働きアリの婚活

鶴山葵土

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4.働きアリの現実(3)

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そんなナオトにも恋をしたことはあった。
ずっと恋愛事に関心がなかったわけではないのだ。

中学三年生のとき、ナオトは初めての恋をした。
相手はナオトよりも背が高くて、運動神経の優れた元気で活発的な少女だった。
テニス部に所属し、持ち前の運動量の高さを武器に県内でも五本の指に入る実力者であった。
天真爛漫な明るさで男子はもちろん、女子からも人気があった。
クラスのムードメーカーのような存在で、常に目立たぬ存在だったナオトにとって憧れの存在だった。
部活動を頑張りすぎていたためか勉強は苦手で、定期テストはほとんどの教科が赤点ギリギリ。
授業中には良く居眠りし、教師に注意されては周囲を笑わせていた。
そんなダメな一面も、ナオトには魅力的に見えた。
自然と彼女に惹かれ、気付かぬうちに視線で追うようになっていた。

そんなある日のことだった。
移動教室で廊下を歩いていた時、彼女はクラスメイトと話しながらナオトの前を歩いていた。
話の内容は昨夜のドラマがどうだったとか、最近人気の俳優についてのことだったと思う。
正直、ナオトにとってはどうでもいい話だったので二人がどんな話をしていたのかよく覚えていないのだ。
しかし、そのあとの話のことはよく覚えている。
「同じクラスにナオトっているじゃん。あんた最近あれによく見つめられてるみたいだよ。席後ろの方だから、よく見えるんだよね。もしかして惚れられてるんじゃない」
クラスメイトが彼女をからかうように、そんな話をし始めた。
彼女たちの後ろをナオトが歩いていることに気づきもせずに。
すると、彼女はクラスメイトにこう返したのだった。
「えっ。ナオトってあの根暗な?」
と彼女はクラスメイトに返した。
クラスメイトがうんうんとうなずくと、彼女はクラスメイトにこう告げた。
「全然気づかなかった。あんなのに好かれても嬉しくないよ。あれに見つめられていたなんて、正直気持ち悪い。」
クラスメイトにそう返したときの彼女の横顔を、あの嫌悪感に満ちた表情を見たナオトの心は打ち砕かれた。
この時のことは一生忘れることができないものとなった。

ナオトは思い知った。
自分の恋心は想った相手を不快にさせるものだと。
その日以来、ナオトは彼女を含め、女子生徒全員の顔を見ないように心掛けた。
そして、自分は誰も好きになってはいけないと常に自分に言い聞かせ続けるようになった。
それ以降、ナオトは誰かを好きになることはなかったのだ。
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