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14〈黒木〉
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次の日、登校して直ぐに俺は担任のところへ行った。
俺の意志と無関係に、転校の手続きを進めないでほしいと頭を下げる。
「そうか、黒木も色々と大変だなぁ。勝手に進めないよう俺も阻止するから安心しろ」
『まあもしものことがあっても、退学書類には自署欄があるからそれで言い返せるし……まあ大丈夫だろう。自署と言っても黒木の意思を聞いてなきゃ危ないところだったな……』
「すみません。よろしくお願いします」
先生の心を読んで、なんとかなりそうだと安堵した。
父さんの思い通りには絶対にさせない。
教室に戻ると、野間が机に突っ伏していた。
寝ているのかと思ったら、すぐにうるさい心の声が飛んでくる。
『えーーっ?! なにあれなにあれっっ。朝からAVかよっっ! ……え、田口じゃね? てか木村バージョンまで見えるしーーー!! て……え……? え……? どういうこと? え……二人が……ってこと? 朝から生映像見せられてまさかの男同士?! はーーー?! やべぇってやべぇってマジでっっ!!』
それを聞いて色々と察した。察した途端に二人分の映像も見えた。
木村と田口は昨日とうとう……そうか。幸せそうだな、と自分のことのように嬉しくなった。
二人とは挨拶をかわすくらいしか交流はないが、ついつい応援してしまう。
ただ、野間のこの反応は……やっぱり男同士はないんだろう。胸にツキンと痛みが走る。
俺は慌てて席につき、本を開いた。
それでもなかなか本が頭に入ってこない。この映像は正直つらい。つい野間と重ねてしまう。自分と野間に置きかえて想像してしまう……。
俺は本の世界に入り込むことに必死になった。
帰る頃には野間がぐったりとしていた。一日中と言っていいほど映像が途切れなかったから、気持ちはわかる。
正直俺も疲労感が半端ない。映像を見せられたことよりも、それによる自分の煩悩と戦うことに必死になりすぎて疲れてしまった。
戦いと同時に心を閉じることにも躍起になって、野間が二人のことをどう思っているのか知ることもできなかった。野間の気持ちが気になる……。
野間と教室を出て歩きながら、俺はずっと本を思い浮かべていた。今日はいつもよりも思いが強すぎて隠し切れるのか不安だった。
「……ろき、……黒木ってば!」
野間の呼ぶ声にハッとした。
「……すまん。ボーッとしてた」
「あー……黒木もあの二人のアレにやられたか? マジビビるよなーあれはっ!」
『そうだよな、俺だけじゃないよな、あんなの一日中見せられたらそりゃ疲れてボーッとなるよな』
「……そうだな」
あんな……という言葉にまた胸がツキンと痛む。
「俺ああいう世界って全然わかんないんだけどさ」
「……そうだろうな」
「……な……なんかすげぇ、きも……あ、やべ」
野間の「きも」という言葉に絶望的な気分になった。
そうか……キモいか……。
『やべぇやべぇっ! うっかり学校でとんでもねぇこと口にするとこだったわ!』
『……ああ。聞かれたらやばいよな……』
『マジやべぇよ! すげぇ気持ちよさそうとかっ!! やべぇやべぇっ!!』
『……は?』
キモい……じゃなかった。
そうだ。野間だった。他人をキモいなんて言うヤツじゃないだろ。一瞬でもそう思ってしまった自分が許せない。ごめん、野間……。
そして男同士を否定されなかったことが、ただただ嬉しい。
『ん? 否定なんてしねぇよ。そんなの自由じゃん! そりゃ映像つきにはマジでビビったけどさっ』
心を読まれた。俺はギクリとしてまた本を思い浮かべる。
『……ああ、俺も自由だと思うよ』
『うん、だよな!』
『……ああ』
『はぁー……なんかもう俺、自分が田口になった気分でさ……。教室でちんこ勃っちゃうしマジやばかった……』
『…………っ』
いま……野間はすごいことをサラッと言わなかったか……?
『だって勃っちゃうだろっ? 一日中AV観た気分だよ……。いや、あれはAVよりすげぇよ……。田口……すげぇ気持ち良さそうだったよな……』
野間はさっきから、抱かれる側の田口の話ばかりだ。
田口になった気分で……想像したのか……?
