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心中未遂?
《13》
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心中未遂事件から一週間後、森さんから電話を頂いた。佐伯リカコが直接、私に会ってお詫びをしたいから来て欲しいとの事だった。
指定されたシティホテルに行くと、首からカメラを提げたカメラマンを沢山見かける。その中には栗原さんのご主人のハルさんの姿もあって、思わず声をかけた。
「中島ちゃんだっけ? この間はどうも」
愛想のいい笑みをハルさんが浮かべた。相変わらず人懐こい感じの人だ。
「お仕事ですか?」
私の質問にハルさんが眉を上げた。
「いつもはウェディング専門で、芸能人ネタはやらないんだけど、人手が足りないからアルバイトしてくれって頼まれてね」
「芸能人ネタ?」
「リカちゃんじゃなくて、佐伯リカコが記者会見を開くらしい。何を発表するかは謎なんだけどね」
記者会見……。
知らなかった。私と会った後にするって事?
「中島ちゃんは仕事じゃないよね? 日曜日だし」
ややカジュアルなワンピース姿の私を見てハルさんが微笑む。
「知り合いに会いに来たんです」
佐伯リカコに会う事は言いづらかった。
エレベーターが丁度来たのでハルさんに別れを告げてから乗った。
扉が閉まり、20階に向けてエレベーターが上昇する。
記者会見前に私に会うなんて、佐伯リカコはただお詫びがしたいだけなんだろうか?
また何か企んでいて、私を利用しようとは思っていないよね?
考えを巡らせていると、エレベーターが到着する。
エレベーターを降りて、指定された客室のインターホンを押すと、森さんがドアを開けてくれた。
通された客室は豪華なスィートルームで、広いダイニングコーナーにはバーがあったり、リビングの天井にはシャンデリアがあったりして、まさに女王様の部屋って感じがした。
さすが人気女優。
部屋を見ていると、奥の部屋から黒スーツの佐伯リカコが出て来た。
背中まであった長い髪が耳が出る程のショートカットになっていたのは驚いた。
「中島さん、わざわざお越し頂きありがとうございます」
佐伯リカコが私に深く頭を下げた。
「おかけになって下さい」
佐伯リカコに言われて、ふかふかのソファに腰かける。森さんが紅茶を淹れてくれて、私と佐伯リカコの前にティーカップを置いた。
向かい側に座った佐伯リカコは普段より地味な印象だけど、美しかった。こんなに美しい人が拓海さんの元奥さんだと思ったら少しだけ妬ける。
「中島さんには私の知らない所で沢山、迷惑をかけたみたいで、本当にすみませんでした。雨宮さんから中島さんの事は聞きました。雨宮さんを利用するような事をしてしまって、中島さんはいい気分じゃなかったですよね。週刊誌に写真は出てしまうし、中島さんは雨宮さんとつき合っている事は秘密にしなきゃいけないし、雨宮さんと会うのも気を遣っただろうし」
佐伯リカコの話を聞きながら、今までの苦労が思い浮かぶ。嫉妬で身が千切れそうになる事ばかりだった。
「私が中島さんの立場だったら、かなりキレていると思います。今まで我慢させてしまって本当に申し訳なかったです」
佐伯リカコが立ち上がって、さっきよりも深く頭を下げた。
その姿に謝罪の言葉はうわべだけではなく、申し訳なかったという気持ちが感じられる。
彼女なりに一生懸命謝罪をしてくれているんだと思ったら怒れなくなった。
今日は佐伯リカコに言いたい事を言ってやろうと思っていたのに。
指定されたシティホテルに行くと、首からカメラを提げたカメラマンを沢山見かける。その中には栗原さんのご主人のハルさんの姿もあって、思わず声をかけた。
「中島ちゃんだっけ? この間はどうも」
愛想のいい笑みをハルさんが浮かべた。相変わらず人懐こい感じの人だ。
「お仕事ですか?」
私の質問にハルさんが眉を上げた。
「いつもはウェディング専門で、芸能人ネタはやらないんだけど、人手が足りないからアルバイトしてくれって頼まれてね」
「芸能人ネタ?」
「リカちゃんじゃなくて、佐伯リカコが記者会見を開くらしい。何を発表するかは謎なんだけどね」
記者会見……。
知らなかった。私と会った後にするって事?
「中島ちゃんは仕事じゃないよね? 日曜日だし」
ややカジュアルなワンピース姿の私を見てハルさんが微笑む。
「知り合いに会いに来たんです」
佐伯リカコに会う事は言いづらかった。
エレベーターが丁度来たのでハルさんに別れを告げてから乗った。
扉が閉まり、20階に向けてエレベーターが上昇する。
記者会見前に私に会うなんて、佐伯リカコはただお詫びがしたいだけなんだろうか?
また何か企んでいて、私を利用しようとは思っていないよね?
考えを巡らせていると、エレベーターが到着する。
エレベーターを降りて、指定された客室のインターホンを押すと、森さんがドアを開けてくれた。
通された客室は豪華なスィートルームで、広いダイニングコーナーにはバーがあったり、リビングの天井にはシャンデリアがあったりして、まさに女王様の部屋って感じがした。
さすが人気女優。
部屋を見ていると、奥の部屋から黒スーツの佐伯リカコが出て来た。
背中まであった長い髪が耳が出る程のショートカットになっていたのは驚いた。
「中島さん、わざわざお越し頂きありがとうございます」
佐伯リカコが私に深く頭を下げた。
「おかけになって下さい」
佐伯リカコに言われて、ふかふかのソファに腰かける。森さんが紅茶を淹れてくれて、私と佐伯リカコの前にティーカップを置いた。
向かい側に座った佐伯リカコは普段より地味な印象だけど、美しかった。こんなに美しい人が拓海さんの元奥さんだと思ったら少しだけ妬ける。
「中島さんには私の知らない所で沢山、迷惑をかけたみたいで、本当にすみませんでした。雨宮さんから中島さんの事は聞きました。雨宮さんを利用するような事をしてしまって、中島さんはいい気分じゃなかったですよね。週刊誌に写真は出てしまうし、中島さんは雨宮さんとつき合っている事は秘密にしなきゃいけないし、雨宮さんと会うのも気を遣っただろうし」
佐伯リカコの話を聞きながら、今までの苦労が思い浮かぶ。嫉妬で身が千切れそうになる事ばかりだった。
「私が中島さんの立場だったら、かなりキレていると思います。今まで我慢させてしまって本当に申し訳なかったです」
佐伯リカコが立ち上がって、さっきよりも深く頭を下げた。
その姿に謝罪の言葉はうわべだけではなく、申し訳なかったという気持ちが感じられる。
彼女なりに一生懸命謝罪をしてくれているんだと思ったら怒れなくなった。
今日は佐伯リカコに言いたい事を言ってやろうと思っていたのに。
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