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第11話
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理事長室でセレス先生はいつものように自分特性の紅茶を飲んでいるが、今日は少し様子が違っていた。
「・・・・もうそろそろですかねぇ~」
その言葉の後に扉をトントンと叩く音がする。
「はい~、どなたですかぁ~?」
『セレス理事長、教頭の ベルジア・アドレアスともう一名、アナタに話があるのでここに来ました』
「どうぞぉ~、入って来て下さぁ~い」
「失礼します」
その言葉と共に扉を開けて入ってくるが、二人共険しい顔をしながら理事長を見つめている。
「ベルジアせんせぇ~、その顔の傷はぁ~、どうされたんですかぁ~?」
「あぁ、この傷ですか? あの事件があった時に生徒に付けられたんですよ」
「へぇ~、そうなんですかぁ~」
「私が犯人の近くにいた生徒を助けようとして、体を引っ張ったら殴られたんですよ」
「そうなんですかぁ~」
「全く、後で呼び出して処罰しなきゃいけませんね。それよりもセレス理事長!」
「はい~?」
「今回起きた事件の責任ですが、アナタはどう取るんですか?」
「私に責任ですかぁ~?」
「そうですよ。アナタが犯した責任です」
その言葉を言った後に、持っている書類に目を向けて話し始める。
「三日前に学園に犯罪者の不法侵入を許してしまった件に加えて、学園の壁を壊されてしまいました。ベナント魔法学園で起きた初めてにして最悪な事件ですよ。セレス理事長。先程も申し上げた通り、アナタはどう責任を取るんですか?」
「困りましたねぇ~。どうしましょうかぁ~」
「どうしましょうか。ではありませんよ! 場合によっては、アナタは理事長の職を解任される選択しなければなりません!!」
「そうですかぁ~。アナタ方はそう判断なさるんですかぁ~。でも私は解任は嫌ですよぉ~」
「しかし、他の責任の取り方がありますか? 我々が思いつく責任の取り方は解任以外考えられないんですよ」
「解任ですかぁ~・・・・う~ん・・・・そうですねぇ~」
セレスは何か考えるように首を傾げた後に、何か気づいたような顔をしながら両手を合わせる。
「先ずはぁ~、犯人の侵入経路を見つけましょ~!」
「「は?」」
教頭先生達はポカンとした顔をしながらセレス理事長を見るが、当の本人は全く気にした様子も見せずに、話を続ける。
「そしてぇ~、侵入経路が分かったところでぇ~、対策と学園警備の強化を考えましょ~。後はぁ~、緊急時の避難についてもぉ~、考えておかないといけませんねぇ~。そこは他の先生方と相談して決めていきましょうかぁ~」
「一体何を言ってるんですか、アナタは!?」
セレス理事長が余りにも突拍子のない話をするので、怒りの余り声を張り上げてしまう。
「何って学園の警備の話ですよぉ~」
「私達が話しているのは、アナタの責任追求と処遇についてです!!」
「あぁ~、今回の件の責任でしたかぁ~」
「そうですよ!!」
「なら安心してください~。もう責任は取りましたからねぇ~」
「何・・・・三日間で責任を取った? ・・・・・・嘘ですよね?」
「ホントですよぉ~。皇帝陛下様から実費で壁を直す事とぉ~、学園の逃げた犯人を捕まえる事を言い渡されたのですがぁ~、今日で全部終わりましたぁ~。もしかして学園の壁を見てないんですかぁ~?」
教頭先生達は分かりやすいぐらいに顔を強張らせると、互い顔見つめ合ってしまう。
「そ、そうですか・・・・でしたら我々教師達に、その事を含めて今回の事件について、説明をして頂かないと困りますね」
