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急襲作戦
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木が軋み、割れる音が静寂の夜を引き裂き、集落の中央に位置する高見矢倉の上部が完全に破壊される。
そこで欠伸をしながら交代の時を待っていた見張りの男は、何が起きたのかも理解できぬまま骸と化して落下し地面に叩きつけられた。
騒ぎを聞きつけ、各小屋から仮面の男たちが飛び出して来て、すっかり破壊されてしまった高見矢倉の周辺に集まった。
その真上の上空を、まるで漆黒の雲のように悠然と伸びてきた巨大なドラゴンが、見上げる仮面たちに影を作る。
『ナンダ…?』
『月ガ隠レタ…』
集落中がパニックになる中、上空のドラゴンから数本の長いロープが地面へと伸びてきた。
そのロープを伝い素早く一斉に降りてくる9人の影…。
飛竜雷撃隊だ。
その名の通り、彼らは雷のように上空から降り立ち、電光石火の如き早さで作戦を遂行する。
最後に地面に立ったズムワルドは、辺りを一瞥するなり上げた右腕をゆっくりと下げた。
作戦開始の合図だ。
黒装束の雷撃隊員たちは*アサシンブレード*と呼ばれる軽くて短めの剣で、仮面の男たちへと襲いかかる。
ズムワルドは、降り立った隊員たちに細かい指示はしない。
彼らは、まるで思考を共有しているかのように隊長であるズムワルドの思い通りに動くように訓練を受けている。
その中でも特にシェリラは優秀で、小柄で柔らかい体を上手く使い、大柄の敵の急所を次々と切り裂き葬っていく。
突然の敵襲で、パニック状態に陥る集落の中、部族たちも必死で応戦する。
そんな中、ズムワルドは集落で一番大きな家屋へと入って行くクフィールの姿を見つけた。
クフィールは、槍で向かってくる仮面の男たちの目や指を狙うようにして、細身の剣を器用に操り制しながら家屋の奥へと踏み込んでゆく。
一人、二人、三人と、次々と襲い来る仮面たちを流れるように斬り伏せながら、クフィールは先を目指す。
『見つけた…』
扉を蹴破り突入した広い部屋で、クフィールはラッジストとグリペンを発見した。
ラッジストは簡素な作りの寝台に横たわり静かに眠っており、その下の床にグリペンが座り込んでいた。
『た…隊長…?クフィール…隊長…?』
ゆっくりと視線を向けたグリペンは、震える唇から声を漏らすのと同時に見開いた瞳から大粒の涙を溢し出した。
いたるところが破れた軍服から露出している肌、頬には殴られた跡の青アザ…
その姿を見ればグリペンがどんな目にあったのかは言うまでもなかった。
『よく頑張ったわねグリペン。
さぁ、帰るわよ』
クフィールはグリペンの頭を撫でながら優しく微笑んだ。
『も…申し訳ありません隊長…!私、弱くて…こんな…こんな方法でしか…ラッジストさんを助けられなくて…帝国軍人としての誇りや尊厳に…泥を…塗ってしまいました…!うぅ…』
顔をクシャクシャにして咽び泣くグリペンを、クフィールは強く抱きしめた。
『ありがとう。
自分を犠牲にして弟を守ってくれて…』
『お願いします…この事は、皆や…ダンイルさんには…言わないでください…お願いします…!』
『分かってるわ…。
私たち姉弟は、命をかけて貴女の名誉を守ると約束する…だから、安心しなさい』
そこまで聞くと、グリペンは安心したのか、気を失うように眠りについた。
クフィールは優しく添えるように床にグリペンを置くと、ゆっくりと立ち上がり部屋の扉の方へと向いた。
そこには、いつの間にか仮面の大男が立ち塞がっていた。
大男は、仮面越しに見える紅い髪の美女に飢えたような目をギラつかせて言う。
『我ガ妻二、何カ用カ?
