東京PMC’s

青空鰹

文字の大きさ
41 / 130

紫音と石野さんの見解

しおりを挟む
 「はいはいこれでOK。明日から通院しなくてもいいわよ」

 そう言ってくれるのは有り難いんですが、みんなの前で上半身を晒し出している状態だから恥かしいです。

 「あら、紫音くんて意外とほっそりしているのね。抱き心地が良さそう」

 「ええ、あの身体付きで結構暖かいから、ついつい抱き付きたくなっちゃうのよねぇ。サラも試しに抱き付いてみたら?」

 「それじゃあお言葉に甘えて、紫音くん。こっちに来て」

 ソファーに座っているサラさんが、手招きして来る。

 「いや、その・・・・・・僕は湯たんぽとかペットじゃないので」

 「ちょっとだけの間だから。それにサラに抱き付かれるの、嫌じゃないでしょう?」

 「それは、そうですけどぉ・・・・・・」

 これでも15歳の男の子なので、ちょっと抵抗を感じてしまう。

 「おいサラ、ここに来た目的忘れてないか?」

 「大丈夫ですよ、主任。でも余りにもリトアが自慢してくるので、ちょっと羨ましいと思いまして」

 僕と工藤さんを交互に見つめている。因みにもう上着を着た。

 「そうか・・・・・・紫音、彼女のところに行きなさい」

 「何でですか?」

 「サラがこうなってしまったら、仕事に身が入らなくなってしまうからな。だから頼む」

 「うぅ~ん・・・・・・」

 納得いかないけど、頭を下げられたら断れないよ。

 「わかりました。工藤さんの言う通りにします」

 「ありがとう紫音くん」

 僕がサラさんの隣に座った途端、サラはギューッと僕の事を抱きしめて頭をなでなでし始めた。

 「・・・・・・羨ましい」

 リュークさんはどういう意味で羨ましいのか、気にしないようにしよう。

 「こうなった事情は紫音くんが付けていたスマートウォッチを通して把握しております。それで紫音くん」

 「・・・・・・はい」

 「改まった形になりますが、犯人の特徴を詳しく教えて下さい」

 「その前に・・・・・・」

 離して下さい。 と言おうとしたら、工藤さんに そのままでいろ。 と言わんばかりに睨らまれたので諦めてそのまま説明をする事にした。

 「前に話した通り、体臭が酷かったのと肥満体系。それと、お腹に1発45ACPを受けてます。血が出てたので、ボディーアーマーを付けていなかったようです」

 「血が流れてたの!?」

 話を聞いていた石野さんが、急に喰い付いて来た。

 「ねぇねぇどんな感じに当たったの? 身体に弾を受けてるんだから、当たった個所は当然赤黒くなってたわよね? 血がどんな風に滴れてたの? ねぇねぇ教えて!」

 まるでクリスマスプレゼントを渡される寸前の子供のように、はしゃいでいる石野先生にゾッとしてしまうが、正直に答える。

 「お、おヘソの右上辺りに当たったんですが、何故か犯人は反撃して来たんです」

 当たった個所は覚えているので、自分の身体で撃った個所を石野さんに示すと フムフム。 と興味深そうに言った。

 「恐らくお腹に脂肪を大量に蓄えていたせいで、弾が深く入らなかったのね。ここにいるメンバーだったら、歩くのに支障をきたしていたわ。
 その人に他の特徴はなかった? 例えばぁ・・・・・・服が汚そうとか、肌が荒れてたとかぁ」

 「あっ! そういえば。昨日と今日同じ服を着ていて変えてなさそうな感じでした。それに爪がボロボロで数カ所血が滲んでました」

 手にグローブを着けてなかったので覚えている。

 「ふぅ~ん、なるほどぉ・・・・・・。精神的に異常があるみたいね」

 「どういう事だ、石野?」

 天野さんがそう聞くと、石野先生がニッコリとした顔で話し始めた。

 「私達は朝昼晩に食事を取って、定期的に服を着替えてるでしょ?」

 「ああ、そうだな。それがどうした?」

 「自暴自棄になっている人はやる気が出なくなったり、怒りっぽくなったりして自分の身体を大切にしないのよぉ」

 「自分の身体を大切にしない?」

 どういう意味何だろう?

 「私達は朝昼晩の食事を取って身体を洗い、そして寝るのが生活リズムよね? 特に女の私達は美容に気を付けるでしょぉ?」

 「ええ、そうね」

 「でも彼は強い怒りの感情に囚われていて、そういった事を疎かにするどころか、自分を傷つけて気持ちを落ち着かせる行動に出てるのよ。彼の場合は爪を強く噛む行為ね。
 他にも自分で髪の毛を毟って取ったり物を壊したりする行動を取る人、さまざまな人がいるわぁ」

