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僕と猫(捨て猫)との3時間ちょいの物語
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平成25年、西暦2013年の10月26日、土曜日、天気予報は雨。
いつもと変わらぬ平日の疲れをいやす休日だった。
僕は今週の水曜日からあった進学講座で心底疲労していたのか、お昼の少し前に目が覚めた。
講座以外のインターンシップの連中は座学ではないのでさぞかし楽しんだことだろう。
そんなことを悔いるように思い返しながら階下に降りるとリビングで末弟が録画したビデオを見ながら、ゲームをしていた。
ばあちゃんはいそいそと動き、部屋のほうを覗くと箪笥の整理をしているようでさらに聞くとベッドを一つ納屋に移動するらしく後で手伝いをすることに。
僕はまず腹を満たすために、昨日から目星をつけていたカップ麺を取りに行く。
うむ、ここまで奥にしまえば父さんに気づかれずに済んだようだ。しかし、昨日冷蔵庫においてあった昨日の晩飯の残りであるマックのダブルチーズバーガーは消えていた。恐ろしいことだ。
僕は父さんに少しばかり失望し、仕方なくカップ麺にお湯を注ぎ、末弟と一緒に3分経つまでテレビを見ていた。
けれど少しテレビに集中しすぎて一分ほど遅れてしまったがはしを用意していただくとする。
末弟も戸棚にあったポテチをばあちゃんに確認を取ってからテーブルに広げ、食べる。
無論、その横で僕もポテチをはしでつまむ。そうして食べ進め、少し経つとベッドの移動を押し付けられる。
ばあちゃんの部屋に行き、両端をばあちゃんと掴んでせーので運び出す。
玄関を出たところでぽつぽつと雨粒が落ちてきて上空の怪しい雲行きを見て、ばあちゃんが降ってきそうだといい、少し雨脚も激しくなりかけるので先に急いで洗濯物を取り込む。
5、6個を片手でつかみ、納屋の物干し竿に掛けていく。末弟も呼ばれて手伝い濡れる前に何とか全部しまい込んだ。
しかしツンとカメムシのにおいがした。近頃は僕の部屋にも中に入ってきて本当に忌々しい。
その後、ばあちゃんと二人でベッドを運び終えた僕は携帯のLINEバブルで遊んでいた。
当初は中学生の次男が本日文化祭のため、母校に遊びにでも行こうかと着替えたのだが、少し雨も降ってきているし若干面倒になったのである。冬が近づき少し冷えるリビングでしばらく遊んでいたら、仲のいい従弟の兄弟が遊びに来た。昨日も風呂に入るために来ていたのだが今日もである。
従弟の兄はどかどかとそのあとに弟も続き、年の近い末弟の周りに行き、ゲーム話に盛り上がる。
そこに従弟の母――つまりは僕の叔母――が玄関から顔を出し、借りた皿を片付けてほしいと僕を呼ぶ。
言われた通り片付け、僕の隣に叔母が腰掛け、誰もいないのかと問う。
今まで書かなかったが、僕がカップ麺を食べ終わってから30分ほどたった時に父さんが起きてきて二階に行き、その後朝から出かけている母が帰ってきていて買い物にばあちゃんと一緒に出掛けている。
そんな理由からいないと答えた。
叔母から従弟たちの靴を洗うため、出掛けるので従弟たちの面倒を見ていてほしいと頼まれる。
僕は快諾し叔母は車で出かけ、僕は末弟たちと少しばかりゲーム談議に花を咲かす。
しかし土日はつまらないため、PS3の電源を入れYouTubeで面白い動画を探す。
土日のテレビはつまらないのだ。特にお昼時には。
僕はしばらく動画一覧を眺め、宇宙人に関して調べた。未確認生物などについてだ。特に理由はないけれど。
それを末弟たちは恐がり、ばあちゃんの部屋に逃げて行った。
尚も僕は調べていると途中で叔母が帰ってきた。あまりにも早かったが聞くとなんでも先客が入れたばかりで洗濯機が空いておらず、時間差で行くらしい。
その後に母とばあちゃんが帰宅し、たくさんの荷物を抱えて入ってきた。
母にお茶と水を運んでくれと言われ、2L×6本の箱を運ぶ。車から玄関まで2往復である。