ソレトモ、オ前モ、我ノ子ヲ、孕ミタイノカ?』
そこで欠伸をしながら交代の時を待っていた見張りの男は、何が起きたのかも理解できぬまま骸と化して落下し地面に叩きつけられた。
騒ぎを聞きつけ、各小屋から仮面の男たちが飛び出して来て、すっかり破壊されてしまった高見矢倉の周辺に集まった。
その真上の上空を、まるで漆黒の雲のように悠然と伸びてきた巨大なドラゴンが、見上げる仮面たちに影を作る。
『ナンダ…?』
『月ガ隠レタ…』
集落中がパニックになる中、上空のドラゴンから数本の長いロープが地面へと伸びてきた。
そのロープを伝い素早く一斉に降りてくる9人の影…。
飛竜雷撃隊だ。
その名の通り、彼らは雷のように上空から降り立ち、電光石火の如き早さで作戦を遂行する。
最後に地面に立ったズムワルドは、辺りを一瞥するなり上げた右腕をゆっくりと下げた。
作戦開始の合図だ。
黒装束の雷撃隊員たちは*アサシンブレード*と呼ばれる軽くて短めの剣で、仮面の男たちへと襲いかかる。
ズムワルドは、降り立った隊員たちに細かい指示はしない。
彼らは、まるで思考を共有しているかのように隊長であるズムワルドの思い通りに動くように訓練を受けている。
その中でも特にシェリラは優秀で、小柄で柔らかい体を上手く使い、大柄の敵の急所を次々と切り裂き葬っていく。
突然の敵襲で、パニック状態に陥る集落の中、部族たちも必死で応戦する。
そんな中、ズムワルドは集落で一番大きな家屋へと入って行くクフィールの姿を見つけた。
クフィールは、槍で向かってくる仮面の男たちの目や指を狙うようにして、細身の剣を器用に操り制しながら家屋の奥へと踏み込んでゆく。
一人、二人、三人と、次々と襲い来る仮面たちを流れるように斬り伏せながら、クフィールは先を目指す。
『見つけた…』
扉を蹴破り突入した広い部屋で、クフィールはラッジストとグリペンを発見した。
ラッジストは簡素な作りの寝台に横たわり静かに眠っており、その下の床にグリペンが座り込んでいた。
『た…隊長…?クフィール…隊長…?』
ゆっくりと視線を向けたグリペンは、震える唇から声を漏らすのと同時に見開いた瞳から大粒の涙を溢し出した。
いたるところが破れた軍服から露出している肌、頬には殴られた跡の青アザ…
その姿を見ればグリペンがどんな目にあったのかは言うまでもなかった。
『よく頑張ったわねグリペン。
さぁ、帰るわよ』
クフィールはグリペンの頭を撫でながら優しく微笑んだ。
『も…申し訳ありません隊長…!私、弱くて…こんな…こんな方法でしか…ラッジストさんを助けられなくて…帝国軍人としての誇りや尊厳に…泥を…塗ってしまいました…!うぅ…』
顔をクシャクシャにして咽び泣くグリペンを、クフィールは強く抱きしめた。
『ありがとう。
自分を犠牲にして弟を守ってくれて…』
『お願いします…この事は、皆や…ダンイルさんには…言わないでください…お願いします…!』
『分かってるわ…。
私たち姉弟は、命をかけて貴女の名誉を守ると約束する…だから、安心しなさい』
そこまで聞くと、グリペンは安心したのか、気を失うように眠りについた。
クフィールは優しく添えるように床にグリペンを置くと、ゆっくりと立ち上がり部屋の扉の方へと向いた。
そこには、いつの間にか仮面の大男が立ち塞がっていた。
大男は、仮面越しに見える紅い髪の美女に飢えたような目をギラつかせて言う。
『我ガ妻二、何カ用カ?
ソレトモ、オ前モ、我ノ子ヲ、孕ミタイノカ?』
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