神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―

コハラ

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4話

友人という立場<5>

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「あ、ごめんなさい。私、また失礼なことを。あの、恋愛感情とかじゃなくて、人としてという意味で」

 顔中を真っ赤にした希美が恥ずかしそうに下を向く。
 恋愛感情とは別の好きでも、希美が僕に好感を持ってくれているのは嬉しい。

「ありがとうございます。僕も倉田さんのことが人として好きですよ」

 それぐらいは今の僕に許される好きだと思った。
 今は希美の友人として側にいられるだけでありがたい。

「ところで、倉田さんは凪で働いて長いんですか?」

 希美が南房総にいる理由を知りたくて質問した。

「いえ、働き出したのが五月からだから、まだ二ヶ月くらいで。凪で一番新人なんです。年下の青山君にいつも注意されて」

 希美が苦笑を浮かべる。

「全然そうは見えませんでした。どういう切っ掛けでこちらに?」
「まあ、いろいろありまして」

 頬杖をついた希美が目を細め、カウンターの方に視線を向ける。その横顔がこれ以上は聞かないでと言っているようだった。

 希美が口にしたいろいろの中に僕のことも含まれている気がした。

「立ち入ったことを聞いてすみません。次、何にしましょうか?」

 沈んだ場の空気を切り替えたくて、希美に聞いた。

「次は梅酒にしようかな」
「いいですね。じゃあ僕も」

 希美と梅酒ソーダ割りを飲みながら、当たり障りのない会話をして、午後八時頃、店を出た。

 *

 居酒屋を出た後は、海岸沿いの道を希美と歩いた。波の音を立てる夜の海は不気味な程、真っ暗で、都会では考えられないくらい辺りは暗い。街灯はあるが、とても女性を一人で歩かせられるような道ではなかった。

 本当は車で希美を送りたかったが、酒が入っているので、車は野島崎灯台近くの駐車場に置いて来た。

「タクシー通りませんね」

 歩きながら希美が言った。
 歩いていればタクシーの一台くらい通ると思っていたが、ここは千葉県の最南端。そう簡単にタクシーが掴まる場所じゃない。

「ホテルの周辺まで行けば掴まりそうですけどね」

 近くにはリゾートホテルが何件かあった。

「私は徒歩で帰れない距離じゃないんで、タクシーじゃなくても大丈夫ですけど、佐藤さんは遠いですか?」
「ここから徒歩三十分くらいの場所に住んでいるので歩きでも大丈夫ですよ」
「あ、私も同じくらいの距離です」

 ニコッと希美が微笑んだのが、街灯の薄暗い明かりの下に見えた。

「あのコンビニから徒歩十分くらいの所に住んでます」

 あのコンビニと言われて首を傾げる。

「ほら、前に一度コンビニの前で会ったじゃないですか。私、鍵を探していて、佐藤さんが見つけてくれて」

 希美と最寄りのコンビニで遭遇したことを思い出した。

「ああ。あのコンビニですね。僕の家も十分くらいですよ」
「じゃあ、最寄りのコンビニが同じですか?」
「はい。よく行きますよ」

 希美が嬉しそうな表情を浮かべる。

「私も。夜遅く開いているお店がコンビニしかないから」
「ですよね。この辺のスーパー夜八時閉店だから」
「そうなんですよ。気を抜くとすぐ閉店時間で。私、東京の江戸川区に住んでいたんですけど、近くに24時間営業のスーパーがあったんで、スーパーは何時でも空いているって感覚だったんです」

 同じ場所に住んでいたので、その感覚はすごくわかる。今思うと便利な所で暮らしていた。

「僕も前に住んでいた所は24時間営業のスーパーがありましたから、わかりますよ」
「どちらに住んでいたんですか?」

 希美が興味深そうな目を向けてくる。

「えど……小金井市です」

 同じ江戸川区に住んでいたと言いそうになり、慌てて実家がある地名を口にした。

「あー東京の小金井市ですか」
「はい」
「小金井公園に行ったことありますよ」

 希美の言葉を聞いてハッとする。
 もしかして、僕と一緒に行ったのではないだろうか?
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