「それは後ほど言い渡しますのでぇ~、ご安心下さい~・・・・後一つだけぇ~、私はやらないといけない事があるんですよねぇ~」
「やらないといけない事? それは何ですか?」
「それはですねぇ~。犯人のファドムに協力していた人がいたらしくてぇ~、その人達を捕まえないといけないんですよぉ~」
「そうですか。その人達の捜索はこれからですか?」
「いいえ~。安心して下さい~・・・・何故ならもう見つけましたからねぇ~」
ニコニコしながら話すセレス理事長に、こんなにも対応が早いのか!とベルジア教頭先生達は驚いてしまう。
「み、見つけたと仰るのでしたら、その協力犯は何処にいるか分かりますか?」
「はい~、分かりますよ~。しかもその協力犯達はぁ~、バレて無いだろうと思いながら私の部屋にノコノコとやって来て話をしてますもんねぇ~!」
「「ッ!?」」
その言葉を聞いた途端に、ベルジア教頭先生達の顔が一瞬で青ざめさせる。
「な、何をバカな事を言ってるんですか! 我々がファドムに協力な訳ないでしょう!! しょ、 証拠はあるんですか?」
「ファドムさんが全てを自白じはくしましたよ」
「う、嘘の供述きょうじゅつを述べたんですよ。それしか考えられません!!」
「そうですかぁ~。そう仰るのでしたらぁ~、ここに居て貰いましょうかぁ~」
「はぁ・・・・どうしてですか?」
「アナタ方の家や部屋、それと学園に置いてあるアナタ方の机を調べていますぅ~。それが終わったらぁ~、アナタ方の取り調べをしますよぉ~」
「な、何ですと!?」
教頭先生達は体を震わせながら、“どうする? “と言う顔して互いの顔を見合う。教頭先生達が協力していたのが、誰が見ても分かる状態なってしまっている。
「おやおやぁ~? 顔色が優れませんねぇ~。大丈夫ですよ。ベルジアせんせぇ~、自分の無実を証明すれば良いだけの簡単な話ですよぉ~」
「な・・・・なるほど、そうですね。しかし私達も仕事が「・・・・・・雷いかづちよ! 我がッ!?」ッ!?」
ベルジア教頭は、何が起きたか分からないと言うような顔しながら、後ろを振り向いて驚いた。さっきまで隣に立っていた先生が、壁に力無く寄り掛かかったまま動かなくなっていた。
「大丈夫ですよ。彼は気絶しているだけですよぉ~・・・・だけども」
鋭い目付きになった上に、張り詰めた緊張感が部屋全体に広がる。ベルジア教頭先生はセレス理事長が出す雰囲気に呑み込まれしまったのか、その場で石のように固まってしまった。
「彼が私に放とうとした魔法は一体何だったですかね・・・・ベルジア、答えて下さい」
ベルジア教頭先生は体がくすみ上がるのと同時に、こう言われている気がした。『正直に答えてなければ、私の魔法で存在ごと消す』と。
「ハ・・・・ハハッ! ・・・・・・・・うわあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!?」
ベルジア教頭は叫びながらドアに駆け寄り扉を開こうとドアノブを回すが、ガチャガチャ音を立てるだけで一向に開かない。
「何故だ!? 何で扉が開かないんだ!! 出してくれぇー! 誰か助けてくれっ!! 殺されるぅーーー!!」
『無駄だ。こちら側から鍵を掛けさして貰った』
「お、お前は!?」
ドア越しに聞こえる声を聞いたベルジア教頭は、ドアノブに手を掛けたままピタリと止まる。
『あの時、アンタにしてやられたよ。俺を助ける為に近づいたんじゃなく、アイツがちゃんと学園に来て暴れているかを確認する為に、あの場所に居たんだな』
「ち、違う! 私はファドムを止める為に来たんだ! そしたらお前がそこにいたから・・・・ひ、避難させる為に体を引っ張ったんだ!!」