さらに母にコンビニに行くかと言われ、首肯する。
せっかく着替えたのだからのと気晴らしだ。少しは外に出なければ意味がない。
×××
コンビニで甘いおやつや最近母のお気に入りなのかジャスミン茶をかごに入れる。さらに何と車から降りる前に言っていた、最近発売したばかりのホット炭酸を見つけた。味は不安だが恐いもの見たさで迷わずかごに入れる。
レジにかごを置いて清算。当初これが目的のため、市民税の支払いもする。11点で一万円以上もした。市民税がもちろんダントツで高かった。
将来お前も支払うことになると言われ、苦笑する。まだ大人にはなりたくはない。
袋を持ち、車に乗り込み、駐車場を出る。窓越しに来るときは落ち葉を空気で飛ばしていたおじさん二人も休憩していた。
家に着くとばあちゃんが階段下の物置を整理していたり、着物がリビングに広げてあった。叔母は従弟たちの靴を洗濯に行ったようでいなかった。
せっかくお昼のおやつ時間だからと末弟たちを呼びに行った。しかし末弟たちは応じずゲームをし、結局従弟の弟だけがやっていたゲームを閉じて僕に渡した。
ゲーム機を母に引き継ぎ、「えらいねー」と言いながらポテチと僕にココアの用意をさせる。
牛乳は母とばあちゃんが買ってきていて新品だった。
器用に混ぜ合わせ、甘いミルクココアを差し出す。それをポテチと一緒にほおばる従弟の弟。さらに母までコンビニで買ってきた期間限定のポテチを広げ、ばあちゃんも片付けの途中で一服するかとお茶と貰い物のお餅を持ってきてテーブルの上にあった着物の上に置く。
僕は着物の上で食べることはないだろうと言い、ばあちゃんは着物をどかす。
というか投げた。
僕は母がつまんでいるポテチを食べる。従弟の弟は物置きから出てきたプラ刀を腰にさしたり、振り回す。
僕も物置きにあった竹刀で応対してチャンバラする。
すると叔母が帰ってきて、買ってきたシュークリームを食べるのでついでに僕も一ついただく。
しゃべる叔母に母は見ていたドラマの音量を上げるが50はないと思う。
僕はシュークリームを食べ終え、従弟の弟と外にチャンバラの続きをしに行く。そこで生えている草を竹刀で切って見せたり、竹刀とプラ刀で戦ったりもした。だが長くはもたずにすぐ飽きた。
そこでサイクリングに行こうと言い、納屋の自転車を引っ張り出す。寒いのでハンガーにかけてあった冬用のジャンパーを羽織り、従弟の弟とまずは近くの公園まで行く。
曇りであるからか、遊具のほとんどない公園は殺風景に見えた。従弟の弟は持ってきたプラ刀を少しばかり振っていたがやはり飽きたようだった。
駐車場に車はたくさんあり、公園に併設されている公民館では何か催しをやっているようだが窓からはよく窺えず、ブランコを漕いでいてもしょうがないので、次男の文化祭に行こうと提案する。
従弟の弟は小学1年生がそんな遠くに行けるかとぶつくさ言っていたがとりあえず向かうことにした。
予報通り雨が降ってきそうな空だったが、幸い雨は降りださず坂を下って十字路に差し掛かる。そこから分かれ道になっているのだが、最近できた道のほうが近道なのでそこを通る。
車が来ないのを確認して横断歩道を渡る。ここまでくれば後は楽だ。
二人でしりとりをしながら並走する。近頃は学生の自転車についてうるさいがこの時くらいは許してほしい。だがもうすぐで道を抜けるというときに、突然ニャアとか細い声を聴いた。
従弟の弟に止まれと指示し、反対の歩道側を見ると、一匹の猫が茂みにいた。
興味本位で近づいてみる。すると猫は逃げ、草むらの中に隠れた。だが手を叩いたりすると徐々に近づいてきて傍にあった猫じゃらしでさらに近づき足元まですり寄ってきた。
おそらくは捨て猫だろうが足にすがり付く様に歩き回り、しゃがむと股下をくぐったり足の間を8の字に歩いていた。
従弟の弟は多少ビクついていたが、少ししたら慣れた。そして、どうしようかと思った。
なんとなくなぜそう思ったのか連れて帰ろうと思ったのだ。
今まで犬を飼っていたのもあるかもしれないが、久しぶりに動物と触れ合って舞い上がっていたのかもしれない。
