4 / 4
第4話 「定時後、雨が降る」
しおりを挟む
会社を出た瞬間、雨の匂いがした。
「……降ってますね」
傘を持ってきていないことに気づいたのは、その時だった。
「少し待つか」
上司はそう言って、エントランスの屋根の下に立つ。
距離は、いつもと同じくらい。
でも、雨音のせいか、
やけに近く感じた。
「すぐ止みそうですか」
「どうだろうな」
上司は空を見上げる。
その横顔を、見てはいけない気がして、視線を逸らした。
「傘、一本しかないが」
一瞬、言葉が詰まる。
「……濡れて帰ります」
「それは却下だ」
静かな声だった。
でも、迷いはなかった。
差し出された傘を見て、
断る理由を探したけれど、見つからない。
「近いな」
そう言われて、初めて気づく。
肩が、触れていた。
「すみません」
「謝ることじゃない」
雨音の中で、
その言葉だけが、はっきり聞こえた。
――雨が止むまで、
ここにいる理由は、もう十分だった。
「……降ってますね」
傘を持ってきていないことに気づいたのは、その時だった。
「少し待つか」
上司はそう言って、エントランスの屋根の下に立つ。
距離は、いつもと同じくらい。
でも、雨音のせいか、
やけに近く感じた。
「すぐ止みそうですか」
「どうだろうな」
上司は空を見上げる。
その横顔を、見てはいけない気がして、視線を逸らした。
「傘、一本しかないが」
一瞬、言葉が詰まる。
「……濡れて帰ります」
「それは却下だ」
静かな声だった。
でも、迷いはなかった。
差し出された傘を見て、
断る理由を探したけれど、見つからない。
「近いな」
そう言われて、初めて気づく。
肩が、触れていた。
「すみません」
「謝ることじゃない」
雨音の中で、
その言葉だけが、はっきり聞こえた。
――雨が止むまで、
ここにいる理由は、もう十分だった。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ドSと崇拝
夏緒
BL
先輩の家で宅飲みしてて、盛り上がって大騒ぎしてみんなで雑魚寝したんです。そしたら先輩が当たり前のようにおれに乗っかってくる。両隣には先輩のダチが転がってる。しかもこの先輩、酔ってるうえに元がドSだもんだから……。
前編、中編、後編です♡
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
ポメった幼馴染をモフる話
鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※12時投稿。2025.3.11完結しました。追加で投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる