。
『総員に告ぐ!!
直ちに海中のドラゴンへと*対竜槍*を放て!!』
グレンダの声が船内に轟いた。
『団長!
ただいま船内点検終わりました!!』
副団長のエリーは敬礼をしながら元気の良い声を部屋の中に弾ませた。
『ああ、ご苦労だったな。
だが、その顔の点検はまだだったようだな』
椅子に座っていたグレンダ団長は、呆れた様子でエリーへと溜め息を返す。
『は?顔?私の顔がどうかしましたか?』
エリーは頬に付いた苺ジャムに気がつかず、首を傾げている。
『ハハハ!今年で24歳でしたかな?
副団長といえど、やはりまだ子供ですな~』
グレンダとテーブルを挟み座っていた商人のアフレッタが豪快に笑うと、エリーはますます首を傾げて困ったように苦笑いを浮かべた。
『もういい。
早く顔を洗って盗み食いの証拠を消すんだ』
グレンダのその言葉で、やっとでジャムの存在に気がついたエリーは、慌ててその場から立ち去った。
『いや、しかし…
たかが他国との商売に、国家警備団の船を使わねばならんとは実に不便ですな~。
いい加減、我が*シャーハン国*もドラゴンを保有できるようにすべきでは?
今どき他国では、海賊対策にはドラゴン商船が普通になっておりますぞ』
アフレッタの言葉に、グレンダは咳払い一つを返して立ち上がる。
『確かに、60年前の*破竜大戦*を教訓に、戦争利用しやすいドラゴンを保有しないことで、我が国は平和国家として今日に至っています。
しかし、現実はどうですかな?
今でも三つの*破竜保有国*が幅を利かせ、その他の国は肩身の狭い思いをしている。
だからこそ、破竜保有が無理なら、飛竜、水竜、陸竜をと…各国は竜武装に躍起になっておるわけです』
アフレッタはそこまで言うと、無言で窓際に立っているグレンダの背中を見つめた。
『シャーハン国の平和は、平和竜*クジョー神*の教えがあってこそのものだと、皇女*リノハル*様は信じておられる。
我らシャーハン国国家警備団はその教えに従い、国土と国民を守り抜かねばならん…』
グレンダは窓から見える青空に物憂げな眼差しを向けながら言葉をこぼす。
『教えと国民の命、天秤にかけたらどちらに傾くかは…軍人である貴方なら考えるまでもないでしょうに』
アフレッタがテーブルに置いてある湯気たてるカップに手を伸ばした、その瞬間…
「ドゴーーーン!!」
物凄い轟音と共に船が大きく揺れた。
『何だ!?』
グレンダとアフレッタがバランスを崩し、カップが落ちて床に紅茶が飛び散った。
扉が勢いよく開き、エリーが息を切らしながら叫ぶ。
『団長!!
緊急事態です!ドラゴンです!
水竜が襲ってきました!!』
『ドラゴンだと!?
馬鹿な…!今、航行しているこの位置は、どこの国の領海にも入っていないんだぞ!』
『はい!!
なので、軍のものではなく、*はぐれ竜*の可能性もあります!』
ほとんどの国の軍がドラゴンを保有し、厳重に管理しているこの世界では、はぐれ竜…つまり野生のドラゴンは滅多に存在しない。
『総員に告ぐ!!
直ちに海中のドラゴンへと*対竜槍*を放て!!』
グレンダの声が船内に轟いた。
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