チートなお家と精霊とスローライフ!

青空鰹

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元に戻してよおおおおおおおーーーーーー!!?

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「・・・・・・う、ん。ふぁ~あ」

ベッドの上で仰向けのまま欠伸すると、両手で目を擦ってからまぶたを開く。

ふかふかで気持ちいいベッド。テンプレ展開なら草原で横になってるはずなんだけれども、“リィン”の場合部屋からスタートなんだ。でもなんで天井がピンク色なんだろう?

「ようやく目覚めましたか」

女神様が顔を覗いてくるので身体を起こしてから女神様に顔を向ける。

「おはようございます。女神」

「おはよう。私の可愛いリィンちゃん」

「ふぇ?」

女神様は何をおかしなことを言ってるんだろう?

「リィンの名前はちが、あれ?」

俺と言おうとしたら何故かリィンと言ってしまう。なんで?

「あれ? ・・・・・・あれ?」

そう言えば色んな物が大きくなってるような気がするし、自分の声も高い。

「ご自身がどうなっているのか、分からないみたいですね。よいしょっと」

女神様は大きな鏡を取り出すと、鏡をこっちに向けてリィンの姿を映す。

「うわぁ~」

黒髪のロングヘアーで右目が黄色の左目が青のオッドアイ。そして幼女と言えるような身長。

「カワイイ」

鏡に映る自分を色んな角度に顔を動かして見つめてると、鏡の裏からクスクスと笑う声が聞こえる。

「その身体、お気に召しましたか?」

「うん・・・・・・ハッ!?」

いや、この体を気に入っちゃったらダメだ!

「・・・・・・女神様」

「はい。なんでしょうか?」

「リィンを元に戻してよおおおおおおおーーーーーー!!?」

「もう無理ですよ。諦めて下さい」

「なんで無理なの!!」

「カワイイから戻したく。コホンッ! 魂がその体に定着してるので無理です」

いま、カワイイから戻したくない。って言おうとしたよね?

「ハァー・・・・・・ハァァァアアアンッ!!!」

女神様は突然、謎の声を発しながら抱きついて頬ずりして来た。

「ンギュッ!?」

「カワイイカワイイカワイイカワイイ! 私のリィンちゃあーーーん!!」

「や、やめて・・・・苦しいよ」

「嫌ですよ。私のカワイイ妹がこうやって生きて動いてるんですよ! 私は抱きしめられずにはいられませんっ!!」

い、妹? もしかして。

「リィンのこの体って女神様の妹の・・・・・・亡骸?」

「違いますよ。元々は私の細胞の一部を利用して作ったドール。簡単に言えばホムンクルスですよ」

「えっ!? ホムンクルス?」

「そうですよ。私の作った12体のホムンクルスの中で一番可愛く出来た自身作なのですよ! スリスリ」

「12体! なんで12体もホムンクルスを作ったの!?」

「その理由はですね。理想の妹が欲しいなぁ~。といつも思っていたら、いつのまにか自分で理想の妹、いえホムンクルスを作ってました」

理想の妹欲しさにホムンクルスを作るって・・・・・・理由がショボすぎる!!

「ちなみにリィンちゃんの姉妹達は、今も培養カプセルの中で眠ってますよ」

「サラッと恐ろしいことを言ってきている!」

「たまにカプセルから出して身体を洗ってあげたり、添い寝してあげたりしているので寂しい気持ちにさせてませんよ。あの子達に魂がないから、どう思っているか分かりませんけど」

この人・・・・・・もしかしたらヤバい人かも。

「あとは自分のことをリィンと言ってるのは、私がそう設定しているからですよ」

そう設定している?

「じゃあ、リィンのことを“リィン”って言ってるのは・・・・・・女神様のせい?」

「はい! 私が考えたリィンちゃんの設定は、自分を私と呼ぶのではなくリィンと言いますからね」

そんなぁ・・・・・・こんなのって酷すぎるよ。

「・・・・・・ふぇ」

どうしてだろう。胸が苦しくて目頭が熱くなってくるよ。

「あら?」

「ふぇぇぇぇぇぇええええええんっ!!? リィン、この身体やだよおおおおおお!!!?」

「ウフフッ」

女神様は胸の中でリィンが泣いているのに何故か微笑ましそうの見ている。

なんで? なんでリィンが泣いてるのに女神様は笑っていられるの?

「泣き虫の設定もちゃんと効いてますね。良かった良かった」

「ええええええ、ふぇっ!?」

この涙も女神様のせいなの!!

「ウフフッ! どうぞ腕の中で思う存分泣いて下さいね。私が慰めて差し上げますから」

「ウ・・・・・・ゥゥゥゥゥゥウウウウウウウ!」

ここでワァンワァン泣いたら女神様が喜ぶだけ・・・・・・だから泣かないもん!!

「よしよし、いい子いい子。こうしているのも勿体無いので部屋を探索しましょうか」

なんか話を逸らされた気がするけど気のせいかな?

「分かった。女神様に付いて行く」

「ねぇ、リィンちゃん」

「なに女神様?」

「あの時自己紹介出来なかったからいま言いますね。私の名前はスティアと申します。よろしくね」

「うん、よろしくお願いします。スティア様」

「ノンノンノン。違います」

違う? なにが違うんだろう?

