0と1の感情

ミズイロアシ

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第二部

05 エリオとダグラス

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 ロゼたちと別れた二人は横並びで帰路についた。

「取引はできたよ? あのロボットなら喋らねえだろ」

とダグラスは同じ歩幅の彼に話しかけた。

「ハッ、キザな奴」

「〝紳士的〟と言ってくれないかな?」

「フン、どこが」

「フッ……」
 前髪の隙間から、目が冗談だと笑った。
「俺がやらなくても、お前がやった。そうだろ?」

 エリオは知らんぷりで凝った首を回した。ダグラスは構わず話す。

「……でなけりゃ、おかわりなんてしない」
「……うっざ」
「後で返せよ?」
「わかってるわ!」

 エリオはまた顔を少し赤らめた。

 ダグラスは不意にため息をついた。

「あれで良かったの?」

「はあ?」

 エリオはぶっきら棒に返事をした。

「あの子……いい子そうじゃん? もう会えないかもよ?」

「はぁ……五つ下のガキに手ぇ出すかよ」

「あっはは……そういう意味じゃねぇってば――」

 エリオに睨まれつつも
「新しい……弟分? できたみたいでさ」と言い切った。

「はっ、それ言うなら妹――お前の方が嬉しいんだろ」

「ええ?」
 想定外の返答で、目を丸くした。

「あ、悪い。傷口えぐったわな」

「っ……んなことないけど」

 ダグラスは長い前髪で表情を見えにくくした。
「――死んだ人は戻って来ない。どこにでもある話だよ……」

「ま……そうだな……」

「ロゼとは――……別人なんだから……俺の妹や――」

「やめろ」
 エリオはダグラスの独話を遮り、自分の額に手を当てた。
「はぁー……もうよせよ」

「ごめんね……」

「違うっ……いや、いい」

 二人の青年は肩を丸めながら歩みを進めた。

 やがて黒い髪の方が

「俺は――……案外大丈夫だよ、エリオ」

 と沈黙を破り、隣を横目で見た。

 エリオは無視して歩いている。

「……ロゼは……本当にいい子だよ。お転婆そうだけど」

 右側を歩くエリオは黙ったままで、聞いている証拠に頷くばかりだった。

 ダグラスもそれ以上は言わない。

 それからは二人共無言で、人通りの少ない町外れの道を選んで進んだ。
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