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6話
缶詰4日目 台風【8】
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「私の話より、夏目さんの話が聞きたいです。夏目さん、片思いの経験ってあります?」
「春川、俺は春川の話が聞きたい」
「いじめないで下さい」
「かわいい子はいじめたくなる」
「私、かわいくなんてありませんから。平凡で地味なだけですから」
「春川は自分を卑下し過ぎだぞ。俺は春川の事を可愛いと思ってるぞ」
たったそれだけのやり取りで頬が熱い。
夏目さんはいつも嬉しい言葉をくれる。その度に調子に乗ってしまいそうになる。
「そうやって誉めても話しませんから」
「よほどなんだな、その相手」
「ええ、よほどの人です」
「まさか不倫か?」
ビールに咽た。
「ふ、不倫なんてしませんよ。片思いの相手は独身です」
「うちの会社の人間か?」
「ち、ち、違います!」
声が裏返った。動揺を隠しきれない自分に嫌になる。
夏目さんがクスクスと楽し気に笑ってる。
「春川を尋問するのは楽しいな。わかった。営業のエース佐伯君だ!彼は女子社員に人気があるからな。確か、春川と同じ路線だっただろう。自宅の最寄り駅が近かったりするんじゃないのか?」
「同じ路線ってよく知ってますね。でも、佐伯さんではありません」
「じゃあ、システム開発の河本だ。春川と仲がいいんだろう?」
「河本さんは話しやすい優しい方ですが、違います」
「佐伯と河本は違うのか。うーん、誰だろう」
夏目さんが腕を組んで考える。
まさか夏目さんの口からスラスラと名前が挙がってくるとは思わなかった。佐伯さんも河本さんも社内では割と話しをする人だ。意外と私の事見てくれているのかな。
そう思ったら鼓動が少し早まった。
もしかしてって事あるのかな? もしかして夏目さんが私を少しでも好きでいてくれる可能性が。
「わかった。柴山君だ」
自信たっぷりに夏目さんがこっちを見た。正面からバッチリ目が合って、沸騰したやかんみたいに顔中から湯気が出てる気がした。
「図星か」
慌てて目を逸らすと、嬉しそうに夏目さんが言った。
「だから、社内の人じゃありませんって」
声が弱くなる。
もうこれ以上、この話題はやめて欲しい。でも、私の事を考えてくれるのはちょっぴり嬉しい。
その後も夏目さんの尋問が二時間続いた。
ビールから日本酒に切り替えていた。夏目さんお勧めの仙台のお酒が美味しかった。
夏目さんはワインってイメージだったけど、日本酒が好きだって事を今日初めて知った。
銀座のお寿司屋さんに連れて行ってくれた時も日本酒だったけど、その時はお寿司に合わせて日本酒を飲んでいたのかと思った。
「だいたいわかって来たぞ」
夏目さんが空になった私の江戸切子のグラスにお酒を注ぎながら言った。
「春川の片思いの相手は年上で、会社員で、上の方にいる地位の人間で、イケメンで、女性にモテるタイプで、東京出身で、東大卒で、バツイチで、お洒落で、イタリア製のスーツが似合って……」
夏目さんが聞き出した条件を羅列していく。
「これって、俺か?」
ハッとしたように夏目さんがこっちを見た。
「春川、俺は春川の話が聞きたい」
「いじめないで下さい」
「かわいい子はいじめたくなる」
「私、かわいくなんてありませんから。平凡で地味なだけですから」
「春川は自分を卑下し過ぎだぞ。俺は春川の事を可愛いと思ってるぞ」
たったそれだけのやり取りで頬が熱い。
夏目さんはいつも嬉しい言葉をくれる。その度に調子に乗ってしまいそうになる。
「そうやって誉めても話しませんから」
「よほどなんだな、その相手」
「ええ、よほどの人です」
「まさか不倫か?」
ビールに咽た。
「ふ、不倫なんてしませんよ。片思いの相手は独身です」
「うちの会社の人間か?」
「ち、ち、違います!」
声が裏返った。動揺を隠しきれない自分に嫌になる。
夏目さんがクスクスと楽し気に笑ってる。
「春川を尋問するのは楽しいな。わかった。営業のエース佐伯君だ!彼は女子社員に人気があるからな。確か、春川と同じ路線だっただろう。自宅の最寄り駅が近かったりするんじゃないのか?」
「同じ路線ってよく知ってますね。でも、佐伯さんではありません」
「じゃあ、システム開発の河本だ。春川と仲がいいんだろう?」
「河本さんは話しやすい優しい方ですが、違います」
「佐伯と河本は違うのか。うーん、誰だろう」
夏目さんが腕を組んで考える。
まさか夏目さんの口からスラスラと名前が挙がってくるとは思わなかった。佐伯さんも河本さんも社内では割と話しをする人だ。意外と私の事見てくれているのかな。
そう思ったら鼓動が少し早まった。
もしかしてって事あるのかな? もしかして夏目さんが私を少しでも好きでいてくれる可能性が。
「わかった。柴山君だ」
自信たっぷりに夏目さんがこっちを見た。正面からバッチリ目が合って、沸騰したやかんみたいに顔中から湯気が出てる気がした。
「図星か」
慌てて目を逸らすと、嬉しそうに夏目さんが言った。
「だから、社内の人じゃありませんって」
声が弱くなる。
もうこれ以上、この話題はやめて欲しい。でも、私の事を考えてくれるのはちょっぴり嬉しい。
その後も夏目さんの尋問が二時間続いた。
ビールから日本酒に切り替えていた。夏目さんお勧めの仙台のお酒が美味しかった。
夏目さんはワインってイメージだったけど、日本酒が好きだって事を今日初めて知った。
銀座のお寿司屋さんに連れて行ってくれた時も日本酒だったけど、その時はお寿司に合わせて日本酒を飲んでいたのかと思った。
「だいたいわかって来たぞ」
夏目さんが空になった私の江戸切子のグラスにお酒を注ぎながら言った。
「春川の片思いの相手は年上で、会社員で、上の方にいる地位の人間で、イケメンで、女性にモテるタイプで、東京出身で、東大卒で、バツイチで、お洒落で、イタリア製のスーツが似合って……」
夏目さんが聞き出した条件を羅列していく。
「これって、俺か?」
ハッとしたように夏目さんがこっちを見た。
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