【完結】魔王として覚醒した悪役令嬢だけど元勇者の様子が異様すぎる

雪野原よる

文字の大きさ
10 / 11
番外編

シェルディエンカ様御一行と行く王都ツアー ①

しおりを挟む
 こんにちは。私は代々「始まりの村人」を務めております一族の五代目、ロクサーヌと申します。

 私たちは勇者の導き役として、「最初の村」の門前にて、勇者様に話しかけられたとき「こんにちは、ここが〇〇の村です」とお返事差し上げる役目を担っております。もはや伝統芸といってもいい、由緒ある役割なのです。

 今代の勇者、レオンハルト様には完全にスルーされましたが……(悲)

 ともあれ、魔王は打倒され、勇者様はその役割を終えられました。我々一族は失職し、新たな職務を模索せねばなりませんでした。

 それがこの、「ロイヤル・シェルディエンカ遊覧観光社(RSC)」を設立した由縁でございます。

「え、なんで社名にシェルディエンカって付けた? 関係あったか?」
「それはですね、この国では『シェルディエンカ』と命名すると、税金が減免される法律がございまして」
「何だそれは?」

 本日のお客様、シェルリーナ様が、驚愕の声を上げられます。

 さらりとした銀色の長い髪、柘榴石のような目をした美しいお嬢様です。歳の頃は16か17というところでしょうか。シンプルなワンピースを纏って、庶民に身をやつしておられるようですが、その抑制され磨かれた動作は上流階級のものです。全く隠せておりません。言葉遣いは妙というか、一種独特でいらっしゃるようですが。

「レオン」

 シェルリーナ様が目を向けられたのは、遊覧馬車の後方に座っていらっしゃる男性です。

 シェルリーナ様のように、庶民に変装するのは諦められたのでしょう。どうせ怪しまれるのなら、顔を見せなければいいと判断されたのか、全身すっぽりと外套で覆い、フードを目深に被って顔を隠していらっしゃいます。
 ものすごく怪しいお姿ですが、その際立つ長身と、触れた手が斬り落とされそうな空気感を立ち昇らせているせいか、近付いて話し掛けようとする勇気ある人もいないようです。シェルリーナ様はまるきり恐れていないようですが。

「おい、どういうことなんだ?」
「心配しなくていい。名乗れるのは厳しい基準を満たした優良な企業及び団体だけだ。シェルディエンカの名を汚すわけにはいかないからな」
「そこを心配してるわけじゃねえよ!」

 シェルリーナ様が唸り声を上げられます。

 一見したところ、まるで瑕疵が見つからない造り物めいた美少女なのですが、そうやって乱暴な物言いをなさるところは妙に倒錯的です。私は少しどきどきしてしまいました。

「では参りましょうか。まずはこの国で誰一人知らない者がないという有名な城。皆様の背後に見えます王城、シェルディエンカ城でございます」
「シェルディエンカ城? 旧魔王城とか、レオンハルト城とかじゃないのか?」
「数十年前、魔王シェルディエンカによって騎士王に託された城でございます。騎士王、つまりかつての勇者様と魔王は、深い友誼、そして秘められた愛で結ばれておりまして」
「おい」
「勇者への愛ゆえに自らその剣にかかり、死を迎えた魔王の遺志を忘れないようにと、シェルディエンカ城と命名されました」
「……」

 シェルリーナ様が、連れのレオン様(?)の隣にぽすっと座られました。

 低い声で囁き交わしておられます。

「なあ、おい。好き勝手に言い伝えを捏造してんじゃねえよ」
「捏造? どこが?」
「お、い!」

 シェルリーナ様がレオン様の首を手を回して、ヘッドロックで締め上げ始めました。全力でやっておられるようですが、体格差が大きく、ほっそりした美少女が相手とあって、仔猫がじゃれついているようにしか見えません。レオン様も、まるで動じておられないようです。

「こんなことで動揺しているのか、シェル? これでは、これからのツアーに耐えられないのではないかな」
「脅すなよ! なんで俺は乗せられて、こんなツアーに来てしまったんだ……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

処理中です...