『違うだろ? まだセレス先生を辞任に追い込むまでの口実が、充分なほどにファドムに暴れ回って貰ってないから、慌てて近づいて来て襟首を引っ張って妨害したんだろ』
「何を根拠に言ってるんだ!」
声で動揺しているのが分かる。恐らく、俺の予想が合っているからあんな風に動揺しているんだろう。
『根拠ならある』
「何?」
『それは、俺とアンタが一緒にいた時にファドムが何もして来なかった事と、ファドムが、気絶しているのにアンタを殺さなかった事だ』
「・・・・え?」
『意味が分からないか。アンタが襟首を引っ張った時に発砲音・・・・まぁ、あの大きい音にファドムが気が付いたんだけれども、こっちを向いて来ただけで何もして来なかった。そこに疑問を感じたんだ。』
「シュン、どんな疑問ですか。彼に分かるように説明しなさい」
『分かりました。セレス先生。簡単に言えば、ファドムの性格なら俺達に気付いた瞬間に、魔法を撃って俺とベルジア教頭先生を消そうとしていた筈だし、それが彼らの信仰である“穢れし者に洗脳された人の救済”であり、そして彼らのやり方だ。でも魔法を撃って来なかった』
「それがどうした! ただの当てずっぽうだろう」
「そうか? 俺の予想だと、俺が協力者の側にいたから、ファドム達は魔法を撃てなかったんじゃないか?』
「そ、そんな訳ないだろ! なぁ、頼む開けてくれ! 俺を助けてくれっ!!」
ここまで来てまだシラを切るか・・・・まぁ良い。
『そうか・・・・そう言えばアンタは俺に気絶させられたのは覚えているよな?』
「そ、そうだ! 貴様に顔を殴られて」
『なら何でファドムは、気絶しているお前に何もしなかったんだ? 俺だったらお前を先に始末してるか、人質に取って脅しているかの、どっちかをやっている』
「そ、それは・・・・そうだ! 私の存在に気づいてなかったからじゃないか」
今思いついたって言う感じで言うなコイツ。
『じゃあ最後。アンタがあの時一つだけミスを犯した事を言おう』
「ミ、ミス?」
『そう、ミスだ。アンタは俺が闘っている間気絶していたんだよな?』
「ああ、そうだ」
『気絶している筈なのに、何であの場から居なくなったんだ?』
「ッ!?」
そうファドムに逃げられた時に周囲を見回した。その時に倒れている筈の教頭先生が消えていた事にも気づいていた。
『アンタは俺が戦っている途中で目が覚めたんだろう。そして俺が拘束しようとしているところで、慌ててファイアボールを撃って逃げたんだろう。そのまま倒れていれば良いものを』
「今言ったのは全て貴様の憶測に過ぎない! 俺は無実だぁーーー!!」
そう言うとベルジア教頭先生は、ドアを激しく叩き始める。
『そうか? なら何でお前は理事長室から逃げようとしてるんだ? やってない。つまり潔白の人だったら、逃げずに自分に掛けられた疑いを否定し続けるぜ。まぁ、いずれにせよ取り調べで潔癖どうか証明出来るんだから、素直にセレス先生に従った方が良いんじゃないのか?』
俺がそう言うとベルジア先生はドアを叩くのを急に止める。
大人しく従う気になったのか?
「・・・・・・こうなったら貴様ら諸共もろとも道ずれにしてくれる! 炎よ。煉獄のゲハッ!!?」
ベルジア先生はドアと共に宙を舞うと、そのまま廊下の窓を突き破って行き校庭へ落ちて行った。セレス先生は壊れた窓に近づくと校庭を見下ろして、ベルジア先生の様子を確認する。
「三下以下の魔法使いの分際が、私に敵うと思ったのか?」
えげつねぇ~。ドアから避難してて良かった。
「セレス先生、俺もドアにいたんですから気をつけて下さい」
「シュンくんならぁ~、避けていると思ったので撃ちましたぁ~」
そして、切り替えも早いな。
「こっちも必死だったんですよ。でもまぁ、これでベルジア先生の黒確定ですね」
ピクピク動いているって事は生きているってことだよな?
