9 / 13
9.船
明かりなどないのに、そこは妙に明るかった。
巨大な墳墓?
というのが、ハリエルが最初に抱いた感想だった。
広い。どこまで広がっているのか、先は茫洋として見渡せず、ただ暗灰色の天井と地面が続いている。空漠たる空間。だが、何もないわけではない。地面には四角い建物、もしくは墓石のようなものが整然と立ち並んでいて、シグヴァルは迷いもせず、その中央にぽっかりと空いた空間の道を歩いていった。
「ここは情報庫だ」
「情報庫?」
「我々がかつて暮らしていた地で蓄積した情報、それに、この地に来てから集積した情報の全てだ。引き出すこともできるぞ」
彼は立ち止まり、宙に何かを書くような仕草をした。四角い石の一つが鮮やかな光を発し、その上に細かな文字が浮かび上がる。
「西の耕作地帯で不作が起きている、だったな? お前のところに来ていた請願の一つだが。あの一帯の気象、地形、適した作物の情報を、こうやって引き出せる」
「……魔法、ですか?」
「ある意味、そうだな。我々竜種が、この帝国を築き、支配してきたのは、ひとえにこの情報の集積にある。この地に来て数万年、人を導き、繁栄させるのに必要なものだった」
この地に来て数万年。
竜とは、別世界からやって来た異種である。というのは、人間のあいだではひっそりと囁かれている話で、ハリエルも耳にしたことがある。だが、本当の事だとは思っていなかった。そもそも、想像が及ばない。
「……竜は、どこからやってきたのですか」
「今、見せる」
シグヴァルが再び、宙に何かを書く。
今度は、巨大な画像が浮かび上がった。ただの画像ではなく、動いている。赤と紫、たまに迸るオレンジ、朱色。ガス状のうねりが、たまに噴火のような飛沫を上げながら流れていく。
「……何ですか、これは?」
「我々の棲み処は、熱とガスで出来た蒸気の中で、地面は無かった。そこで我々は、稀に仲間たちと空を駆ける時以外は、空にそれぞれの巣を築いて引き篭もっていた。だが、引き篭もりが過ぎたのだな。数千年に一つしか生まれない卵が、気が付くと数万年に一つというレベルで、そのままでは種の絶滅、というぎりぎりの瀬戸際になっていた」
シグヴァルの声は淡々としていて、何かの歴史書をそのまま読みながら語っているようだった。
彼はまだ若い竜なのだ。彼にとっても、遠い歴史の一つでしかないのだろう。
「それで、移住を試みたのだ。我々が生殖可能な生物がいる地、というのが目標となった。数千年かけて船を造り、様々な世界を渡り、その結果、行き着いたのがこの地だ。当時は人間は洞窟に住み、獣の皮を纏っていたという。彼らに耕作を教え、文字を伝え、文明を築かせた。初代の竜たちは、それは楽しんで彼らの成長ぶりを見守っていたらしいな」
「……」
壮大な話すぎて、なかなか頭に入ってこない。ハリエルは頭を振り、情報を整理しようとして、
「……生殖可能な生物?」
「人の姿に変化すれば、竜と人は生殖可能だ。だが、それもごく限られた相手とだけだ。条件はまだよく分かっていないが、竜が生殖可能な人間は、十万人に一人もいない。それを我々は番と呼んでいるが、竜の寿命をおよそ一万二千年として、生涯に一人の番と出会えるかどうかだ」
「……」
「そういうことだ」
ハリエルの凝視を受けて、シグヴァルは苦笑した。
「余が竜帝の座にあるのは、余が番のいない若い竜であり、人と触れ合う必要があるから選ばれただけであって、竜の間での上下関係などではない。余に番ができ、次に若い竜が現れれば、余は帝位から退く」
「……」
「ああ、そうだ。余の番はお前だ、ハリエル」
急転直下。
だと、ハリエルは感じた。
「……父上の、番が、私?」
「結局、見分けるには性的な成熟が必須だからな。お前が子供のうちは分からなかった。確信を持ったのは、ここ数年のことだ。だが、なんとなく、そうなるだろうとは思っていた」
「……そうなのですか?」
「お前を見るたび、可愛らし過ぎて、愛おし過ぎて、感情が溢れそうだった。竜は基本的に、人に対し愛着を抱かない。余がお前に対してそうなるということは、恐らく、お前は余の番なのだろうと思うのが自然だ」
軽い微笑みを向けてから、シグヴァルはさらに通路を奥に進んだ。
その先に、大きな黒い石質の板が横たわっている。巨人のテーブルのようだ。
「ここからは、裁定の時間だ。他の竜族をここに喚び寄せ、お前が余の番、竜の眷属となることを認めさせる。番ができるたびに行う、しきたりのようなものだな。お前が望まぬのなら、ここで余を拒否し、番にならないことも可能だ。……拒否せんよな?」
にわかに、声に弱気が滲んだ。
「ロマンチックな空気だ、ハリエル。余とお前は今、お互いにめろめろになっているはずだ、そうだろう? な?」
「……父上」
「……」
ハリエルの視線を受けて、シグヴァルは落ち着かない様子で交差した足を組み替え、視線を逸らした。
不安でざらついた声で言う。
「……お前が、余の見た目が気に入らんというのなら、もう少し年齢を重ねた姿に変化することもできるぞ。本質は竜で、変化した姿はイメージに過ぎんからな。お前が、もっと大人の男がいいと言うのならば……」
「いえ、父上はそのままで十分です。父上はどんな姿でも、私にとって大事なお方なので」
「大事なお方……」
シグヴァルは呟き、少し思案するように沈黙した後、
「……うむ。つまり、お前は余が大好きだということだな?」
「それはそうです」
ハリエルは否定しなかった。否定する理由がない。
だが、番だの、生殖がどうこうの、唐突かつ立て続けに言われて、彼女の心は危機的状況にあった。理解はできたとしても、実感が追い付いていないのである。
だが、それでもシグヴァルを否定しないのは、不安げな様子を剥き出しにした父にうっかり胸がきゅんとしてしまったせい、そして、そもそもハリエルが父を拒否するという選択肢がありえないためである。
「……よし。よかろう」
