雨宮課長に甘えたい

コハラ

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佐伯リカコの本心

《1》

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10月一週目の金曜日。
久保田が庶務係に駆け込むようにやって来た。

「中島さん! やりましたよ! 『今日子』今週の興行成績1位です!」

おおっ! 先週公開された『今日子』はもう1位を取ったの!

「久保田、やったじゃん!」

久保田と抱き合って飛び跳ねた。
庶務係のみんなも拍手してくれた。

「はい。中島さんのおかげです! 本当にありがとうございました!」
「いや、大した事していないよ」
「何言ってるんですか。望月先生に謝罪をしてくれたし、仙台まで映画のフイルムを探しに行ってくれたじゃないですか。本当に中島さんには今回、大変お世話になりました。それでですね。お礼の場と、『今日子』の1位お祝いの場を設けたいと思いまして。是非、中島さんも参加して下さい」

久保田の誘いにもちろん参加すると答えた。
しかし、その席に佐伯リカコがいると後から知って出席の返事をした事を後悔した。

参加者のスケジュール調整をした結果、久保田がセッティングしてくれたのは二週目の金曜日の夜だった。

銀座のふぐ料理の名店を貸し切っての会食となった。
参加者は安藤監督を始めとする制作スタッフ20名に、ヒロインの佐伯リカコを含めた俳優組の4名、それから原作者の望月先生と奥さんの今日子さん、ウエストシネマズからは阿久津部長、久保田、雨宮課長、私となった。全部で30名の参加者となる。

お座敷の指定された席に着くと、今夜のコース料理の説明を着物姿が素敵な美人女将がしてくれる。
大分県から直送された天然のとらふぐを使って、お刺身、唐揚げ、鍋でふぐを味わう贅沢コースとなっているそう。

話を聞くだけで美味しそう。

「中島さん、よだれが出ているよ」

左隣に座る雨宮課長にからかわれる。
総務部の私たちは隣同士で座っていた。

「出てませんよ。もう」

軽く睨むと課長がクスクスと笑う。
テーブルの下でこっそり課長の太腿を人差し指で突っついてやった。すると課長が私の指を小指で絡めとる。
驚いて課長の方を見ると、素知らぬ顔で向かい側の久保田と話し始めた。

課長の……拓海さんの悪戯に甘い気持ちになる。
テーブルの下で私と拓海さんの指が触れ合っているなんて、この場にいる人たちはきっと気づかない。
なんか拓海さんと二人だけの秘密のような気がして、ドキドキする。

「中島さんはどう思いますか?」

いきなり久保田に話を振られてドキッ。
拓海さんがドキドキさせるから全然話を聞いていなかった。
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