 じゃあ筒城先生に怒鳴っていたのは、筒城先生に怒っている? 何だろう。怒っているどころか、怨んでいるような感じがした気がする。

 「一応聞くが、医者の見解としては?」

 「狙われた子が、何かとてつもない怨みを買った可能性がある。と答えるわぁ。工藤さん」

 石野先生の話を聞いた工藤さんは、顎に手を当てて考えていた。

 「そうかぁ・・・・・・警察に保護された筒城さんは、心当たりはないと言っているんだが」

 「つつき? もしかしてその子の名前は、 筒城 姜 って名前かしらぁ?」

 「えっ!? ええそうです。知り合いですか?」

 「ええ、高校で知り合ってお友達になったの! 彼女とはよく遊びに行ってたわぁ」

 石野先生がそう話した瞬間、その場にいた全員が意外そうな顔をしていた。

 「そ、それで。高校時代のツツキくんのようすはどうだったのかい」

 リュークさんがそう聞くと、思い出しているのか天井を見つめながら う~~~ん・・・・・・。 と唸っている。

 「至って普通だったわ。怨みを買うような事をしてなかったしぃ」

 「そうですか」

 リュークさんはこれ以上聞いても意味がなさそうと思ったのか、ガックリしていた。

 「アナタが普通に誰かと遊ぶ姿を想像出来ないわ」

 「私だって、青春を謳歌していた時があるわよぉ。リトア」

 うん、僕も想像出来ない。

 「そういえば、オズマ達の方はどうしたんだ?」

 「ああ、それがな。犯人を追い詰めようとしたんだが、警察の方でストップを喰らったらしいんだ」

 警察の指示で追跡するのを止めただって!

 「どういう事ですか? 犯人を目の前にして捕まえないで断念するなんて」

 「警察も犯人を追い詰めようしたんだが、近づけば発砲されるし、周りの車にぶつかったりするから、これ以上被害を拡大させない為にも車で追うのを断念して、ヘリで追跡する事にしたんだ」

 「おお!」

 「しかし、犯人は東京の閉鎖区域の中へ逃げられてしまってな。残念ながら逮捕まで踏み入れなかったんだ」

 そう言いながら工藤さんは肩を落とした。

 「ちょっと待って下さい!」

 「ん? どうした?」

 「ゲートを使わずに閉鎖区域へ入れるのですか?」

 「入れるぞ」

 いつの間にか窓を開けて煙草を吸っている天野さんが語り掛けて来た。

 「世間一般には公表されていないが、閉鎖区域入るにはゲート以外にも誰かが作った道で入れる。いわゆる抜け道だ」

 「抜け道を作っているのは、土竜くん達か密輸に関わっている人達ぐらいだよね?」

 「そうだ。まぁ土竜達は密輸ルート確保する為というよりも、日用雑貨の販売ルートを確保する為に作っているからな。見つかってもうるさく言われないんだよなぁ、アイツらだけは」

 重要視されてる人達なんだなぁ。 と思ってしまう。

 「後、犯人が乗っていた車は見つかったの?」

 「その車でしたら、高校から離れた位置に路上駐車していました。ただ、一つ問題がありまして・・・・・・」

 「サラ、どんな問題があったの?」

 「その車の所有者は東京が閉鎖される時に乗り捨てた車だったらしく、犯人はそれを直して使っていたみたいです。ドライブレコーダーも、証拠を消す為に取ってしまっているみたいです」

 つまり犯人は車のオーナー持ち主じゃない上に、ドライブレコーダーが搭載されてないから、犯人の顔を見る事は出来ない状態。

 「ただ、路上で盗んだ車の中から犯人の指紋と血液、それに頭髪が見つかったので警察の方で調べているみたいです」

 サラさん真面目に話すのはいいけど、そろそろ抱き付くの止めて欲しい。尻尾を撫でてるリトアさんも!

 「情報はわかり次第、天野達に伝えよう。それと紫音くん」

 「あ、はい!」

 「キミはしばらくの間は、武装したまま高校に通うように」

 「えっ!?」

 どうして? と言いたそうな顔をしていると、リトアさんが耳を摘んで来た。

 「アナタは犯人に憎まれているからよ。覚えない?」

 「覚え・・・・・・あっ!?」

 そういえば犯人が大通りに出た辺りから、僕の事をしつこいぐらいに探していた。

 「じゃあ、犯人が僕を狙って来る可能性がある?」

 「「「「「「その通り」」」」」」

 「えええええええええええええっ!!?」

 驚いていると、煙草を吸っていた天野さんがこっちに来て話し始めた。

 「自分の身は自分で守れ紫音」

 「そんなぁ~、犯人はAKにドラムマガジンを付けているんですよぉ!」

 「相手はお前の射った弾が当たるぐらいど素人だろ? だったら大丈夫だろ」

 PMCになったばかりで経験もそれほど積んでないから素人かもしれませんが、言い方酷くないですか?

 「まぁ何かあったら僕達が駆け付けるから、そんなに怯えなくてもいいよ」

 「そうそう、この間みたいな囮にしないから安心しなさい」

 全く持って安心出来ない! 紫音はそう思いながら顔を青ざめさせていたのだ。

 「お耳柔らかい。フニフニ」

 僕の心配をして下さいよ、サラさぁぁぁああああああんっ!?

 その後、サラさんは工藤さんによって引き剥がされたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

二年間の花嫁

柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。 公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。 二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。 それでも構わなかった。 たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。 けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。 この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。 彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。 やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。 期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。 ――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

処理中です...