「はい~、そうですねぇ~」
「後、セレス先生」
「はい~、何でしょうかぁ~?」
「セレス先生に重傷を負わされそうになったので、罰として晩ご飯抜きにするので覚悟していて下さい」
「それはイヤですよぉ~!!」
そう言いながら俺に抱きついて泣き始めた。
「イヤでもお仕置きです」
「今日の晩御飯はなんですかぁ~?」
「川魚のムニエルです」
「食べたいですぅ~! 謝りますから食べさせて下さい~!!」
「フレンドリー ファイアーは重罪ですよ」
「火の魔法は使用してませんよぉ~!!」
「軍用用語なので魔法じゃありませんよ」
「意味は分かりませんけどぉ~、晩ご飯を食べたいですよぉ~!!」
「駄目です」
「イヤァ~! 晩ご飯食べられないのはイヤなのですよぉ~!! イヤイヤァ~!!」
その後、セレス先生に、イヤイヤァ~!! としつこく言われ続けたので、今回だけ許す事にした・・・・鬱陶しいし。
「・・・・もうそろそろですかねぇ~」
その言葉の後に扉をトントンと叩く音がする。
「はい~、どなたですかぁ~?」
『セレス理事長、教頭の ベルジア・アドレアスともう一名、アナタに話があるのでここに来ました』
「どうぞぉ~、入って来て下さぁ~い」
「失礼します」
その言葉と共に扉を開けて入ってくるが、二人共険しい顔をしながら理事長を見つめている。
「ベルジアせんせぇ~、その顔の傷はぁ~、どうされたんですかぁ~?」
「あぁ、この傷ですか? あの事件があった時に生徒に付けられたんですよ」
「へぇ~、そうなんですかぁ~」
「私が犯人の近くにいた生徒を助けようとして、体を引っ張ったら殴られたんですよ」
「そうなんですかぁ~」
「全く、後で呼び出して処罰しなきゃいけませんね。それよりもセレス理事長!」
「はい~?」
「今回起きた事件の責任ですが、アナタはどう取るんですか?」
「私に責任ですかぁ~?」
「そうですよ。アナタが犯した責任です」
その言葉を言った後に、持っている書類に目を向けて話し始める。
「三日前に学園に犯罪者の不法侵入を許してしまった件に加えて、学園の壁を壊されてしまいました。ベナント魔法学園で起きた初めてにして最悪な事件ですよ。セレス理事長。先程も申し上げた通り、アナタはどう責任を取るんですか?」
「困りましたねぇ~。どうしましょうかぁ~」
「どうしましょうか。ではありませんよ! 場合によっては、アナタは理事長の職を解任される選択しなければなりません!!」
「そうですかぁ~。アナタ方はそう判断なさるんですかぁ~。でも私は解任は嫌ですよぉ~」
「しかし、他の責任の取り方がありますか? 我々が思いつく責任の取り方は解任以外考えられないんですよ」
「解任ですかぁ~・・・・う~ん・・・・そうですねぇ~」
セレスは何か考えるように首を傾げた後に、何か気づいたような顔をしながら両手を合わせる。
「先ずはぁ~、犯人の侵入経路を見つけましょ~!」
「「は?」」
教頭先生達はポカンとした顔をしながらセレス理事長を見るが、当の本人は全く気にした様子も見せずに、話を続ける。
「そしてぇ~、侵入経路が分かったところでぇ~、対策と学園警備の強化を考えましょ~。後はぁ~、緊急時の避難についてもぉ~、考えておかないといけませんねぇ~。そこは他の先生方と相談して決めていきましょうかぁ~」
「一体何を言ってるんですか、アナタは!?」
セレス理事長が余りにも突拍子のない話をするので、怒りの余り声を張り上げてしまう。
「何って学園の警備の話ですよぉ~」
「私達が話しているのは、アナタの責任追求と処遇についてです!!」
「あぁ~、今回の件の責任でしたかぁ~」
「そうですよ!!」
「なら安心してください~。もう責任は取りましたからねぇ~」
「何・・・・三日間で責任を取った? ・・・・・・嘘ですよね?」
「ホントですよぉ~。皇帝陛下様から実費で壁を直す事とぉ~、学園の逃げた犯人を捕まえる事を言い渡されたのですがぁ~、今日で全部終わりましたぁ~。もしかして学園の壁を見てないんですかぁ~?」
教頭先生達は分かりやすいぐらいに顔を強張らせると、互い顔見つめ合ってしまう。
「そ、そうですか・・・・でしたら我々教師達に、その事を含めて今回の事件について、説明をして頂かないと困りますね」
