【完結】ディープキス―実は一途な年下男子に溺愛されていました!―

コハラ

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6話

缶詰4日目 台風【1】

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 今週はホテルでシナリオに集中すると決めていたので、会社には行かなかった。
 今日は自分の部屋に引きこもって仕事をした。
 森山君とはメールのやり取りをするだけで、昨日の夜から顔を合わせていない。
 恋人の代用品を止めると言われてから、顔を合わせるのが気まずい。
 朝食も昼食もルームサービスを頼んで、一人で食べた。
 一歩も外に出たくない。
 服装だって、パジャマ姿のままで、パソコンに向かった。
 社会人としてどうかと思うけど、シナリオを書く以外の事に気力がない。
 シナリオの中のヒロインも年下君に急につき放されて落ち込んでいる所だった。
 シナリオだったらその後、年下君の本当の気持ちを知って、より一層惹かれあっていくのだが……現実はそうはいかない。

 森山君がよくわからない。
 シナリオを書く為に一緒に缶詰めになって欲しいとか、恋人の代用品になって欲しいとか言っといて、急に止めるって言い出すんだから。冷静になって考えると腹が立ってくる。なんか森山君に弄ばれたみたい。

 私は都合のいい女じゃないのよ。
 何なのよ、全く。 
 
 ベッドにごろんと横になって、窓の外を見た。
 雨のしずくが窓に強く打ち付けていた。
 昨日までの晴天が嘘みたいに荒れた天気になってる。
 テレビをつけると、季節外れの台風のニュースをやっていた。

 台風か……。

 そういえば去年の台風の時、会社が停電になってエレベーターに閉じ込められた。
 その時、森山君と二人きりだった。

「春川さん、大丈夫ですか?」

 真っ暗なエレベーターの中で、森山君が気遣ってくれた。
 暗い所が苦手な私は突然の事にただおろおろするだけだった。

「うん。大丈夫」
「今、外と連絡をしますから」

 森山君はエレベーターの緊急ボタンで、救助の手配をしてくれた。一緒にいて心強かった。

「この状況もつり橋効果になりますよね?」
 森山君が私を安心させる為に話を振ってくれた。
「つり橋効果って何の事?」
「ほら、つり橋みたいに危険を感じる所を男女が一緒に歩くと、恋に落ちやすくなるってやつですよ」
「ああ、その話か。危険な事にドキドキしてるのに、それが一緒にいる相手に対してドキドキしてるって錯覚しちゃうやつね」
「先週の企画会議でつり橋効果の話が出たのを思い出して」
「新作はつり橋効果を狙った状況が売りだもんね」
「エレベーターに閉じ込められる状況も入ってましたよね」
「そうね。まさか実際に自分が閉じ込められるとは思わなかった」
「春川さん、ドキドキしてますか?」
「してるよ。でも森山君に恋しないから安心して」
「俺も春川さんに恋しませんから安心して下さい」
「森山君もドキドキしてるの?」
「しますよ。エレベーターのロープが切れたらとか考えたら」
「怖い事言わないでよ」
「冗談ですよ。大丈夫ですから。15分で救助が来ますよ」
 森山君が言った通り、15分で救助が来た。落ち着いて待っていられたのは、一人じゃなかったからだ。

 あの時、森山君がいてくれて本当に助かった。
 今、隣にいない事が寂しい。

 そんな事を思うのは台風で心細くなってるからかもしれない。
 吹き付ける雨と風はさっきよりも強くなってる。

 停電にでもなったら嫌だな。
 そう思った時、突然、パチンと部屋の電気が消えた。

 えっ! 停電?
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