猫は掴もうとすると暴れたり、手を差し出すと顔を近づけ、しきりに猫は鳴いた。
しまいには何と噛まれてしまった。
それでも、やはり、こんなところでひとりはかわいそうだと思い、連れて帰ることにした。
歩くと足元についてきたので(足の間に入ってくるので歩きづらい)道の端まで誘導し、道路を注意して渡る。
案の定猫はついてきた。しかし、連れて帰るのには苦労した。何せ歩くとついてくるからいいのだが、自転車で来ている。
かごに乗せようとしたがすぐに外に出てしまう。
途中まで2、3人道を通りかかったが何かやっているなと見るだけで特に声をかけてこなかった。僕と従弟の弟の二人で猫じゃらしや歩いてついてこさせたが距離は稼げず、まだまだ家は遠い。
何度抱えても、嫌がり、自転車を押しながら歩くと猫が邪魔で引いてしまいそうなり思うように進まない。足元にじゃれつく猫の爪が少し痛かった。
だが、僕は何としてでも連れて帰りたく、従弟の弟に先に帰るように言い、僕は自転車を止め鍵をかけて放置。猫を抱えながら少しづつ歩いた。
最初こそ嫌がっていたが、予報通りに雨も降ってきて道を急ぐとなぜかすごくおとなしくなった。と思ったら思い出したようにまた暴れだし、これまでもそうだったように、道端の石や草むらに顔を近づけ食べようとした。
それをやめさせるのが大変だった。
お腹が空いているだろうことはわかるが、石ころまで食べることはないだろうに。そんな姿がさらにかわいそうになった。
雨も少し小降りになって止みかかったが、猫は途中で途中で駐車してある民家の車の下に隠れた。落ち着くのだろうか。
道中、僕は猫にそんなもの食べるんじゃない、お腹が空いているのはわかったからなどと声をかけ、着てきたジャンパーに包んだ。
猫ととぼとぼ移動する。
先ほどの公園近くにある小さい商店までやっとたどり着いた頃、猫はもう歩く後についてくるようになりジャンパーはいらなくなっていた。少し親近感を覚えた。
しかし少し歩くも猫がついて来ない。
もしかすると商店には鮮魚も扱っており、匂いでもするのか猫はしばらく商店の前をうろうろしていた。
そこに文化祭から家に戻る途中らしい次男とその友達に出くわしてしまった。
何をしているのかと問われ次男に事情を説明するも、めんどくさそうな顔をする。
次男は猫なんか持ってくんなと言っていたが構わずに僕はうろうろしている猫を待った。
やっぱり歩くとついてきてくれて、少しばかり時間がかかったけれど空模様が少し暗くなる頃に家の近くへ戻ってこれた。
家の玄関まで行くと、どういって入ったものかと考えばあちゃんの部屋から声が聞こえたので、窓をノックした。
すると叔母が窓から顔を出し、僕が猫を連れてきたと言ったら連れてくるなやと嫌な顔をし、続いて母もばあちゃんもそう口々に言って元の場所にやって来いといった。
しかもばあちゃんはシッシッと追い出すようにし、驚いて少し離れた猫に今度は棒きれを持ってきて自宅の車の下に隠れた猫にバンバンとよく見えなかったが突いているようだった。
見失ったのかばあちゃんはどっか行ったかと聞いたが僕はわからないと答えた。
その光景を見ていてひどく悲しくなった。そこまですることはないのにと。
ばあちゃんは家へ戻っていき、ここにいてはだめだと思い、僕は猫を元の場所にやるために来た道をたどった。
どこからか、猫はやはりついてきた。
せめて何か食べ物だけでもあげたかった。別に飼おうとまでは思っていなかったのだ。腹が減っているようだったから、それだけだったのに。
来た道を猫と歩きながら涙があふれてきて、年甲斐もなく泣きじゃくった。
17歳になってから、いや中学を卒業してからというもの、これほどまでに泣いたのは久しぶりだった。
それと猫も鳴いていた。僕を見上げてはニャアと鳴いた。
僕は歩き、猫はついてくる。
途中で落ちている石ころや草に猫は気を取られながらも足元を歩く。
猫に涙声で食えねえよ、バカヤローと呟き、時折しゃがんでごめんなと言いながら。
しゃがむと猫は寄ってきてニャアニャア鳴きながら顔を僕に近づけて足にしがみついたりして、爪でがりがりされて
