雨宮課長に甘えたい

コハラ

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番外編

《19》

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「どうしたら思い出せるんだろう……」

私の言葉に、桃子がうふっと微笑んだ。

「私、一つだけ思い出せそうな方法知っているよ」
「何!?」
「もう一度雨宮課長に恋すればいいのよ」

恋……。

「恋愛ドラマでありそうな展開でしょ?」

桃子が自信に満ちた顔をする。

確かに恋愛ドラマでありそうな展開だけど。
ため息をつくと、ポンッと桃子が私の肩を叩く。

「大丈夫。恋愛に奥手な奈々子でも確実に恋に落ちる方法があるから」
「どんな方法?」
「それはね」と言って、桃子がいやらしい笑みを浮かべる。なんか嫌な予感。
「雨宮課長とエッチするのよ。奈々子、絶対に雨宮課長の事好きになるから。そしたら絶対に思い出すって」

雨宮課長とエッチ! 無理、無理、無理……!

「そんなの絶対に無理!!」

つい大声が出た。私の声に驚いたような視線を店中から感じ、気まずくなる。

「奈々子、声デカイよ」

桃子が肘で私を軽く突く。

「だって桃子が変なこと言うから」
「私は当たり前のことを言っただけよ。雨宮課長にもう一度恋をして、そして心も体も結ばれた瞬間にきっと思い出すって」

そんなこと言われても、今の私にできる訳ない。

*

帰宅した後も桃子の言葉が頭から離れず、お風呂に入りながら雨宮課長とそういうことをしている自分を思い浮かべ、恥ずかしさでいっぱいになった。
パシャパシャと白いバスタブの熱い湯を両手で細かく叩いて、恥ずかしくて堪らない気持ちを何とかやり過ごす。

今夜はまだ雨宮課長は帰って来ていない。

接待で遅くなるから、先に寝ているようにと言われている。
寝る時間まで心配されているなんて、すっかり雨宮課長は私の保護者だ。

そう言えば、夜のマンションに一人になったのは初めてだ。
雨宮課長はいつも私と同じ時間に帰宅していたから。
多分、私を一人にしないように気を配ってくれていたんだ。

雨宮課長だって自分の仕事があって忙しいのに……。
私の怪我だって労災保険の手続きをしてくれていたし。

私、何から何まで雨宮課長にお世話になりっぱなしだ。
雨宮課長に恩返しするには、やっぱり記憶を取り戻す事だよね。

記憶を取り戻すには……。
頭の中に上半身裸の雨宮課長が浮かぶ。

逞しい胸板に、余計なお肉のない引き締まったお腹、体温の高い肌から漂ってくる雨宮課長の甘い匂い。奈々ちゃんと普段より艶のある声で呼ばれて、ベッドに押し倒されて……。

ああ、だめ! 
雨宮課長とエッチだなんて、ドキドキし過ぎて死んじゃう! 絶対にだめ!

お湯の中でジタバタと手足を動かしながら、裸の雨宮課長を何とか、頭の中から追い出した。
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