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投げるべきは…
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とあるパーティーでのこと…。
『フィリリア姫、そんなところで何を?』
城内パーティーに招かれた隣国の王子シュバは、最上階のバルコニーに立ち下界を眺めているフィリリアへと声をかけた。
『あら、シュバ。
パーティーがあまりにもつまらないから、こちらで退屈しのぎをやってたの』
『退屈しのぎ?
一体何をやってたんだい?』
シュバはフィリリアの隣に立つと、視線を下にやった。
そこには広い庭園が緑や花を色づかせており、数人の庭師たちが手入れに勤しんでいる姿が見える。
『綺麗な庭だ。
君には遠く及ばないがね』
シュバの口説き文句に微笑を浮かべたフィリリアは、手元の箱から小さなダイヤを指先で摘まみ取り出した。
『それは?』
シュバが訊ねるより早く、フィリリアはそのダイヤを下の庭園へと放った。
『こうやってダイヤを芝生や花壇に落としておくと、庭師たちは必死になって手入れをしてくれるの』
そう言って目を細めて笑うフィリリアに、シュバは感心した様子で頷いた。
『なら、僕はこうしよう』
シュバはつけていた黄金の指輪をはずすと、力いっぱい遠くへと投げた。
『あら、どこへ投げてるの?』
指輪は庭園の横にある城壁の向こうへと飛んでいった。
『これなら、城壁の外を歩く警備兵が拾ってくれるだろ?
兵士が高価な指輪を拾ったと噂が広まると、兵役志願者が増え、この国はますます繁栄すると思ってね』
『まあ!私の国の為に、大切な指輪を投げてくれたの?』
『君の国の為になれば、
君の為にもなるだろう?』
得意気なシュバに、フィリリアが頬を染める。
『姫様、そろそろ会場にお戻りを。
国王様もお探しですから』
いつの間にか、二人の背後にスカーレットが立っていた。
『丁度良かった、スカーレット聞いて!
シュバったら私の為に指輪を道端に投げてくれたのよ。
シュバが居たら、きっとこの国はもっと素晴らしいものになるわ!』
スカーレットは無表情のままシュバへと視線を流した。
『シュバ王子、貴方はこの国を素晴らしいものにしたいとお思いですか?』
『え…?と、当然だろ!
フィリリアと僕でなら、それが可能だ!』
突然スカーレットに話をフラれたシュバが慌てて答える。
『あら、不満げねスカーレット。
じゃあアナタなら、この国を素晴らしくする為に何を投げるの?』
フィリリアはそう言うと、小箱をひっくり返し全てのダイヤを庭園へと降らせた。
『シュバ王子、分かりませんか?』
『な…何がだ…?』
スカーレットは溜め息をつきながら、こう言った。
『本当にこの国を素晴らしいものにしたいのなら、貴方が投げるべきは指輪などではなく…先ずはそこに居る姫様でしょう』
~完~
『フィリリア姫、そんなところで何を?』
城内パーティーに招かれた隣国の王子シュバは、最上階のバルコニーに立ち下界を眺めているフィリリアへと声をかけた。
『あら、シュバ。
パーティーがあまりにもつまらないから、こちらで退屈しのぎをやってたの』
『退屈しのぎ?
一体何をやってたんだい?』
シュバはフィリリアの隣に立つと、視線を下にやった。
そこには広い庭園が緑や花を色づかせており、数人の庭師たちが手入れに勤しんでいる姿が見える。
『綺麗な庭だ。
君には遠く及ばないがね』
シュバの口説き文句に微笑を浮かべたフィリリアは、手元の箱から小さなダイヤを指先で摘まみ取り出した。
『それは?』
シュバが訊ねるより早く、フィリリアはそのダイヤを下の庭園へと放った。
『こうやってダイヤを芝生や花壇に落としておくと、庭師たちは必死になって手入れをしてくれるの』
そう言って目を細めて笑うフィリリアに、シュバは感心した様子で頷いた。
『なら、僕はこうしよう』
シュバはつけていた黄金の指輪をはずすと、力いっぱい遠くへと投げた。
『あら、どこへ投げてるの?』
指輪は庭園の横にある城壁の向こうへと飛んでいった。
『これなら、城壁の外を歩く警備兵が拾ってくれるだろ?
兵士が高価な指輪を拾ったと噂が広まると、兵役志願者が増え、この国はますます繁栄すると思ってね』
『まあ!私の国の為に、大切な指輪を投げてくれたの?』
『君の国の為になれば、
君の為にもなるだろう?』
得意気なシュバに、フィリリアが頬を染める。
『姫様、そろそろ会場にお戻りを。
国王様もお探しですから』
いつの間にか、二人の背後にスカーレットが立っていた。
『丁度良かった、スカーレット聞いて!
シュバったら私の為に指輪を道端に投げてくれたのよ。
シュバが居たら、きっとこの国はもっと素晴らしいものになるわ!』
スカーレットは無表情のままシュバへと視線を流した。
『シュバ王子、貴方はこの国を素晴らしいものにしたいとお思いですか?』
『え…?と、当然だろ!
フィリリアと僕でなら、それが可能だ!』
突然スカーレットに話をフラれたシュバが慌てて答える。
『あら、不満げねスカーレット。
じゃあアナタなら、この国を素晴らしくする為に何を投げるの?』
フィリリアはそう言うと、小箱をひっくり返し全てのダイヤを庭園へと降らせた。
『シュバ王子、分かりませんか?』
『な…何がだ…?』
スカーレットは溜め息をつきながら、こう言った。
『本当にこの国を素晴らしいものにしたいのなら、貴方が投げるべきは指輪などではなく…先ずはそこに居る姫様でしょう』
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