痛えだろと呟きながら。
足どりは早かったが、猫は時々立ち止まり、僕の足も止まる。
ついさっき言われたことを思い出し家族に悪態をつきながらも進んだ。
やっぱり猫はついてくる。ほどなくして十字路まで歩いてきた。もうすぐ猫のいた場所だ。自転車も後で回収しなくちゃいけない。
すでに日は落ちかけ曇り空はさらに暗くなっていることもあり、気を付けて歩いた。
帰宅ラッシュにかかったのか猫は道路を通る車におびえているようでのろのろとだが歩き、振り返るとちゃんとついてきている。
僕は頻繁にしゃがみ、最後のスキンシップを取った。
拾った場所のすぐ近くまで来て、そのそばでまたしゃがむ。
ごめんな、ごめんなと何度も涙声で呟きながら、猫はやはり僕の太ももに爪の生えた手を置き、顔を近づけてくる。
だが今回はそれだけでなく僕の太ももに乗ったのだ。
そこでもやはりニャアニャアと鳴いていた。
僕は何度も撫でてから、そっと降ろした。
別れの時だ。
立ち上がり、歩いていく。少し歩き立ち止まると猫はついてきたいた。
ついてくんなよと呟いたが内心うれしかった。だが、こちらに歩みを寄せてくる姿を見て、さらに涙は止まらず、道中も拭ってきた服の袖はびしょびしょに濡れてしまっていた。
ついには道の端まで来たのにまだついてきていた。
これではどうしようもないと思い、車が来ないのを確認してから反対側の歩道に走った。
猫はついて来ようとしたが僕は立ち止まらずに尚も走った――全力で。
息が苦しかった。心が苦しかった。涙が止まらなかった。
うしろからまだつい来ているのか小さくニャアと聞こえる。
しかし振り返らず――走った――走った――走った。目から溢れる涙も拭わずに。
だいぶん走ってからうしろを振り返るとそこに猫はいなかった。
自転車を回収し、乗って家に帰る。
そういえば猫を連れて帰るのには苦労して時間がかかったが帰るのは当然だが時間がかからないなと思うとまた涙がにじんできた。
納屋に自転車をしまい、玄関へと歩く。
ただ涙を見せるのが恥ずかしくて涙をぬぐってから家に入る。玄関では近所の幼馴染みの母と僕の母が会話していた。
母は僕を見て泣いてんのと少し笑い、僕はいろいろな気持ちがあふれてあいさつする気にもなれずに、ああとだけ言い残し、すぐ二階の自室に向かった。
電気も点けずにベッドに腰掛ける。そこでも自然と涙がこぼれる。
階下では母が幼馴染みの母に猫の話をしているようでそれが少し聞こえた。内容は詳しく聞き取れなかったが、そんなことはどうでもよかった。
携帯をとりだし、なぜか捨て猫と検索していた。
しばらくすると母が部屋に来て電気を点けた。僕の隣に腰掛け背中をさすりながら語り掛ける。
何を言っているのか理解できずに感情がグルグルと渦巻いて堰を切ったように僕はまた泣き続けた。
それにばあちゃんまで部屋に来て、隣の部屋の次男が音楽でも聴いているからかなんでこんなに集まってくると文句を垂れていた。
最後に母はご飯だよと言ったがいらないといった。が、泣き止んだら降りてきて食べなと言われた。
そうして10分ほどしてから、とりあえず下に降りた。
夕食はハンバーグだった。父さんはいつの間にか出掛けて帰っておらず、従弟たちは僕が猫を元の場所に連れて行っている途中で帰ったようでリビングは静かだった。
ばあちゃんからあの猫には餌をやっている家がいるからと話を聞いた。
元々居た場所を考えると有り得ないので信用はできなかったが不問にした。
ご飯を食べ終えて、自室に戻り、ノートを開いてこの話を書き綴っている。この話は残しておくべきだと思ったからだ。
僕自身のために、あの猫のために。
多分もう二度と会うことはないだろうけれど、やっぱり悲しい。僕の心はまだ小学校6年生のまま止まっているのかもしれないと思った。
だけど薄情だとも思った。家族が。僕は間違ってないと思う。ずっと思い続けるかもしれない。
正義ぶりたいわけじゃないけど、正しいことをしようとしただけだと思う。
だから、残す。
未来の僕がこんなに優しいかどうかわからないから。
