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殺ぐ理由
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『何人カ、鼠ガ入リ込ンデイルヨウダガ…コレモ、オ前ノ仲間カ?』
仮面の大男はそう言うと、肩に担いでいた物体を、軽々しく片腕でクフィールの足下へと放った。
床に転がる黒いそれは、雷撃隊の一人だった。
首が不自然な方向に曲げられており、一目で死んでいることが分かる。
『他モ、全部殺スガ、オ前ダケハ助ケテヤッテモ構ワンゾ?
ソコノ、女ノヨウニ、我ノ足ヲ舐メテ、泣イテ許シヲ乞ウナラナ…』
大男が、グリペンを捕らえた時の様子を思い出し、愉快げに肩を揺らし笑った、その瞬間だった…。
「パキッ…」と音をたて、大男の仮面が宙を舞った。
いつの間にか、先程まで数mは離れていたはずのクフィールが目の前に迫って来ていたのだ。
『ム…!』
大男は咄嗟に身を引き後ろに退がる。
『予想通り…ブサイクな顔ね。
力ずくじゃないと、女も抱けない醜い男…』
クフィールが握っている剣を見て、自分の仮面が斬られていたことに気がついた大男は、怒りに歯を食い縛る。
『ヨクモ…我ガ魂ヲ壊シタナ!!』
この地獄の楽園島に住む部族は、太古より仮面を崇め、代々子孫に受け継ぐ風習がある。
特に、この大男が付けていた仮面は、その時代々の部族一の勇者にだけ与えられてきた称号であり崇高な1枚だった。
その、部族のアイデンティティーとも云える仮面を割り足で踏みつける紅色の髪の女に、大男は胸の内を殺意で満たした。
『殺いであげる…。
アナタたちの、名誉も歴史も家族も友も魂も、全部私が…殺いであげるわ』
クフィールはゆっくりと腕を動かし、剣先を大男へと向ける。
『殺ス!!』
大男は怒りに任せ、太い槍をクフィールへと突き伸ばした。
これを片腕で操れるのは、部族中の戦士を探しても、この男ただ一人だ。
しかし、クフィールは身を捻り易々とその突きをかわし、剣を振ると素早く距離をとる。
その際、クフィールの刃が大男の手の甲に深い傷を刻んでいた。
『ヌン!!』
構わず槍を横に大振りしてきた大男の攻撃をしゃがんでやり過ごすしたクフィールは、その高い位置にある眉間に一太刀をあびせた。
『グォオ…』
思わず、大きな手で傷を押さえる大男に、クフィールは更なる刃を繰り出す。
クフィールは、飛竜騎士だけではなく、剣士としても有名だ。
その剣術は*削ぐ剣*と呼ばれており、過去に2度、武術の世界大会で優勝している達人だ。
薄くて軽い剣を握り機敏に身体を舞わせ、敵にかすり傷を負わせて間合いをとり、隙を見ては斬りかかってきておいて、再び間合いをとる…。
これを繰り返しているうちに、敵は傷を増やし致命傷にならずとも、徐々にその戦意は削がれる…。
やがて、部族一の戦士である大男は、片目を潰され耳は裂け、利き手の中指は落ち身体中のいたるところに鮮血の線を引かれていた。
『モ、モウ…ヤメロ…ヤメテクレ…
我ノ、負ケダ…』
肩で息をする大男は武器を捨て、クフィールへと両手を翳した。
『あら、部族一勇敢な男が、敵に…しかも女に向かって命乞いなんてしても良いのかしら?』
『頼ム…モウ嫌ダ…』
『ダメよ、戦いなさい。
逃げ遅れた者は、女子供も含めて皆殺しにして集落ごと焼き払うんだから、アナタは、それを阻止しようとして無駄な足掻きをするの』
完全に戦意を喪失した大男を、クフィールは冷たい微笑を浮かべながら見つめている。
『何故ダ…何故、貴様ラ帝国ハ、ソウヤッテ我ラノ大地ヲ、再ビ踏ミニジルノダ!
帝国如キニ、一体何ノ権限ガアル!!
世界ノ覇権ヲ握ッテイルツモリカ!!』
弱々しい態度から一転して、大男は喰らいつくように叫び出した。
『何を勘違いしてるの?
