夕闇ロマネスク

犬堂 鳴

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鳥籠ロマネスク

少年の話 壱

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あの世というものがあるのなら。
もしそこへ行けるというのなら。

それは黄昏時でございましょう。





そこの少年。……オナゴか?
おぉ、オノコであったか。これは悪い事をした。
詫びと言ってはなんだが、ちょいとわしのツマラン話を聞いていかんかい?
……そうかい。いい子だ。
年寄りの話は聞いていくもんさ。


あすこの硝子店が見えるかい?
親父の顔を見てみぃ。
やたら声の五月蝿うるさいあの男じゃ。

見えない?
これだから幼子おさなごは……もうちょい近くに寄ら。
見えたろう?

あれは本当に親父かい?
ほれ、あすこの気味悪い男じゃ。
鼻も目も口もボヤーとしておるだろう。
……のっぺらぼう?
あながち違ってはおらんが、もっと事細かく話してやろう。
あいつはどこぞの知らぬ化け物だ。
知らぬ化け物が親父を食っちまったのさ。
のっぺらぼうなんかよりよっぽど汚いゲテモノさ。

怖いか?
……そうだろうとも。

会いとうなけりゃさっさと帰らい。
それが嫌なら夜まで待つんさ。
黄昏時が終わりゃ、あいつらは体を捨てる。親父も元に戻るだろう。

お前もあぁなりたくなけりゃ、喉元を抑えておくんさな。

この少年が誰かって?
わしにも分からんよ。
美しい体なもんでな、なかなか棄てられずにおる。



いいか、智景ちかげ
化け物は目の前におる。
それは絶対に




忘れるんやないぞ。




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