これも僕自身なのだと思い知るために。
僕と猫との3時間ちょいの物語をどうか覚えていて欲しいんだ。
了
いつもと変わらぬ平日の疲れをいやす休日だった。
僕は今週の水曜日からあった進学講座で心底疲労していたのか、お昼の少し前に目が覚めた。
講座以外のインターンシップの連中は座学ではないのでさぞかし楽しんだことだろう。
そんなことを悔いるように思い返しながら階下に降りるとリビングで末弟が録画したビデオを見ながら、ゲームをしていた。
ばあちゃんはいそいそと動き、部屋のほうを覗くと箪笥の整理をしているようでさらに聞くとベッドを一つ納屋に移動するらしく後で手伝いをすることに。
僕はまず腹を満たすために、昨日から目星をつけていたカップ麺を取りに行く。
うむ、ここまで奥にしまえば父さんに気づかれずに済んだようだ。しかし、昨日冷蔵庫においてあった昨日の晩飯の残りであるマックのダブルチーズバーガーは消えていた。恐ろしいことだ。
僕は父さんに少しばかり失望し、仕方なくカップ麺にお湯を注ぎ、末弟と一緒に3分経つまでテレビを見ていた。
けれど少しテレビに集中しすぎて一分ほど遅れてしまったがはしを用意していただくとする。
末弟も戸棚にあったポテチをばあちゃんに確認を取ってからテーブルに広げ、食べる。
無論、その横で僕もポテチをはしでつまむ。そうして食べ進め、少し経つとベッドの移動を押し付けられる。
ばあちゃんの部屋に行き、両端をばあちゃんと掴んでせーので運び出す。
玄関を出たところでぽつぽつと雨粒が落ちてきて上空の怪しい雲行きを見て、ばあちゃんが降ってきそうだといい、少し雨脚も激しくなりかけるので先に急いで洗濯物を取り込む。
5、6個を片手でつかみ、納屋の物干し竿に掛けていく。末弟も呼ばれて手伝い濡れる前に何とか全部しまい込んだ。
しかしツンとカメムシのにおいがした。近頃は僕の部屋にも中に入ってきて本当に忌々しい。
その後、ばあちゃんと二人でベッドを運び終えた僕は携帯のLINEバブルで遊んでいた。
当初は中学生の次男が本日文化祭のため、母校に遊びにでも行こうかと着替えたのだが、少し雨も降ってきているし若干面倒になったのである。冬が近づき少し冷えるリビングでしばらく遊んでいたら、仲のいい従弟の兄弟が遊びに来た。昨日も風呂に入るために来ていたのだが今日もである。
従弟の兄はどかどかとそのあとに弟も続き、年の近い末弟の周りに行き、ゲーム話に盛り上がる。
そこに従弟の母――つまりは僕の叔母――が玄関から顔を出し、借りた皿を片付けてほしいと僕を呼ぶ。
言われた通り片付け、僕の隣に叔母が腰掛け、誰もいないのかと問う。
今まで書かなかったが、僕がカップ麺を食べ終わってから30分ほどたった時に父さんが起きてきて二階に行き、その後朝から出かけている母が帰ってきていて買い物にばあちゃんと一緒に出掛けている。
そんな理由からいないと答えた。
叔母から従弟たちの靴を洗うため、出掛けるので従弟たちの面倒を見ていてほしいと頼まれる。
僕は快諾し叔母は車で出かけ、僕は末弟たちと少しばかりゲーム談議に花を咲かす。
しかし土日はつまらないため、PS3の電源を入れYouTubeで面白い動画を探す。
土日のテレビはつまらないのだ。特にお昼時には。
僕はしばらく動画一覧を眺め、宇宙人に関して調べた。未確認生物などについてだ。特に理由はないけれど。
それを末弟たちは恐がり、ばあちゃんの部屋に逃げて行った。
尚も僕は調べていると途中で叔母が帰ってきた。あまりにも早かったが聞くとなんでも先客が入れたばかりで洗濯機が空いておらず、時間差で行くらしい。
その後に母とばあちゃんが帰宅し、たくさんの荷物を抱えて入ってきた。
母にお茶と水を運んでくれと言われ、2L×6本の箱を運ぶ。車から玄関まで2往復である。
さらに母にコンビニに行くかと言われ、首肯する。
せっかく着替えたのだからのと気晴らしだ。少しは外に出なければ意味がない。
×××
