35 / 83
6話
缶詰4日目 台風【1】
しおりを挟む
今週はホテルでシナリオに集中すると決めていたので、会社には行かなかった。
今日は自分の部屋に引きこもって仕事をした。
森山君とはメールのやり取りをするだけで、昨日の夜から顔を合わせていない。
恋人の代用品を止めると言われてから、顔を合わせるのが気まずい。
朝食も昼食もルームサービスを頼んで、一人で食べた。
一歩も外に出たくない。
服装だって、パジャマ姿のままで、パソコンに向かった。
社会人としてどうかと思うけど、シナリオを書く以外の事に気力がない。
シナリオの中のヒロインも年下君に急につき放されて落ち込んでいる所だった。
シナリオだったらその後、年下君の本当の気持ちを知って、より一層惹かれあっていくのだが……現実はそうはいかない。
森山君がよくわからない。
シナリオを書く為に一緒に缶詰めになって欲しいとか、恋人の代用品になって欲しいとか言っといて、急に止めるって言い出すんだから。冷静になって考えると腹が立ってくる。なんか森山君に弄ばれたみたい。
私は都合のいい女じゃないのよ。
何なのよ、全く。
ベッドにごろんと横になって、窓の外を見た。
雨のしずくが窓に強く打ち付けていた。
昨日までの晴天が嘘みたいに荒れた天気になってる。
テレビをつけると、季節外れの台風のニュースをやっていた。
台風か……。
そういえば去年の台風の時、会社が停電になってエレベーターに閉じ込められた。
その時、森山君と二人きりだった。
「春川さん、大丈夫ですか?」
真っ暗なエレベーターの中で、森山君が気遣ってくれた。
暗い所が苦手な私は突然の事にただおろおろするだけだった。
「うん。大丈夫」
「今、外と連絡をしますから」
森山君はエレベーターの緊急ボタンで、救助の手配をしてくれた。一緒にいて心強かった。
「この状況もつり橋効果になりますよね?」
森山君が私を安心させる為に話を振ってくれた。
「つり橋効果って何の事?」
「ほら、つり橋みたいに危険を感じる所を男女が一緒に歩くと、恋に落ちやすくなるってやつですよ」
「ああ、その話か。危険な事にドキドキしてるのに、それが一緒にいる相手に対してドキドキしてるって錯覚しちゃうやつね」
「先週の企画会議でつり橋効果の話が出たのを思い出して」
「新作はつり橋効果を狙った状況が売りだもんね」
「エレベーターに閉じ込められる状況も入ってましたよね」
「そうね。まさか実際に自分が閉じ込められるとは思わなかった」
「春川さん、ドキドキしてますか?」
「してるよ。でも森山君に恋しないから安心して」
「俺も春川さんに恋しませんから安心して下さい」
「森山君もドキドキしてるの?」
「しますよ。エレベーターのロープが切れたらとか考えたら」
「怖い事言わないでよ」
「冗談ですよ。大丈夫ですから。15分で救助が来ますよ」
森山君が言った通り、15分で救助が来た。落ち着いて待っていられたのは、一人じゃなかったからだ。
あの時、森山君がいてくれて本当に助かった。
今、隣にいない事が寂しい。
そんな事を思うのは台風で心細くなってるからかもしれない。
吹き付ける雨と風はさっきよりも強くなってる。
停電にでもなったら嫌だな。
そう思った時、突然、パチンと部屋の電気が消えた。
えっ! 停電?
今日は自分の部屋に引きこもって仕事をした。
森山君とはメールのやり取りをするだけで、昨日の夜から顔を合わせていない。
恋人の代用品を止めると言われてから、顔を合わせるのが気まずい。
朝食も昼食もルームサービスを頼んで、一人で食べた。
一歩も外に出たくない。
服装だって、パジャマ姿のままで、パソコンに向かった。
社会人としてどうかと思うけど、シナリオを書く以外の事に気力がない。
シナリオの中のヒロインも年下君に急につき放されて落ち込んでいる所だった。
シナリオだったらその後、年下君の本当の気持ちを知って、より一層惹かれあっていくのだが……現実はそうはいかない。
森山君がよくわからない。
シナリオを書く為に一緒に缶詰めになって欲しいとか、恋人の代用品になって欲しいとか言っといて、急に止めるって言い出すんだから。冷静になって考えると腹が立ってくる。なんか森山君に弄ばれたみたい。
私は都合のいい女じゃないのよ。
何なのよ、全く。
ベッドにごろんと横になって、窓の外を見た。
雨のしずくが窓に強く打ち付けていた。
昨日までの晴天が嘘みたいに荒れた天気になってる。
テレビをつけると、季節外れの台風のニュースをやっていた。
台風か……。
そういえば去年の台風の時、会社が停電になってエレベーターに閉じ込められた。
その時、森山君と二人きりだった。
「春川さん、大丈夫ですか?」
真っ暗なエレベーターの中で、森山君が気遣ってくれた。
暗い所が苦手な私は突然の事にただおろおろするだけだった。
「うん。大丈夫」
「今、外と連絡をしますから」
森山君はエレベーターの緊急ボタンで、救助の手配をしてくれた。一緒にいて心強かった。
「この状況もつり橋効果になりますよね?」
森山君が私を安心させる為に話を振ってくれた。
「つり橋効果って何の事?」
「ほら、つり橋みたいに危険を感じる所を男女が一緒に歩くと、恋に落ちやすくなるってやつですよ」
「ああ、その話か。危険な事にドキドキしてるのに、それが一緒にいる相手に対してドキドキしてるって錯覚しちゃうやつね」
「先週の企画会議でつり橋効果の話が出たのを思い出して」
「新作はつり橋効果を狙った状況が売りだもんね」
「エレベーターに閉じ込められる状況も入ってましたよね」
「そうね。まさか実際に自分が閉じ込められるとは思わなかった」
「春川さん、ドキドキしてますか?」
「してるよ。でも森山君に恋しないから安心して」
「俺も春川さんに恋しませんから安心して下さい」
「森山君もドキドキしてるの?」
「しますよ。エレベーターのロープが切れたらとか考えたら」
「怖い事言わないでよ」
「冗談ですよ。大丈夫ですから。15分で救助が来ますよ」
森山君が言った通り、15分で救助が来た。落ち着いて待っていられたのは、一人じゃなかったからだ。
あの時、森山君がいてくれて本当に助かった。
今、隣にいない事が寂しい。
そんな事を思うのは台風で心細くなってるからかもしれない。
吹き付ける雨と風はさっきよりも強くなってる。
停電にでもなったら嫌だな。
そう思った時、突然、パチンと部屋の電気が消えた。
えっ! 停電?