急激に機嫌を回復したシグヴァルが、近付いて彼女の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「くくく、お前は余が大好きだからな! そうだな、分かっていたぞ、そうだとも!」
堪え切れず笑いを洩らしながら、彼女の頬を上下に撫で始める。このまま、ハリエルが一言も言わないまま、お互いに溺愛し合っている夫婦が出来上がりそうな流れになってきた。ハリエルとしては、文句を言うつもりもないのだが、
「裁定! 裁定の時は至れり! シグヴァル、こっちを向け!」
「シグヴァル!」「シグヴァル!」
黒い石板の向こうで、複数の声が重なって吼えた。
巨大な墳墓?
というのが、ハリエルが最初に抱いた感想だった。
広い。どこまで広がっているのか、先は茫洋として見渡せず、ただ暗灰色の天井と地面が続いている。空漠たる空間。だが、何もないわけではない。地面には四角い建物、もしくは墓石のようなものが整然と立ち並んでいて、シグヴァルは迷いもせず、その中央にぽっかりと空いた空間の道を歩いていった。
「ここは情報庫だ」
「情報庫?」
「我々がかつて暮らしていた地で蓄積した情報、それに、この地に来てから集積した情報の全てだ。引き出すこともできるぞ」
彼は立ち止まり、宙に何かを書くような仕草をした。四角い石の一つが鮮やかな光を発し、その上に細かな文字が浮かび上がる。
「西の耕作地帯で不作が起きている、だったな? お前のところに来ていた請願の一つだが。あの一帯の気象、地形、適した作物の情報を、こうやって引き出せる」
「……魔法、ですか?」
「ある意味、そうだな。我々竜種が、この帝国を築き、支配してきたのは、ひとえにこの情報の集積にある。この地に来て数万年、人を導き、繁栄させるのに必要なものだった」
この地に来て数万年。
竜とは、別世界からやって来た異種である。というのは、人間のあいだではひっそりと囁かれている話で、ハリエルも耳にしたことがある。だが、本当の事だとは思っていなかった。そもそも、想像が及ばない。
「……竜は、どこからやってきたのですか」
「今、見せる」
シグヴァルが再び、宙に何かを書く。
今度は、巨大な画像が浮かび上がった。ただの画像ではなく、動いている。赤と紫、たまに迸るオレンジ、朱色。ガス状のうねりが、たまに噴火のような飛沫を上げながら流れていく。
「……何ですか、これは?」
「我々の棲み処は、熱とガスで出来た蒸気の中で、地面は無かった。そこで我々は、稀に仲間たちと空を駆ける時以外は、空にそれぞれの巣を築いて引き篭もっていた。だが、引き篭もりが過ぎたのだな。数千年に一つしか生まれない卵が、気が付くと数万年に一つというレベルで、そのままでは種の絶滅、というぎりぎりの瀬戸際になっていた」
シグヴァルの声は淡々としていて、何かの歴史書をそのまま読みながら語っているようだった。
彼はまだ若い竜なのだ。彼にとっても、遠い歴史の一つでしかないのだろう。
「それで、移住を試みたのだ。我々が生殖可能な生物がいる地、というのが目標となった。数千年かけて船を造り、様々な世界を渡り、その結果、行き着いたのがこの地だ。当時は人間は洞窟に住み、獣の皮を纏っていたという。彼らに耕作を教え、文字を伝え、文明を築かせた。初代の竜たちは、それは楽しんで彼らの成長ぶりを見守っていたらしいな」
「……」
壮大な話すぎて、なかなか頭に入ってこない。ハリエルは頭を振り、情報を整理しようとして、
「……生殖可能な生物?」
「人の姿に変化すれば、竜と人は生殖可能だ。だが、それもごく限られた相手とだけだ。条件はまだよく分かっていないが、竜が生殖可能な人間は、十万人に一人もいない。それを我々は番と呼んでいるが、竜の寿命をおよそ一万二千年として、生涯に一人の番と出会えるかどうかだ」
「……」
「そういうことだ」
ハリエルの凝視を受けて、シグヴァルは苦笑した。
「余が竜帝の座にあるのは、余が番のいない若い竜であり、人と触れ合う必要があるから選ばれただけであって、竜の間での上下関係などではない。余に番ができ、次に若い竜が現れれば、余は帝位から退く」
「……」
「ああ、そうだ。余の番はお前だ、ハリエル」
急転直下。
だと、ハリエルは感じた。
「……父上の、番が、私?」
「結局、見分けるには性的な成熟が必須だからな。お前が子供のうちは分からなかった。確信を持ったのは、ここ数年のことだ。だが、なんとなく、そうなるだろうとは思っていた」
「……そうなのですか?」
「お前を見るたび、可愛らし過ぎて、愛おし過ぎて、感情が溢れそうだった。竜は基本的に、人に対し愛着を抱かない。余がお前に対してそうなるということは、恐らく、お前は余の番なのだろうと思うのが自然だ」
軽い微笑みを向けてから、シグヴァルはさらに通路を奥に進んだ。
その先に、大きな黒い石質の板が横たわっている。巨人のテーブルのようだ。
「ここからは、裁定の時間だ。他の竜族をここに喚び寄せ、お前が余の番、竜の眷属となることを認めさせる。番ができるたびに行う、しきたりのようなものだな。お前が望まぬのなら、ここで余を拒否し、番にならないことも可能だ。……拒否せんよな?」
にわかに、声に弱気が滲んだ。
「ロマンチックな空気だ、ハリエル。余とお前は今、お互いにめろめろになっているはずだ、そうだろう? な?」
「……父上」
「……」
ハリエルの視線を受けて、シグヴァルは落ち着かない様子で交差した足を組み替え、視線を逸らした。
不安でざらついた声で言う。
「……お前が、余の見た目が気に入らんというのなら、もう少し年齢を重ねた姿に変化することもできるぞ。本質は竜で、変化した姿はイメージに過ぎんからな。お前が、もっと大人の男がいいと言うのならば……」
「いえ、父上はそのままで十分です。父上はどんな姿でも、私にとって大事なお方なので」
「大事なお方……」
シグヴァルは呟き、少し思案するように沈黙した後、
「……うむ。つまり、お前は余が大好きだということだな?」
「それはそうです」