コンビニで甘いおやつや最近母のお気に入りなのかジャスミン茶をかごに入れる。さらに何と車から降りる前に言っていた、最近発売したばかりのホット炭酸を見つけた。味は不安だが恐いもの見たさで迷わずかごに入れる。
レジにかごを置いて清算。当初これが目的のため、市民税の支払いもする。11点で一万円以上もした。市民税がもちろんダントツで高かった。
将来お前も支払うことになると言われ、苦笑する。まだ大人にはなりたくはない。
袋を持ち、車に乗り込み、駐車場を出る。窓越しに来るときは落ち葉を空気で飛ばしていたおじさん二人も休憩していた。
家に着くとばあちゃんが階段下の物置を整理していたり、着物がリビングに広げてあった。叔母は従弟たちの靴を洗濯に行ったようでいなかった。
せっかくお昼のおやつ時間だからと末弟たちを呼びに行った。しかし末弟たちは応じずゲームをし、結局従弟の弟だけがやっていたゲームを閉じて僕に渡した。
ゲーム機を母に引き継ぎ、「えらいねー」と言いながらポテチと僕にココアの用意をさせる。
牛乳は母とばあちゃんが買ってきていて新品だった。
器用に混ぜ合わせ、甘いミルクココアを差し出す。それをポテチと一緒にほおばる従弟の弟。さらに母までコンビニで買ってきた期間限定のポテチを広げ、ばあちゃんも片付けの途中で一服するかとお茶と貰い物のお餅を持ってきてテーブルの上にあった着物の上に置く。
僕は着物の上で食べることはないだろうと言い、ばあちゃんは着物をどかす。
というか投げた。
僕は母がつまんでいるポテチを食べる。従弟の弟は物置きから出てきたプラ刀を腰にさしたり、振り回す。
僕も物置きにあった竹刀で応対してチャンバラする。
すると叔母が帰ってきて、買ってきたシュークリームを食べるのでついでに僕も一ついただく。
しゃべる叔母に母は見ていたドラマの音量を上げるが50はないと思う。
僕はシュークリームを食べ終え、従弟の弟と外にチャンバラの続きをしに行く。そこで生えている草を竹刀で切って見せたり、竹刀とプラ刀で戦ったりもした。だが長くはもたずにすぐ飽きた。
そこでサイクリングに行こうと言い、納屋の自転車を引っ張り出す。寒いのでハンガーにかけてあった冬用のジャンパーを羽織り、従弟の弟とまずは近くの公園まで行く。
曇りであるからか、遊具のほとんどない公園は殺風景に見えた。従弟の弟は持ってきたプラ刀を少しばかり振っていたがやはり飽きたようだった。
駐車場に車はたくさんあり、公園に併設されている公民館では何か催しをやっているようだが窓からはよく窺えず、ブランコを漕いでいてもしょうがないので、次男の文化祭に行こうと提案する。
従弟の弟は小学1年生がそんな遠くに行けるかとぶつくさ言っていたがとりあえず向かうことにした。
予報通り雨が降ってきそうな空だったが、幸い雨は降りださず坂を下って十字路に差し掛かる。そこから分かれ道になっているのだが、最近できた道のほうが近道なのでそこを通る。
車が来ないのを確認して横断歩道を渡る。ここまでくれば後は楽だ。
二人でしりとりをしながら並走する。近頃は学生の自転車についてうるさいがこの時くらいは許してほしい。だがもうすぐで道を抜けるというときに、突然ニャアとか細い声を聴いた。
従弟の弟に止まれと指示し、反対の歩道側を見ると、一匹の猫が茂みにいた。
興味本位で近づいてみる。すると猫は逃げ、草むらの中に隠れた。だが手を叩いたりすると徐々に近づいてきて傍にあった猫じゃらしでさらに近づき足元まですり寄ってきた。
おそらくは捨て猫だろうが足にすがり付く様に歩き回り、しゃがむと股下をくぐったり足の間を8の字に歩いていた。
従弟の弟は多少ビクついていたが、少ししたら慣れた。そして、どうしようかと思った。
なんとなくなぜそう思ったのか連れて帰ろうと思ったのだ。
今まで犬を飼っていたのもあるかもしれないが、久しぶりに動物と触れ合って舞い上がっていたのかもしれない。
猫は掴もうとすると暴れたり、手を差し出すと顔を近づけ、しきりに猫は鳴いた。
しまいには何と噛まれてしまった。
それでも、やはり、こんなところでひとりはかわいそうだと思い、連れて帰ることにした。
