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心中未遂?
《12》
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「拓海さん、どうしたの? 何か心配な事でも?」
拓海さんが眉間に皺を作る。
「奈々ちゃんが俺から離れていきそうで怖かったんだ」
「えっ……」
「彼女、佐伯さんの事でまた奈々ちゃんに心労をかけただろ? 奈々ちゃんは真面目過ぎるから、俺が彼女の電話に出なかったのは自分のせいだと思っただろ? それで彼女が流産した事も、心中をしようとした事も、自分に責任があるって思っただろ?」
私の気持ちわかっていたんだ。
「奈々ちゃんのせいじゃないよ。彼女の電話に出なかったのは俺が選択した事なんだ。だから奈々ちゃんのせいじゃない。それに俺は自分の選択に後悔していない。奈々ちゃんを失わなくて良かったと思っている」
こんなに拓海さんに想われているとは思わなかった。
拓海さん、私を一番大切にしてくれているんだ。私、拓海さんの気持ちちゃんとわかっていなかった。
今は別れた方がいいんじゃないかって、少し思っていた事が恥ずかしい。
「拓海さん、私の事をいっぱい思ってくれてありがとう。拓海さんの言う通り、私、佐伯さんの事で責任を感じていました。彼女にどうやったら償いが出来るんだろうって、そんな事ばかり考えて、拓海さんと別れなきゃいけないのかなって思って……」
「何で俺と別れる事になるの?」
「苦しい状況にいる佐伯さんを支えられるのは拓海さんしかいないと思ったから。拓海さんも佐伯さんが心配でそばにいたいのかと思って。そう思ったら私は二人にとって邪魔なのかなって」
「バカだな。邪魔な訳ないだろ」
拓海さんの腕の中に閉じ込められる。
「そんな風に思わせてごめん。奈々ちゃん、もう恋人のふりは出来ないって、今日ハッキリと佐伯さんに言ったよ。辛い状況にいる彼女に言うのは酷だと思ったが、俺は彼女の人生に責任を持てる立場ではないし、むしろこれ以上は関わってはいけないと思ったんだ。もう彼女には会わないから」
厳しい表情を浮かべる拓海さんが少し怖い。
本気で佐伯リカコと決別するつもりなんだ。
「今度の事は彼女が起こした事だ。妻子ある男を好きになったのも、男が家庭を捨てられないのをわかっていて別れられなかったのも、彼女が悪い。赤ちゃんが流れてしまったのは気の毒だが、睡眠薬を飲んだのも彼女だし、彼女は自分の身勝手さをわからなきゃいけない。だから奈々ちゃんは彼女に償いをしようとは思わないで欲しい。奈々ちゃんも俺も無関係だ」
静かな話し声だったけど、言葉の端々からは佐伯リカコへの怒りを感じる。
初めて拓海さんが怒っている事に気づいて、胸が締め付けられた。
拓海さんが眉間に皺を作る。
「奈々ちゃんが俺から離れていきそうで怖かったんだ」
「えっ……」
「彼女、佐伯さんの事でまた奈々ちゃんに心労をかけただろ? 奈々ちゃんは真面目過ぎるから、俺が彼女の電話に出なかったのは自分のせいだと思っただろ? それで彼女が流産した事も、心中をしようとした事も、自分に責任があるって思っただろ?」
私の気持ちわかっていたんだ。
「奈々ちゃんのせいじゃないよ。彼女の電話に出なかったのは俺が選択した事なんだ。だから奈々ちゃんのせいじゃない。それに俺は自分の選択に後悔していない。奈々ちゃんを失わなくて良かったと思っている」
こんなに拓海さんに想われているとは思わなかった。
拓海さん、私を一番大切にしてくれているんだ。私、拓海さんの気持ちちゃんとわかっていなかった。
今は別れた方がいいんじゃないかって、少し思っていた事が恥ずかしい。
「拓海さん、私の事をいっぱい思ってくれてありがとう。拓海さんの言う通り、私、佐伯さんの事で責任を感じていました。彼女にどうやったら償いが出来るんだろうって、そんな事ばかり考えて、拓海さんと別れなきゃいけないのかなって思って……」
「何で俺と別れる事になるの?」
「苦しい状況にいる佐伯さんを支えられるのは拓海さんしかいないと思ったから。拓海さんも佐伯さんが心配でそばにいたいのかと思って。そう思ったら私は二人にとって邪魔なのかなって」
「バカだな。邪魔な訳ないだろ」
拓海さんの腕の中に閉じ込められる。
「そんな風に思わせてごめん。奈々ちゃん、もう恋人のふりは出来ないって、今日ハッキリと佐伯さんに言ったよ。辛い状況にいる彼女に言うのは酷だと思ったが、俺は彼女の人生に責任を持てる立場ではないし、むしろこれ以上は関わってはいけないと思ったんだ。もう彼女には会わないから」
厳しい表情を浮かべる拓海さんが少し怖い。
本気で佐伯リカコと決別するつもりなんだ。
「今度の事は彼女が起こした事だ。妻子ある男を好きになったのも、男が家庭を捨てられないのをわかっていて別れられなかったのも、彼女が悪い。赤ちゃんが流れてしまったのは気の毒だが、睡眠薬を飲んだのも彼女だし、彼女は自分の身勝手さをわからなきゃいけない。だから奈々ちゃんは彼女に償いをしようとは思わないで欲しい。奈々ちゃんも俺も無関係だ」
静かな話し声だったけど、言葉の端々からは佐伯リカコへの怒りを感じる。
初めて拓海さんが怒っている事に気づいて、胸が締め付けられた。
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