4 / 173
二人の出会い・秋人編✦side秋人✦1
顔合わせで初めて会ったとき、やたらと俺に視線を向けてくる蓮に、内心またかと正直思った――――。
さっき挨拶を簡単に済ませた相手役の蓮が、ずっと俺を刺すように見ている。
「…………またか」
落胆のため息がもれる。
俳優と仕事をするとき、俺はいつも警戒している。いつ敵意を向けられるかわからないからだ。それがたとえどんなに小さな敵意でも。
今回の相手役もまた『役者でもないのに主演かよ』とでも思っているんだろう。冷めた目で俺を見ているのかと思うと落ち込んだ。
過去にも何度か、嫌味を言われた経験がある。直接的な言葉は滅多にないが、耳に入ってくる程度には。
自分の演技力が未熟なことは自覚しているが、それでも悔しい。
誰も文句が言えないくらいに、もっと上手くなって見返してやりたいと思う。
こんなに遠慮なくジロジロ見てくるんだ。今回は直接言われるのかもしれない。覚悟しておこうと思った。
蓮は人当たりが柔らかく、初めて会った瞬間から好きだな、と思っていた。だから余計に落ち込んだ。
いったいどんな顔で俺を見ているのかと気になって、さり気なく蓮を確認してみた。
すると、俺はいい意味で裏切られた。そこにある蓮の顔は、ただもう可愛いとしか言えなかったから。
どこかほおけていて、わずかに口を開いてポケっとした表情。どう見ても俺を敵視している顔ではなかった。
スラリと長身でバランス良く整った顔。優しそうで爽やかな、とにかく良い男。それがどういうわけか可愛く見えるからびっくりだ。
なんつー顔で俺のこと見てんの?
笑いが漏れそうになる。
一瞬確認しただけなのに、蓮の視線を感じるたびにさっきの顔が浮かんでくる。
それだけで笑ってしまいそうで、俺は必死でこらえた。
「オーラはテレビに映らないんだなぁ」
ふいに消え入りそうな蓮のつぶやきが聞こえてきて、とっさに蓮を見た。
変わらず俺を見ている。間違いなく俺を見て言った言葉だ。そのほおけた顔で。
たまらなくなって吹き出した。
俺のことかと蓮に聞くと、みるみる顔を赤らめた。
どうやら口に出した自覚がなかったらしい。
おかげで腹がよじれるくらい笑わせてもらった。
「秋さんの作品、俺いつも観てます」
蓮の言葉に、これは社交辞令かなと思い軽く「ありがとう」とお礼を言った。
「映画初主演の作品、あれ俺すごく大好きで。秋さんが泣き叫ぶシーン、何度観ても泣いちゃうんです」
その映画は少なくとも俺の代表作ではない。もう三年ほど前の作品だ。
でも、演じることが好きだと初めて思えたのがその作品で、蓮の言ったシーンは俺自身も思い入れの強いシーンだった。
こういうときは無難に代表作を上げる人が多いのに、あえてこの作品を上げてきた蓮の言葉には、本当に嘘がないんだろうなと思う。
だから余計に今もらった言葉が心にしみる。
「今回共演できて、本当に嬉しいです」
「俺も、相手役が蓮くんで良かった。これからよろしくな」
「はい! よろしくお願いします」
本当に嬉しそうな真っすぐな瞳。すごく好きだな、と思った。
そして、やっぱり可愛い。まるでワンコみたいだなと、思わず笑みがこぼれた。
さっき挨拶を簡単に済ませた相手役の蓮が、ずっと俺を刺すように見ている。
「…………またか」
落胆のため息がもれる。
俳優と仕事をするとき、俺はいつも警戒している。いつ敵意を向けられるかわからないからだ。それがたとえどんなに小さな敵意でも。
今回の相手役もまた『役者でもないのに主演かよ』とでも思っているんだろう。冷めた目で俺を見ているのかと思うと落ち込んだ。
過去にも何度か、嫌味を言われた経験がある。直接的な言葉は滅多にないが、耳に入ってくる程度には。
自分の演技力が未熟なことは自覚しているが、それでも悔しい。
誰も文句が言えないくらいに、もっと上手くなって見返してやりたいと思う。
こんなに遠慮なくジロジロ見てくるんだ。今回は直接言われるのかもしれない。覚悟しておこうと思った。
蓮は人当たりが柔らかく、初めて会った瞬間から好きだな、と思っていた。だから余計に落ち込んだ。
いったいどんな顔で俺を見ているのかと気になって、さり気なく蓮を確認してみた。
すると、俺はいい意味で裏切られた。そこにある蓮の顔は、ただもう可愛いとしか言えなかったから。
どこかほおけていて、わずかに口を開いてポケっとした表情。どう見ても俺を敵視している顔ではなかった。
スラリと長身でバランス良く整った顔。優しそうで爽やかな、とにかく良い男。それがどういうわけか可愛く見えるからびっくりだ。
なんつー顔で俺のこと見てんの?
笑いが漏れそうになる。
一瞬確認しただけなのに、蓮の視線を感じるたびにさっきの顔が浮かんでくる。
それだけで笑ってしまいそうで、俺は必死でこらえた。
「オーラはテレビに映らないんだなぁ」
ふいに消え入りそうな蓮のつぶやきが聞こえてきて、とっさに蓮を見た。
変わらず俺を見ている。間違いなく俺を見て言った言葉だ。そのほおけた顔で。
たまらなくなって吹き出した。
俺のことかと蓮に聞くと、みるみる顔を赤らめた。
どうやら口に出した自覚がなかったらしい。
おかげで腹がよじれるくらい笑わせてもらった。
「秋さんの作品、俺いつも観てます」
蓮の言葉に、これは社交辞令かなと思い軽く「ありがとう」とお礼を言った。
「映画初主演の作品、あれ俺すごく大好きで。秋さんが泣き叫ぶシーン、何度観ても泣いちゃうんです」
その映画は少なくとも俺の代表作ではない。もう三年ほど前の作品だ。
でも、演じることが好きだと初めて思えたのがその作品で、蓮の言ったシーンは俺自身も思い入れの強いシーンだった。
こういうときは無難に代表作を上げる人が多いのに、あえてこの作品を上げてきた蓮の言葉には、本当に嘘がないんだろうなと思う。
だから余計に今もらった言葉が心にしみる。
「今回共演できて、本当に嬉しいです」
「俺も、相手役が蓮くんで良かった。これからよろしくな」
「はい! よろしくお願いします」
本当に嬉しそうな真っすぐな瞳。すごく好きだな、と思った。
そして、やっぱり可愛い。まるでワンコみたいだなと、思わず笑みがこぼれた。
あなたにおすすめの小説
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。