歩くと足元についてきたので(足の間に入ってくるので歩きづらい)道の端まで誘導し、道路を注意して渡る。
案の定猫はついてきた。しかし、連れて帰るのには苦労した。何せ歩くとついてくるからいいのだが、自転車で来ている。
かごに乗せようとしたがすぐに外に出てしまう。
途中まで2、3人道を通りかかったが何かやっているなと見るだけで特に声をかけてこなかった。僕と従弟の弟の二人で猫じゃらしや歩いてついてこさせたが距離は稼げず、まだまだ家は遠い。
何度抱えても、嫌がり、自転車を押しながら歩くと猫が邪魔で引いてしまいそうなり思うように進まない。足元にじゃれつく猫の爪が少し痛かった。
だが、僕は何としてでも連れて帰りたく、従弟の弟に先に帰るように言い、僕は自転車を止め鍵をかけて放置。猫を抱えながら少しづつ歩いた。
最初こそ嫌がっていたが、予報通りに雨も降ってきて道を急ぐとなぜかすごくおとなしくなった。と思ったら思い出したようにまた暴れだし、これまでもそうだったように、道端の石や草むらに顔を近づけ食べようとした。
それをやめさせるのが大変だった。
お腹が空いているだろうことはわかるが、石ころまで食べることはないだろうに。そんな姿がさらにかわいそうになった。
雨も少し小降りになって止みかかったが、猫は途中で途中で駐車してある民家の車の下に隠れた。落ち着くのだろうか。
道中、僕は猫にそんなもの食べるんじゃない、お腹が空いているのはわかったからなどと声をかけ、着てきたジャンパーに包んだ。
猫ととぼとぼ移動する。
先ほどの公園近くにある小さい商店までやっとたどり着いた頃、猫はもう歩く後についてくるようになりジャンパーはいらなくなっていた。少し親近感を覚えた。
しかし少し歩くも猫がついて来ない。
もしかすると商店には鮮魚も扱っており、匂いでもするのか猫はしばらく商店の前をうろうろしていた。
そこに文化祭から家に戻る途中らしい次男とその友達に出くわしてしまった。
何をしているのかと問われ次男に事情を説明するも、めんどくさそうな顔をする。
次男は猫なんか持ってくんなと言っていたが構わずに僕はうろうろしている猫を待った。
やっぱり歩くとついてきてくれて、少しばかり時間がかかったけれど空模様が少し暗くなる頃に家の近くへ戻ってこれた。
家の玄関まで行くと、どういって入ったものかと考えばあちゃんの部屋から声が聞こえたので、窓をノックした。
すると叔母が窓から顔を出し、僕が猫を連れてきたと言ったら連れてくるなやと嫌な顔をし、続いて母もばあちゃんもそう口々に言って元の場所にやって来いといった。
しかもばあちゃんはシッシッと追い出すようにし、驚いて少し離れた猫に今度は棒きれを持ってきて自宅の車の下に隠れた猫にバンバンとよく見えなかったが突いているようだった。
見失ったのかばあちゃんはどっか行ったかと聞いたが僕はわからないと答えた。
その光景を見ていてひどく悲しくなった。そこまですることはないのにと。
ばあちゃんは家へ戻っていき、ここにいてはだめだと思い、僕は猫を元の場所にやるために来た道をたどった。
どこからか、猫はやはりついてきた。
せめて何か食べ物だけでもあげたかった。別に飼おうとまでは思っていなかったのだ。腹が減っているようだったから、それだけだったのに。
来た道を猫と歩きながら涙があふれてきて、年甲斐もなく泣きじゃくった。
17歳になってから、いや中学を卒業してからというもの、これほどまでに泣いたのは久しぶりだった。
それと猫も鳴いていた。僕を見上げてはニャアと鳴いた。
僕は歩き、猫はついてくる。
途中で落ちている石ころや草に猫は気を取られながらも足元を歩く。
猫に涙声で食えねえよ、バカヤローと呟き、時折しゃがんでごめんなと言いながら。
しゃがむと猫は寄ってきてニャアニャア鳴きながら顔を僕に近づけて足にしがみついたりして、爪でがりがりされて
痛えだろと呟きながら。
足どりは早かったが、猫は時々立ち止まり、僕の足も止まる。
ついさっき言われたことを思い出し家族に悪態をつきながらも進んだ。