俺はドキドキした。少しだけ……正直に話してみようか……。
『……野間は田口側なんだな』
『え?』
『俺は……木村側で想像した』
『えっ! 黒木も想像したのかっ?!』
『……想像しちゃうだろう、あれは』
『だよなっっ?! 想像しちゃうよなっ?! はぁー良かったーー! 俺だけじゃなかったっ!』
良かった良かったと繰り返す野間の心が『黒木は……誰と想像したんだろ……。いや普通に考えて女とだよな……木村側だもんな……』と言ったのを俺は聞き逃さなかった。
『野間は……誰と想像したんだ?』
『えっっ?!』
その瞬間、パッと見えた映像に心臓がバクバクした。
それは野間が俺とキスをしている映像だった。
俺の意志と無関係に、転校の手続きを進めないでほしいと頭を下げる。
「そうか、黒木も色々と大変だなぁ。勝手に進めないよう俺も阻止するから安心しろ」
『まあもしものことがあっても、退学書類には自署欄があるからそれで言い返せるし……まあ大丈夫だろう。自署と言っても黒木の意思を聞いてなきゃ危ないところだったな……』
「すみません。よろしくお願いします」
先生の心を読んで、なんとかなりそうだと安堵した。
父さんの思い通りには絶対にさせない。
教室に戻ると、野間が机に突っ伏していた。
寝ているのかと思ったら、すぐにうるさい心の声が飛んでくる。
『えーーっ?! なにあれなにあれっっ。朝からAVかよっっ! ……え、田口じゃね? てか木村バージョンまで見えるしーーー!! て……え……? え……? どういうこと? え……二人が……ってこと? 朝から生映像見せられてまさかの男同士?! はーーー?! やべぇってやべぇってマジでっっ!!』
それを聞いて色々と察した。察した途端に二人分の映像も見えた。
木村と田口は昨日とうとう……そうか。幸せそうだな、と自分のことのように嬉しくなった。
二人とは挨拶をかわすくらいしか交流はないが、ついつい応援してしまう。
ただ、野間のこの反応は……やっぱり男同士はないんだろう。胸にツキンと痛みが走る。
俺は慌てて席につき、本を開いた。
それでもなかなか本が頭に入ってこない。この映像は正直つらい。つい野間と重ねてしまう。自分と野間に置きかえて想像してしまう……。
俺は本の世界に入り込むことに必死になった。
帰る頃には野間がぐったりとしていた。一日中と言っていいほど映像が途切れなかったから、気持ちはわかる。
正直俺も疲労感が半端ない。映像を見せられたことよりも、それによる自分の煩悩と戦うことに必死になりすぎて疲れてしまった。
戦いと同時に心を閉じることにも躍起になって、野間が二人のことをどう思っているのか知ることもできなかった。野間の気持ちが気になる……。
野間と教室を出て歩きながら、俺はずっと本を思い浮かべていた。今日はいつもよりも思いが強すぎて隠し切れるのか不安だった。
「……ろき、……黒木ってば!」
野間の呼ぶ声にハッとした。
「……すまん。ボーッとしてた」
「あー……黒木もあの二人のアレにやられたか? マジビビるよなーあれはっ!」
『そうだよな、俺だけじゃないよな、あんなの一日中見せられたらそりゃ疲れてボーッとなるよな』
「……そうだな」
あんな……という言葉にまた胸がツキンと痛む。
「俺ああいう世界って全然わかんないんだけどさ」
「……そうだろうな」
「……な……なんかすげぇ、きも……あ、やべ」
野間の「きも」という言葉に絶望的な気分になった。
そうか……キモいか……。
『やべぇやべぇっ! うっかり学校でとんでもねぇこと口にするとこだったわ!』
『……ああ。聞かれたらやばいよな……』
『マジやべぇよ! すげぇ気持ちよさそうとかっ!! やべぇやべぇっ!!』
『……は?』
キモい……じゃなかった。
そうだ。野間だった。他人をキモいなんて言うヤツじゃないだろ。一瞬でもそう思ってしまった自分が許せない。ごめん、野間……。
そして男同士を否定されなかったことが、ただただ嬉しい。
『ん? 否定なんてしねぇよ。そんなの自由じゃん! そりゃ映像つきにはマジでビビったけどさっ』
心を読まれた。俺はギクリとしてまた本を思い浮かべる。
『……ああ、俺も自由だと思うよ』
『うん、だよな!』
『……ああ』
『はぁー……なんかもう俺、自分が田口になった気分でさ……。教室でちんこ勃っちゃうしマジやばかった……』
『…………っ』
いま……野間はすごいことをサラッと言わなかったか……?
『だって勃っちゃうだろっ? 一日中AV観た気分だよ……。いや、あれはAVよりすげぇよ……。田口……すげぇ気持ち良さそうだったよな……』
野間はさっきから、抱かれる側の田口の話ばかりだ。
田口になった気分で……想像したのか……?
俺はドキドキした。少しだけ……正直に話してみようか……。
『……野間は田口側なんだな』
『え?』
『俺は……木村側で想像した』
『えっ! 黒木も想像したのかっ?!』
『……想像しちゃうだろう、あれは』
『だよなっっ?! 想像しちゃうよなっ?! はぁー良かったーー! 俺だけじゃなかったっ!』
良かった良かったと繰り返す野間の心が『黒木は……誰と想像したんだろ……。いや普通に考えて女とだよな……木村側だもんな……』と言ったのを俺は聞き逃さなかった。
『野間は……誰と想像したんだ?』
『えっっ?!』
その瞬間、パッと見えた映像に心臓がバクバクした。
それは野間が俺とキスをしている映像だった。
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