私がいつ、帝国軍人としてここに立ってるって言った?』
クフィールはゆっくりと歩を進ませ近づきながら、大男に冷徹な視線を浴びせ続ける。
『私がアナタを殺ぐ理由は、ただ一つ…』
クフィールの瞳に映る顔には、はっきりと死相が浮かんでいた。
『その野蛮な手で…私の大切なモノを汚したからよ』
仮面の大男はそう言うと、肩に担いでいた物体を、軽々しく片腕でクフィールの足下へと放った。
床に転がる黒いそれは、雷撃隊の一人だった。
首が不自然な方向に曲げられており、一目で死んでいることが分かる。
『他モ、全部殺スガ、オ前ダケハ助ケテヤッテモ構ワンゾ?
ソコノ、女ノヨウニ、我ノ足ヲ舐メテ、泣イテ許シヲ乞ウナラナ…』
大男が、グリペンを捕らえた時の様子を思い出し、愉快げに肩を揺らし笑った、その瞬間だった…。
「パキッ…」と音をたて、大男の仮面が宙を舞った。
いつの間にか、先程まで数mは離れていたはずのクフィールが目の前に迫って来ていたのだ。
『ム…!』
大男は咄嗟に身を引き後ろに退がる。
『予想通り…ブサイクな顔ね。
力ずくじゃないと、女も抱けない醜い男…』
クフィールが握っている剣を見て、自分の仮面が斬られていたことに気がついた大男は、怒りに歯を食い縛る。
『ヨクモ…我ガ魂ヲ壊シタナ!!』
この地獄の楽園島に住む部族は、太古より仮面を崇め、代々子孫に受け継ぐ風習がある。
特に、この大男が付けていた仮面は、その時代々の部族一の勇者にだけ与えられてきた称号であり崇高な1枚だった。
その、部族のアイデンティティーとも云える仮面を割り足で踏みつける紅色の髪の女に、大男は胸の内を殺意で満たした。
『殺いであげる…。
アナタたちの、名誉も歴史も家族も友も魂も、全部私が…殺いであげるわ』
クフィールはゆっくりと腕を動かし、剣先を大男へと向ける。
『殺ス!!』
大男は怒りに任せ、太い槍をクフィールへと突き伸ばした。
これを片腕で操れるのは、部族中の戦士を探しても、この男ただ一人だ。
しかし、クフィールは身を捻り易々とその突きをかわし、剣を振ると素早く距離をとる。
その際、クフィールの刃が大男の手の甲に深い傷を刻んでいた。
『ヌン!!』
構わず槍を横に大振りしてきた大男の攻撃をしゃがんでやり過ごすしたクフィールは、その高い位置にある眉間に一太刀をあびせた。
『グォオ…』
思わず、大きな手で傷を押さえる大男に、クフィールは更なる刃を繰り出す。
クフィールは、飛竜騎士だけではなく、剣士としても有名だ。
その剣術は*削ぐ剣*と呼ばれており、過去に2度、武術の世界大会で優勝している達人だ。
薄くて軽い剣を握り機敏に身体を舞わせ、敵にかすり傷を負わせて間合いをとり、隙を見ては斬りかかってきておいて、再び間合いをとる…。
これを繰り返しているうちに、敵は傷を増やし致命傷にならずとも、徐々にその戦意は削がれる…。
やがて、部族一の戦士である大男は、片目を潰され耳は裂け、利き手の中指は落ち身体中のいたるところに鮮血の線を引かれていた。
『モ、モウ…ヤメロ…ヤメテクレ…
我ノ、負ケダ…』
肩で息をする大男は武器を捨て、クフィールへと両手を翳した。
『あら、部族一勇敢な男が、敵に…しかも女に向かって命乞いなんてしても良いのかしら?』
『頼ム…モウ嫌ダ…』
『ダメよ、戦いなさい。
逃げ遅れた者は、女子供も含めて皆殺しにして集落ごと焼き払うんだから、アナタは、それを阻止しようとして無駄な足掻きをするの』
完全に戦意を喪失した大男を、クフィールは冷たい微笑を浮かべながら見つめている。
『何故ダ…何故、貴様ラ帝国ハ、ソウヤッテ我ラノ大地ヲ、再ビ踏ミニジルノダ!
帝国如キニ、一体何ノ権限ガアル!!
世界ノ覇権ヲ握ッテイルツモリカ!!』
弱々しい態度から一転して、大男は喰らいつくように叫び出した。
『何を勘違いしてるの?
私がいつ、帝国軍人としてここに立ってるって言った?』
クフィールはゆっくりと歩を進ませ近づきながら、大男に冷徹な視線を浴びせ続ける。
『私がアナタを殺ぐ理由は、ただ一つ…』
クフィールの瞳に映る顔には、はっきりと死相が浮かんでいた。
『その野蛮な手で…私の大切なモノを汚したからよ』
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