やっぱり猫はついてくる。ほどなくして十字路まで歩いてきた。もうすぐ猫のいた場所だ。自転車も後で回収しなくちゃいけない。
すでに日は落ちかけ曇り空はさらに暗くなっていることもあり、気を付けて歩いた。
帰宅ラッシュにかかったのか猫は道路を通る車におびえているようでのろのろとだが歩き、振り返るとちゃんとついてきている。
僕は頻繁にしゃがみ、最後のスキンシップを取った。
拾った場所のすぐ近くまで来て、そのそばでまたしゃがむ。
ごめんな、ごめんなと何度も涙声で呟きながら、猫はやはり僕の太ももに爪の生えた手を置き、顔を近づけてくる。
だが今回はそれだけでなく僕の太ももに乗ったのだ。
そこでもやはりニャアニャアと鳴いていた。
僕は何度も撫でてから、そっと降ろした。
別れの時だ。
立ち上がり、歩いていく。少し歩き立ち止まると猫はついてきたいた。
ついてくんなよと呟いたが内心うれしかった。だが、こちらに歩みを寄せてくる姿を見て、さらに涙は止まらず、道中も拭ってきた服の袖はびしょびしょに濡れてしまっていた。
ついには道の端まで来たのにまだついてきていた。
これではどうしようもないと思い、車が来ないのを確認してから反対側の歩道に走った。
猫はついて来ようとしたが僕は立ち止まらずに尚も走った――全力で。
息が苦しかった。心が苦しかった。涙が止まらなかった。
うしろからまだつい来ているのか小さくニャアと聞こえる。
しかし振り返らず――走った――走った――走った。目から溢れる涙も拭わずに。
だいぶん走ってからうしろを振り返るとそこに猫はいなかった。
自転車を回収し、乗って家に帰る。
そういえば猫を連れて帰るのには苦労して時間がかかったが帰るのは当然だが時間がかからないなと思うとまた涙がにじんできた。
納屋に自転車をしまい、玄関へと歩く。
ただ涙を見せるのが恥ずかしくて涙をぬぐってから家に入る。玄関では近所の幼馴染みの母と僕の母が会話していた。
母は僕を見て泣いてんのと少し笑い、僕はいろいろな気持ちがあふれてあいさつする気にもなれずに、ああとだけ言い残し、すぐ二階の自室に向かった。
電気も点けずにベッドに腰掛ける。そこでも自然と涙がこぼれる。
階下では母が幼馴染みの母に猫の話をしているようでそれが少し聞こえた。内容は詳しく聞き取れなかったが、そんなことはどうでもよかった。
携帯をとりだし、なぜか捨て猫と検索していた。
しばらくすると母が部屋に来て電気を点けた。僕の隣に腰掛け背中をさすりながら語り掛ける。
何を言っているのか理解できずに感情がグルグルと渦巻いて堰を切ったように僕はまた泣き続けた。
それにばあちゃんまで部屋に来て、隣の部屋の次男が音楽でも聴いているからかなんでこんなに集まってくると文句を垂れていた。
最後に母はご飯だよと言ったがいらないといった。が、泣き止んだら降りてきて食べなと言われた。
そうして10分ほどしてから、とりあえず下に降りた。
夕食はハンバーグだった。父さんはいつの間にか出掛けて帰っておらず、従弟たちは僕が猫を元の場所に連れて行っている途中で帰ったようでリビングは静かだった。
ばあちゃんからあの猫には餌をやっている家がいるからと話を聞いた。
元々居た場所を考えると有り得ないので信用はできなかったが不問にした。
ご飯を食べ終えて、自室に戻り、ノートを開いてこの話を書き綴っている。この話は残しておくべきだと思ったからだ。
僕自身のために、あの猫のために。
多分もう二度と会うことはないだろうけれど、やっぱり悲しい。僕の心はまだ小学校6年生のまま止まっているのかもしれないと思った。
だけど薄情だとも思った。家族が。僕は間違ってないと思う。ずっと思い続けるかもしれない。
正義ぶりたいわけじゃないけど、正しいことをしようとしただけだと思う。
だから、残す。
未来の僕がこんなに優しいかどうかわからないから。
これも僕自身なのだと思い知るために。
僕と猫との3時間ちょいの物語をどうか覚えていて欲しいんだ。
了
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