「それは後ほど言い渡しますのでぇ~、ご安心下さい~・・・・後一つだけぇ~、私はやらないといけない事があるんですよねぇ~」
「やらないといけない事? それは何ですか?」
「それはですねぇ~。犯人のファドムに協力していた人がいたらしくてぇ~、その人達を捕まえないといけないんですよぉ~」
「そうですか。その人達の捜索はこれからですか?」
「いいえ~。安心して下さい~・・・・何故ならもう見つけましたからねぇ~」
ニコニコしながら話すセレス理事長に、こんなにも対応が早いのか!とベルジア教頭先生達は驚いてしまう。
「み、見つけたと仰るのでしたら、その協力犯は何処にいるか分かりますか?」
「はい~、分かりますよ~。しかもその協力犯達はぁ~、バレて無いだろうと思いながら私の部屋にノコノコとやって来て話をしてますもんねぇ~!」
「「ッ!?」」
その言葉を聞いた途端に、ベルジア教頭先生達の顔が一瞬で青ざめさせる。
「な、何をバカな事を言ってるんですか! 我々がファドムに協力な訳ないでしょう!! しょ、 証拠はあるんですか?」
「ファドムさんが全てを自白じはくしましたよ」
「う、嘘の供述きょうじゅつを述べたんですよ。それしか考えられません!!」
「そうですかぁ~。そう仰るのでしたらぁ~、ここに居て貰いましょうかぁ~」
「はぁ・・・・どうしてですか?」
「アナタ方の家や部屋、それと学園に置いてあるアナタ方の机を調べていますぅ~。それが終わったらぁ~、アナタ方の取り調べをしますよぉ~」
「な、何ですと!?」
教頭先生達は体を震わせながら、“どうする? “と言う顔して互いの顔を見合う。教頭先生達が協力していたのが、誰が見ても分かる状態なってしまっている。
「おやおやぁ~? 顔色が優れませんねぇ~。大丈夫ですよ。ベルジアせんせぇ~、自分の無実を証明すれば良いだけの簡単な話ですよぉ~」
「な・・・・なるほど、そうですね。しかし私達も仕事が「・・・・・・雷いかづちよ! 我がッ!?」ッ!?」
ベルジア教頭は、何が起きたか分からないと言うような顔しながら、後ろを振り向いて驚いた。さっきまで隣に立っていた先生が、壁に力無く寄り掛かかったまま動かなくなっていた。
「大丈夫ですよ。彼は気絶しているだけですよぉ~・・・・だけども」
鋭い目付きになった上に、張り詰めた緊張感が部屋全体に広がる。ベルジア教頭先生はセレス理事長が出す雰囲気に呑み込まれしまったのか、その場で石のように固まってしまった。
「彼が私に放とうとした魔法は一体何だったですかね・・・・ベルジア、答えて下さい」
ベルジア教頭先生は体がくすみ上がるのと同時に、こう言われている気がした。『正直に答えてなければ、私の魔法で存在ごと消す』と。
「ハ・・・・ハハッ! ・・・・・・・・うわあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!?」
ベルジア教頭は叫びながらドアに駆け寄り扉を開こうとドアノブを回すが、ガチャガチャ音を立てるだけで一向に開かない。
「何故だ!? 何で扉が開かないんだ!! 出してくれぇー! 誰か助けてくれっ!! 殺されるぅーーー!!」
『無駄だ。こちら側から鍵を掛けさして貰った』
「お、お前は!?」
ドア越しに聞こえる声を聞いたベルジア教頭は、ドアノブに手を掛けたままピタリと止まる。
『あの時、アンタにしてやられたよ。俺を助ける為に近づいたんじゃなく、アイツがちゃんと学園に来て暴れているかを確認する為に、あの場所に居たんだな』
「ち、違う! 私はファドムを止める為に来たんだ! そしたらお前がそこにいたから・・・・ひ、避難させる為に体を引っ張ったんだ!!」
『違うだろ? まだセレス先生を辞任に追い込むまでの口実が、充分なほどにファドムに暴れ回って貰ってないから、慌てて近づいて来て襟首を引っ張って妨害したんだろ』
「何を根拠に言ってるんだ!」
声で動揺しているのが分かる。恐らく、俺の予想が合っているからあんな風に動揺しているんだろう。
『根拠ならある』
「何?」
『それは、俺とアンタが一緒にいた時にファドムが何もして来なかった事と、ファドムが、気絶しているのにアンタを殺さなかった事だ』
「・・・・え?」