「私はリィンちゃんのお姉さんなので、私のことは“おねえちゃん!” と言って下さい」

相当期待しているんだろう。ニコニコしながらリィンを見てくる。

「ヤダッ!」

絶対言う事聞くもんか! そう思いながらそっぽを向いてむくれる。

「・・・・・・そうですか仕方ありませんね。リィンちゃん」

「ムー」

「他の話もしたいので、こっちを向いて下さい」

まぁ、こうむくれていても話が進まないよね。

「・・・・・・はい。あれ?」

おかしいな女神様の瞳の色が緑だったはずなのに、赤くな・・・・・・。

彼女は時が止まったかのように身体が固まって虚ろな目なってしまった。その様子を見たスティアはニヤリと笑いながら淡々と話し始める。

「リィンちゃん」

「・・・・・・ふぁい」

「アナタは私をお姉ちゃんと呼ぶ。良いですね?」

「はい。リィンはスティア様をお姉ちゃんと呼ぶ」

「そう呼ぶことに関してはなんの違和感も感じないし、疑問も感じない。リィンちゃんにとって当たり前の事だから、そう呼んでいる」

「なんの違和感も感じないし、疑問も感じない。リィンにとって当たり前の事だから、そう呼んでいる」

「そしてリィンちゃんは、お姉ちゃんの言う事をよく聞く良い子だから・・・・・・」

「リィンは・・・・・・お姉ちゃんの言う事をよく聞く良い子だから・・・・・・」

「お姉ちゃんの言う事をちゃんと聞かなきゃいけない」

「・・・・・・お姉ちゃんの言う事をちゃんと聞かなきゃいけない」

「さぁ、目を閉じてリィンちゃん」

「うん。お姉ちゃん」

彼女は言われるがままに目を閉じると、女神スティアの腕の中で寝息を立て始める。

「ウフフッ・・・・・・これでよし」

そう言いながら愛おしそうに眠っているリィンを抱きしめる。

「・・・・・・ずっと。夢を見ていた事が現実になりました」

そう、私は10体目の妹を作った時にとある欲望が出て来た。笑って欲しい。喜んで欲しい。私に話し掛けて来て欲しい。と、自分が作った妹達の面倒を見ているうちにその気持ちは日に日に強くなって行く。

「彼には申し訳ないですけど、本当に良かった」

あの馬鹿な妹達の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった彼を最初見た時は可哀想だと思った。しかし、その思いとは別にこうも思ってしまった・・・・・・この肉体を失った魂は使えるかもしれない。と。

「ハァー・・・・・・どうしてあの子達はリィンちゃんのようなカワイイ子にならなかったでしょうか?」

私が作った訳じゃないから仕方ないのかな? ・・・・・・あっ、そうでした!

「私のリィンちゃんにお家を案内して説明もしなきゃいけないから、眠っている先に見て回りましょうか」

愛おしそうにしながらベッドの上に寝かせると、頭を優しくゆっくり撫で始める。

「いい子にして待っていてくださいね。リィンちゃん」

女神スティアは立ち上がってドアに向かい、ドアノブに手を掛ける。

「ウフッ、ウフフフッ! 私が渡したメモ通りに作ってくれてれば、私とリィンちゃんが楽しいゆっくり・・・・・・過ごせる」

ガチャ!?

「・・・・・・・・・・・・ような・・・・・・空間が?」

彼女はポカーンとした顔をしながら周りをキョロキョロ見渡していた。

「・・・・・・じゃないわよ・・・・・・・ゆっくり過ごせる空間じゃないわよおおおおおおーーーーーーーーーーーーー!!?」

拳を作りながら両手を上げて怒り、そして叫び出した。

「なんですかここは! 無駄に部屋が広いし、色々物が置いてあるし、しかも家具もキッチンも無駄に高級そうな物ばかりあるし! 一体どう考えればこんな風な部屋が作れるのかしらね? ・・・・・・まぁ良いでしょう」

私の方でこの部屋にあるものを整理してから、部屋の空間を狭くすれば良いのだから。

「先ずこのクマの剥製は要らないわ! リィンちゃんがこんなの見たら怖がっちゃうじゃない!!」

そう言いながら自身が用意していた魔法陣の中に放り投げる。

「この剣も要らない! この槍も要らない! 斧? なんで斧なんてあるの! リィンちゃんが扱える訳ないでしょ!! 後、この盾も甲冑も要らない! ダーツにビリヤードに卓球台これは・・・・・・要らないわ。って、いま捨てた物全部思い出してみたら伝説級のアイテムだった気がするわ! ・・・・・・クマの剥製以外はね」

っと手を止めて場合じゃなかったわ。

「これも要らない! あれも要らない! この棚と中にある物全部要らないから棚ごと捨てましょう。フンッ!!」

そう言いながら次々と魔法陣へ物を捨てて行き、要らない物を捨て終えると部屋を見回して一息吐く。

「フー、後は部屋の大きさを調整と家具の置き換えをすれば良さそうですね。しかし、この部屋がこんな様子だと他の部屋も危ういですね。リィンちゃんが起きる前にチェックしておきましょう」

彼女はそう言うと別の部屋に向けて歩き出し始めたのであった。
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