推しの速水さん

コハラ

文字の大きさ
上 下
140 / 150
7話 速水さんとセクシー美女?

《14》

しおりを挟む
駅前のスーパーでお買い物をした後は速水さんと一緒に商店街の中を歩いた。お肉屋さんの前から芳ばしい匂いがする。揚げたてのコロッケの匂いだ。

「美樹ちゃん、もしかしてコロッケが気になった?」

お肉屋さんの前で立ち止まったら速水さんに聞かれた。

「はい。美味しそうな匂いがして」
「ここのコロッケはいい牛肉を使っているから美味しいよ。買おうか」
「いいんですか」

速水さんが「うん」と頷いてコロッケを買ってくれた。紙に包まれた熱々のコロッケを渡されて、さっそく頂く。

うまっ。衣はサクッとしているし、挽肉は高級なお肉の味がする。速水さんの言う通りいい牛肉を使っていそう。お土産に買って帰りたいかも。

店先でコロッケに夢中になっていると、カシャっという音が頭上でしたから驚いた。

見上げると、速水さんが私にスマホを向けていた。

「コロッケ食べる美樹ちゃんが可愛いから撮っちゃった」

えー! 私の写真を撮ったの!

「不意打ちなんて酷いです」

恥ずかしい。頬がどんどん熱くなってくる。
もうっ、速水さん、何て所を撮るの。

「ごめん、ごめん。美樹ちゃんがいい表情で食べているから、つい撮りたくなって」

あははと速水さんが笑う。
気さくな笑顔に胸がトクンっと高鳴った。

今までで一番親し気な笑顔を見せてくれた気がする。速水さんが友達として接してくれているって実感する。

「美樹ちゃん、あげる」

速水さんが近くの自販機で買ったばかりの紙パックのウーロン茶を差し出した。

「ウーロン茶で許してくれる?」

速水さんにお願いされたら許すしかない。

「仕方ないですね」

お茶を受け取ると「ありがとう」と速水さんが言った。なんか胸の奥がくすぐったい。速水さんとこんなやり取りをする日が来るとは思わなかった。

「じゃあ、行こうか」

歩き出した速水さんの隣を歩く。手を繋ぎたいって思うけど、勇気がなくて言えない。

「うん?」

もじもじしていたら速水さんがこっちを見た。
しおりを挟む

処理中です...