『意味が分からないか。アンタが襟首を引っ張った時に発砲音・・・・まぁ、あの大きい音にファドムが気が付いたんだけれども、こっちを向いて来ただけで何もして来なかった。そこに疑問を感じたんだ。』
「シュン、どんな疑問ですか。彼に分かるように説明しなさい」
『分かりました。セレス先生。簡単に言えば、ファドムの性格なら俺達に気付いた瞬間に、魔法を撃って俺とベルジア教頭先生を消そうとしていた筈だし、それが彼らの信仰である“穢れし者に洗脳された人の救済”であり、そして彼らのやり方だ。でも魔法を撃って来なかった』
「それがどうした! ただの当てずっぽうだろう」
「そうか? 俺の予想だと、俺が協力者の側にいたから、ファドム達は魔法を撃てなかったんじゃないか?』
「そ、そんな訳ないだろ! なぁ、頼む開けてくれ! 俺を助けてくれっ!!」
ここまで来てまだシラを切るか・・・・まぁ良い。
『そうか・・・・そう言えばアンタは俺に気絶させられたのは覚えているよな?』
「そ、そうだ! 貴様に顔を殴られて」
『なら何でファドムは、気絶しているお前に何もしなかったんだ? 俺だったらお前を先に始末してるか、人質に取って脅しているかの、どっちかをやっている』
「そ、それは・・・・そうだ! 私の存在に気づいてなかったからじゃないか」
今思いついたって言う感じで言うなコイツ。
『じゃあ最後。アンタがあの時一つだけミスを犯した事を言おう』
「ミ、ミス?」
『そう、ミスだ。アンタは俺が闘っている間気絶していたんだよな?』
「ああ、そうだ」
『気絶している筈なのに、何であの場から居なくなったんだ?』
「ッ!?」
そうファドムに逃げられた時に周囲を見回した。その時に倒れている筈の教頭先生が消えていた事にも気づいていた。
『アンタは俺が戦っている途中で目が覚めたんだろう。そして俺が拘束しようとしているところで、慌ててファイアボールを撃って逃げたんだろう。そのまま倒れていれば良いものを』
「今言ったのは全て貴様の憶測に過ぎない! 俺は無実だぁーーー!!」
そう言うとベルジア教頭先生は、ドアを激しく叩き始める。
『そうか? なら何でお前は理事長室から逃げようとしてるんだ? やってない。つまり潔白の人だったら、逃げずに自分に掛けられた疑いを否定し続けるぜ。まぁ、いずれにせよ取り調べで潔癖どうか証明出来るんだから、素直にセレス先生に従った方が良いんじゃないのか?』
俺がそう言うとベルジア先生はドアを叩くのを急に止める。
大人しく従う気になったのか?
「・・・・・・こうなったら貴様ら諸共もろとも道ずれにしてくれる! 炎よ。煉獄のゲハッ!!?」
ベルジア先生はドアと共に宙を舞うと、そのまま廊下の窓を突き破って行き校庭へ落ちて行った。セレス先生は壊れた窓に近づくと校庭を見下ろして、ベルジア先生の様子を確認する。
「三下以下の魔法使いの分際が、私に敵うと思ったのか?」
えげつねぇ~。ドアから避難してて良かった。
「セレス先生、俺もドアにいたんですから気をつけて下さい」
「シュンくんならぁ~、避けていると思ったので撃ちましたぁ~」
そして、切り替えも早いな。
「こっちも必死だったんですよ。でもまぁ、これでベルジア先生の黒確定ですね」
ピクピク動いているって事は生きているってことだよな?
「はい~、そうですねぇ~」
「後、セレス先生」
「はい~、何でしょうかぁ~?」
「セレス先生に重傷を負わされそうになったので、罰として晩ご飯抜きにするので覚悟していて下さい」
「それはイヤですよぉ~!!」
そう言いながら俺に抱きついて泣き始めた。
「イヤでもお仕置きです」
「今日の晩御飯はなんですかぁ~?」
「川魚のムニエルです」
「食べたいですぅ~! 謝りますから食べさせて下さい~!!」
「フレンドリー ファイアーは重罪ですよ」
「火の魔法は使用してませんよぉ~!!」
「軍用用語なので魔法じゃありませんよ」
「意味は分かりませんけどぉ~、晩ご飯を食べたいですよぉ~!!」
「駄目です」
「イヤァ~! 晩ご飯食べられないのはイヤなのですよぉ~!! イヤイヤァ~!!」
その後、セレス先生に、イヤイヤァ~!! としつこく言われ続けたので、今回だけ許す事にした・・・・鬱陶しいし。
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