11
あなたにおすすめの小説
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
【完結】エリート産業医はウブな彼女を溺愛する。
花澤凛
恋愛
第17回 恋愛小説大賞 奨励賞受賞
皆さまのおかげで賞をいただくことになりました。
ありがとうございます。
今好きな人がいます。
相手は殿上人の千秋柾哉先生。
仕事上の関係で気まずくなるぐらいなら眺めているままでよかった。
それなのに千秋先生からまさかの告白…?!
「俺と付き合ってくれませんか」
どうしよう。うそ。え?本当に?
「結構はじめから可愛いなあって思ってた」
「なんとか自分のものにできないかなって」
「果穂。名前で呼んで」
「今日から俺のもの、ね?」
福原果穂26歳:OL:人事労務部
×
千秋柾哉33歳:産業医(名門外科医家系御曹司出身)
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
俺様上司と複雑な関係〜初恋相手で憧れの先輩〜
せいとも
恋愛
高校時代バスケ部のキャプテンとして活躍する蒼空先輩は、マネージャーだった凛花の初恋相手。
当時の蒼空先輩はモテモテにもかかわらず、クールで女子を寄せ付けないオーラを出していた。
凛花は、先輩に一番近い女子だったが恋に発展することなく先輩は卒業してしまう。
IT企業に就職して恋とは縁がないが充実した毎日を送る凛花の元に、なんと蒼空先輩がヘッドハンティングされて上司としてやってきた。
高校の先輩で、上司で、後から入社の後輩⁇
複雑な関係だが、蒼空は凛花に『はじめまして』と挨拶してきた。
知り合いだと知られたくない?
凛花は傷ついたが割り切って上司として蒼空と接する。
蒼空が凛花と同じ会社で働きだして2年経ったある日、突然ふたりの関係が動き出したのだ。
初恋相手の先輩で上司の複雑な関係のふたりはどうなる?
表紙はイラストAC様よりお借りしております。
可愛すぎてつらい
羽鳥むぅ
恋愛
無表情で無口な「氷伯爵」と呼ばれているフレッドに嫁いできたチェルシーは彼との関係を諦めている。
初めは仲良くできるよう努めていたが、素っ気ない態度に諦めたのだ。それからは特に不満も楽しみもない淡々とした日々を過ごす。
初恋も知らないチェルシーはいつか誰かと恋愛したい。それは相手はフレッドでなくても構わない。どうせ彼もチェルシーのことなんてなんとも思っていないのだから。
しかしある日、拾ったメモを見て彼の新しい一面を知りたくなってしまう。
***
なんちゃって西洋風です。実際の西洋の時代背景や生活様式とは異なることがあります。ご容赦ください。
ムーンさんでも同じものを投稿しています。
先輩、お久しぶりです
吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社
秘書課
×
藤井昂良 大手不動産会社
経営企画本部
『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。
もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』
大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。
誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。
もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。
――それも同じ会社で働いていた!?
音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。
打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
ワケあって、お見合い相手のイケメン社長と山で一夜を過ごすことになりました。
紫月あみり
恋愛
※完結! 焚き火の向かい側に座っているのは、メディアでも話題になったイケメン会社経営者、藤原晃成。山奥の冷えた外気に、彼が言い放った。「抱き合って寝るしかない」そんなの無理。七時間前にお見合いしたばかりの相手なのに!? 応じない私を、彼が羽交い締めにして膝の上に乗せる。向き合うと、ぶつかり合う私と彼の視線。運が悪かっただけだった。こうなったのは――結婚相談所で彼が私にお見合いを申し込まなければ、妹から直筆の手紙を受け取らなければ、そもそも一ヶ月前に私がクマのマスコットを失くさなければ――こんなことにならなかった。彼の腕が、私を引き寄せる。私は彼の胸に顔を埋めた……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる