さくらの結婚

コハラ

文字の大きさ
5 / 6

第5話 意外な事実

しおりを挟む
 同じホテルに勤めるその彼はさくらと同じ年で、つき合って一年になるらしい。

 さくらにつき合っている人がいたなんて全く知らなかった。 
 しかもいきなり結婚って……。

 僕の知らない所で話が進んでいた事がショックだった。

 さくらとは何でも話し合う親子だと思っていたのに。
 急にさくらが遠くに行ってしまったような寂しさに襲われた。

 しかし、これでさくらがお嫁に行くまで見守るという真由美との約束が果たせる。
 そう思ったら、喜ばしい事なんだと思えた。

 さくらに打ち明けられた一週間後、彼に会った。  
 彼は家に上がると真っ先に仏壇の前に行き、真剣な表情で長々と手を合わせていた。ホテルマンらしく礼儀正しい青年だった。ケチのつけようもなく、彼との結婚を認めるしかなかった。さくらがいい人に出会えて嬉しいが、彼がさくらの事を「さーちゃん」と呼ぶたびに寂しい気持ちになった。  

 素直に娘の結婚を喜べないのは父親としての心境だろうか。
 悪戯が好きで僕を困らせてばかりいたさくらが結婚か。そう思ったら泣きそうになる。慌てて席を立ちリビング隣の仏間に行った。

 真由美に報告するふりをしながら、こっそり涙を拭った。その時、真由美の位牌の後ろに何かがある事に気づいた。何だろうと手を伸ばすと、見覚えのない位牌だった。位牌に記された文字には一年前の日付が記されていた。

 それは――僕の位牌だった。

 二人の会話が聞こえてきた。 

「さーちゃんには見えるの?」 
「うん」 
「今も目の前に?」
「今はいないよ」 
「そっか」
「見えない?」 
「うん。残念だけどね。きっと、さーちゃんにしか見る事が出来ないんだよ」
「どうしてかな」 
「すごく好きだからじゃないかな」 
「私が?」 
「さーちゃんとお父さんの両方が」  

 ハッとした。
 慌てて二人の前に戻った。 

「さくら、彼に僕の姿は見えないのか?」  

 さくらの顔色がみるみる青白くなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

後宮に棲むは、人か、あやかしか

由香
キャラ文芸
後宮で消える妃たち。 それは、あやかしの仕業か――人の罪か。 怪異の声を聞く下級女官・鈴華と、 怪異を否定する監察官・凌玄。 二人が辿り着いたのは、 “怪物”を必要とした人間たちの真実だった。 奪われた名、歪められた記録、 そして灯籠に宿るあやかしの沈黙。 ――後宮に棲むのは、本当に人ならざるものなのか。 光と闇が交差する、哀切の後宮あやかし譚。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...