推しの速水さん

コハラ

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7話 速水さんとセクシー美女?

《13》

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「図書館はゆりさんがいるから気まずいし、どこに行こうか」

私の隣に座った速水さんが口にした。
まだ帰さないと言ってくれたのは嬉しいけど、速水さん、お仕事大丈夫なのかな? 

「あの、速水さん、お仕事は?」
「今日はこのまま直帰だから大丈夫」
「そうなんですか」
「まだ四時半だね」

速水さんが腕時計を見る。

「映画でも行く? あ、でも眼鏡がないから楽しめないか。美樹ちゃん、行きたい所ある?」

行きたい所……。

それはもちろん!

「速水さんのお家!」
「えっ」

速水さんがじっとこっちを見る。

速水さん、引いた? お友達になったからってお家は図々しかった?

「すみません。正直に答え過ぎました。あの、どこでも大丈夫です」
「散らかっているけど、いい?」
「いいんですか?」
「あんまり面白い物はないけど、それでよければ。そうだ。今夜は家で鍋にしようか」

お鍋! 速水さんのお家で夕飯まで食べられるの!

「はい! 私、鍋作ります!」

速水さんのご自宅近くの駅で降りて、スーバーに立ち寄った。速水さんが緑色のスーバーのカゴを持っている姿が新鮮。スマホで写真を撮りたい衝動に駆られる。

「あの、速水さんのお写真撮ってもいいですか」

我慢できず速水さんに言うと、速水さんが瞬きをする。

「今、ここで写真?」
「ダメですか?」
「ダメというか、照れくさいというか。周囲の目があるし」
「ですよね」

周囲のおばさまたちの視線を考えれば確かに恥ずかしいかも。それに速水さん、スーパーに入った瞬間から、おばさまたちの視線を集めている気がする。眼鏡がなくてもそういうのはわかる。

「写真は家で撮ろう」
「お家で撮影会してくれるんですか!」
「撮影会って程の事じゃないけど、美樹ちゃんが写真撮りたいならいいよ」
「やった! 嬉しい!」
「美樹ちゃん、声大きいから。ちょっと落ち着こう」
「あ、はい」
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