【完結】ディープキス

コハラ

文字の大きさ
37 / 83
6話

缶詰4日目 台風【3】

しおりを挟む
「暗くなって来ましたね」

 森山君が窓の側に立ちながら言った。
 彼の部屋に来てから一時間が経っていた。まだ停電は続いてる。
 私は森山君が使っていない壁際のベッドに座り、プリントアウトしてあったシナリオに懐中電灯を当てて読んでいた。

「雨風も強いわね。この天気じゃ自宅に戻るって訳にもいかないし」
「このまま停電が続いたら、今夜はこっちに泊まりますか?」

 泊まる……。
 その言葉に森山君と同じベッドに寝ている所を想像してしまう。
 そんな事ありえないのに。

 顔が熱い。停電で良かった。きっと今の私は赤い顔をしてる。

「春川さん?」

 森山君がこっちを向いた。

「えーと、その、森山君が迷惑じゃなかったら泊めてもらおうかな」
「迷惑ではないですけど」

 そう言って、森山君が困ったように頭をかいた。

「何?」
「そろそろ限界です」
「限界って?」
「春川さん、どっちなんですか?」
「何が?」
「何がって、それはその……」

 森山君が大きくため息をついた。
 そして急に笑い出した。

 一体何?どうしたの、森山君?

「春川さんは鈍感な人ですね」

 ムッ。失礼な。いきなり鈍感って何なの?

「怒らないで下さい。きっと俺の告白もわかってなかったんだろうなって思ったんです」
「告白?」
「ほら、やっぱりわかってない」

 森山君がクスクス笑った。

「春川さんには駆け引きをしても無駄ですね」
「だから何の事?」

 全然話が見えてこない。

「春川さん、そこのクローゼット開けてもらっていいですか?」

 壁際のクローゼットを森山君が見た。

「いいけど」

 ベッドから立ち上がって、クローゼットを開けた。
 中には森山君の旅行鞄が入ってる。

「俺の鞄を開けてみて下さい」
「私が開けていいの?」
「いいですよ。それで一番上にある物を取り出して下さい」
 言われるまま鞄を開けて、一番上にある物を取り出した。

 折り畳み傘だった。

「これでいいの?」

 森山君の方に折り畳み傘を向けた。

「はい。それです。春川さん、その傘をよく見て下さい」

 折り畳み傘に懐中電灯をあてた。
 綺麗なターコイズブルーが見えた。それから傘に書かれたブランドの名前を見てハッとした。

「この傘、私も持ってたやつだ。何年か前に無くして……」
「どうして無くしたんですか?」
「どうしてって……」
「どこかに置き忘れたんですか?」

 傘を見つめながら記憶を辿る。

 スーツ姿の背の高い男の人が記憶の中にいた。その人はカフェの軒先に立ってて、困ったように空を見上げていた。
 私は会社にあったビニール傘をさして、コーヒーを買いに来た所だった。その人の事が引っかかりながらカフェに入って、コーヒーを買って、それからまだ軒先で雨宿りをしている彼を見た。
 彼は思いつめたような顔をしてた。ただならぬ気配を感じて立ち去れなかった。それで声をかけて、バックの中にあった折り畳み傘を貸して……。

 あれ? この記憶って、昨日の森山君の片思いの人の話に似てる?

 まさか……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

2月31日 ~少しずれている世界~

希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった 4年に一度やってくる2月29日の誕生日。 日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。 でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。 私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。 翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。

歩く15億の花嫁~契約婚約から始まるオフィス・シンデレラ~

YOR
恋愛
恋愛経験ゼロの女性×三人の男たち。じっくりと心の変化を描く、じれキュン・スローストーリー。 亡き祖父の遺言により、巨大財閥の氷の御曹司・神谷瑛斗の「担保」として婚約させられた水野奈月。 自分を守るために突きつけたのは、前代未聞のルールだった。「18時以降は、赤の他人です」 「氷」の独占欲:冷酷な次期当主、神谷瑛斗。 「太陽」の甘い罠:謎めいた従兄弟、黒瀬蓮。 「温もり」の執着:庶民の幼馴染、健太。 「影」の策略:瑛斗を狂信的に愛する、佐伯涼子。 四人の想いと財閥の闇が渦巻く、予測不能な権力争い。 戦場のようなオフィスで、恋を知らない不器用な女性が、最後に選ぶ「本当の愛」とは――。 【物語の歩み(Time Line)】 第1日目: 絶望の契約。15億3000万で売られた夜。(第1話〜第2話) 第2日目: 神谷家への移住。(第3話〜第6話) 第3日目: 嵐の初出勤。(次回予告:健太との再会、そして瑛斗による強奪)(第7話〜第18話予定) ――奈月の日常が崩壊してから、まだたったの三日。 第4日目: これからどうなるかお楽しみに(第19話〜) ちょっとだけ、軽く大人な恋愛描写含みます。苦手な方は、ご注意ください。 ※完全にフィクションです。登場企業とは一切関係ありません。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】 その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。 片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。 でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。 なのに、この呼び出しは一体、なんですか……? 笹岡花重 24歳、食品卸会社営業部勤務。 真面目で頑張り屋さん。 嫌と言えない性格。 あとは平凡な女子。 × 片桐樹馬 29歳、食品卸会社勤務。 3課課長兼部長代理 高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。 もちろん、仕事できる。 ただし、俺様。 俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...