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エディット編
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シャキーン!!
王宮の使っていない中庭に、関係者だけで移動して始まった決闘の決着は、すぐについた。
ほんの数回打ち合っただけで、剣が弾かれて飛んでいったのだ。
誰もいない無人の地面に、剣が転がる。
パスカルの剣が。
「はあ!? なんだよこれ! ズルだろ、無効だ。なんか剣に細工がしてあるのか!? そうじゃなきゃおかしいだろ! こんなこと。普段から絵しか描いていないヤツがなんで……」
起きた現実が信じられないのか、パスカルが、決闘の無効を申し立てている。
「いいよ、無効でも。剣を取り換えてまたやろう。なんなら僕の剣は、お前が選んでも良い」
シャルルはあっさりと、再試合を認めた。
「なっ」
「ほら、早く拾えよ。次の試合をやろう」
「ふ、ふざけんな! こんなズルする奴と、また試合なんてできるわけがないだろう!」
「待てパスカル。ここで去るなら、負けを認めているということになる。いいのか」
「ふん! 別に負けでもいいさ! こんなくだらない勝負やってられないからな!!」
パスカルは、また絵に描いたような捨て台詞を吐いて、去って行った。
――なにが起きたの?
いったいどんな手品を使ったのだろう。見ていたけれど、全然分からなかった。
どうしてシャルルが、パスカルに勝つことができたのか。
だけど理由なんてどうでもよかった。
勝負に勝ったシャルルが、歩いてくる。私の元へ、迷うことなく、真っ直ぐに。
もう他の事なんて、目に入らない。
全神経がシャルルに集中してしまう。
「エディット・アーノン様。ずっと貴女の事が好きでした。私と結婚していただけませんか」
「喜んで」
気が付いたら、そう答えていた。
こんな時、エリザベスならなんと答えるだろう?
ふと頭にそんな疑問が浮かんだけれど、なぜかエリザベスはなにもしゃべってくれない。
胸がいっぱいで、涙が溢れて。
ただそのままの私が、シャルルの瞳を見つめながら、頷くことしかできなかった。
*****
「ベアトリス! 久しぶり」
「会いたかったわエディット」
毎日のように王宮で会っていた日々から一転、ベアトリスとは手紙でやり取りをして、週に一度会えるかどうかになっていた。
今日も一週間ぶりに会ったけど、話したいことが山ほどたまっていた。
「ベアトリス。王妃教育のほうは順調かしら」
「ええ。目の回るような忙しさよ」
「……そうなの。私と会っていて、時間作るの大丈夫?」
「もちろん。エディットとお話しないと、私はストレスで死んでしまうわ」
「まあ! 実は私もなの」
先日ベアトリスは、ユリウス王子と正式に婚約を発表した。
今は発表直後で、各所に挨拶周りをしたり忙しいはずなのに、そんなことをおくびにも出さずに、笑顔で私とお茶をしてくれる。
「ねえ、エディット。あなた最近あまり、「悪役令嬢エリザベス」やらなくなったわね。でも、そのままのエディットだけど、強くなったわね」
「そうなの。なぜかエリザベスの真似をしようと思っても、何も思い浮かばないようになってしまって」
「うん。エディットにはもう、そんなの必要ないのかも。……でも私、「悪役令嬢の取り巻き」でいることが気に入っていたから、ちょっと残念かもしれないわ」
ベアトリスが悪戯っぽくそう言ってくる。
将来の王妃様が、私の取り巻きだなんて、そんなこととんでもない。だけど……。
「いつかあなたが王妃様になったら、誰かに自慢しようかしら。「王妃様は、私の取り巻きだったのよ」って」
「まあ、それいいわね!」
王宮の使っていない中庭に、関係者だけで移動して始まった決闘の決着は、すぐについた。
ほんの数回打ち合っただけで、剣が弾かれて飛んでいったのだ。
誰もいない無人の地面に、剣が転がる。
パスカルの剣が。
「はあ!? なんだよこれ! ズルだろ、無効だ。なんか剣に細工がしてあるのか!? そうじゃなきゃおかしいだろ! こんなこと。普段から絵しか描いていないヤツがなんで……」
起きた現実が信じられないのか、パスカルが、決闘の無効を申し立てている。
「いいよ、無効でも。剣を取り換えてまたやろう。なんなら僕の剣は、お前が選んでも良い」
シャルルはあっさりと、再試合を認めた。
「なっ」
「ほら、早く拾えよ。次の試合をやろう」
「ふ、ふざけんな! こんなズルする奴と、また試合なんてできるわけがないだろう!」
「待てパスカル。ここで去るなら、負けを認めているということになる。いいのか」
「ふん! 別に負けでもいいさ! こんなくだらない勝負やってられないからな!!」
パスカルは、また絵に描いたような捨て台詞を吐いて、去って行った。
――なにが起きたの?
いったいどんな手品を使ったのだろう。見ていたけれど、全然分からなかった。
どうしてシャルルが、パスカルに勝つことができたのか。
だけど理由なんてどうでもよかった。
勝負に勝ったシャルルが、歩いてくる。私の元へ、迷うことなく、真っ直ぐに。
もう他の事なんて、目に入らない。
全神経がシャルルに集中してしまう。
「エディット・アーノン様。ずっと貴女の事が好きでした。私と結婚していただけませんか」
「喜んで」
気が付いたら、そう答えていた。
こんな時、エリザベスならなんと答えるだろう?
ふと頭にそんな疑問が浮かんだけれど、なぜかエリザベスはなにもしゃべってくれない。
胸がいっぱいで、涙が溢れて。
ただそのままの私が、シャルルの瞳を見つめながら、頷くことしかできなかった。
*****
「ベアトリス! 久しぶり」
「会いたかったわエディット」
毎日のように王宮で会っていた日々から一転、ベアトリスとは手紙でやり取りをして、週に一度会えるかどうかになっていた。
今日も一週間ぶりに会ったけど、話したいことが山ほどたまっていた。
「ベアトリス。王妃教育のほうは順調かしら」
「ええ。目の回るような忙しさよ」
「……そうなの。私と会っていて、時間作るの大丈夫?」
「もちろん。エディットとお話しないと、私はストレスで死んでしまうわ」
「まあ! 実は私もなの」
先日ベアトリスは、ユリウス王子と正式に婚約を発表した。
今は発表直後で、各所に挨拶周りをしたり忙しいはずなのに、そんなことをおくびにも出さずに、笑顔で私とお茶をしてくれる。
「ねえ、エディット。あなた最近あまり、「悪役令嬢エリザベス」やらなくなったわね。でも、そのままのエディットだけど、強くなったわね」
「そうなの。なぜかエリザベスの真似をしようと思っても、何も思い浮かばないようになってしまって」
「うん。エディットにはもう、そんなの必要ないのかも。……でも私、「悪役令嬢の取り巻き」でいることが気に入っていたから、ちょっと残念かもしれないわ」
ベアトリスが悪戯っぽくそう言ってくる。
将来の王妃様が、私の取り巻きだなんて、そんなこととんでもない。だけど……。
「いつかあなたが王妃様になったら、誰かに自慢しようかしら。「王妃様は、私の取り巻きだったのよ」って」
「まあ、それいいわね!」
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