ハリエルは否定しなかった。否定する理由がない。
だが、番だの、生殖がどうこうの、唐突かつ立て続けに言われて、彼女の心は危機的状況にあった。理解はできたとしても、実感が追い付いていないのである。
だが、それでもシグヴァルを否定しないのは、不安げな様子を剥き出しにした父にうっかり胸がきゅんとしてしまったせい、そして、そもそもハリエルが父を拒否するという選択肢がありえないためである。
「……よし。よかろう」
急激に機嫌を回復したシグヴァルが、近付いて彼女の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「くくく、お前は余が大好きだからな! そうだな、分かっていたぞ、そうだとも!」
堪え切れず笑いを洩らしながら、彼女の頬を上下に撫で始める。このまま、ハリエルが一言も言わないまま、お互いに溺愛し合っている夫婦が出来上がりそうな流れになってきた。ハリエルとしては、文句を言うつもりもないのだが、
「裁定! 裁定の時は至れり! シグヴァル、こっちを向け!」
「シグヴァル!」「シグヴァル!」
黒い石板の向こうで、複数の声が重なって吼えた。
あなたにおすすめの小説
異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない
降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。
しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。
粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。
危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。
すれ違う2人の想いは?
【本編完結】召喚? 誘拐の間違いでは?
篠月珪霞
恋愛
「…え」
まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。
私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。
いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。
過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果
宝月 蓮
ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……?
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
表紙に素敵なFAいただきました!
ありがとうございます!
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした
こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】
伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。
しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。
そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。
運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた――
けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった――
※「小説家になろう」にも投稿しています。
私、異世界で獣人になりました!
星宮歌
恋愛
昔から、人とは違うことを自覚していた。
人としておかしいと思えるほどの身体能力。
視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。
ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。
『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。
妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。
父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。
どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。
『動きたい、走りたい』
それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。
『外に、出たい……』
病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。
『助、けて……』
救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。
「ほぎゃあ、おぎゃあっ」
目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。
「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」
聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。
どうやら私は、異世界に転生したらしかった。
以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。
言うなれば、『新片翼シリーズ』です。
それでは、どうぞ!